Papers in Meteorology and Geophysics
Online ISSN : 1880-6643
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43 巻, 3 号
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原著論文
  • 青柳 二郎
    1992 年 43 巻 3 号 p. 79-107
    発行日: 1992年
    公開日: 2006/10/20
    ジャーナル フリー
     レーダにより測定されるエコー頂高度は対流雲の活動を見積る為の重要なパラメータである。本論文は天頂指向アンテナをもつレーダにより測定された3種類の対流性雲と1つの層状性降水雲のレーダ反射因子の鉛直分布を基準として、シミュレーションにより5-cm波気象レーダで観測した場合のエコー頂高度特性を、レーダ感度、ビーム幅、雲の水平幅及びサイドローブ効果に就いて調べた。更に2台のレーダ間のエコー頂高度測定精度の比較、航空機の写真測量による雲頂高度に対するレーダの測定精度を論じたものである。
     本研究で調べた対流性雲の場合地上降雨強度が30 mm/hrを越すような鉛直強度分布を持つエコー頂高度特性はレーダ距離に関して3つの領域に分けることが出来る。第1の領域は約50km迄で雲頂高度に対応し、この領域からのレーダ反射波強度は雲頂付近の弱いエコー域に基づくものである。約50kmを越えるとレーダ反射に寄与するのは雲頂から約1km以下にある強エコー域である雲柱部によるものであって、ビーム幅効果によってレーダ距離と共にエコー頂高度は増加し、この論文では第2領域と名付けた。更にレーダ距離が増加して雲柱部からのレーダ反射強度の減少或は雲柱部が電波水平線の陰に隠れるようになるとエコー頂高度は急速に減少する。この領域を第3領域と名づけるが、その開始距離は雲の発達の規模により200∼300kmに亙っている。従ってエコー頂高度の測定可能範囲は第2領域迄であるが、発達規模の弱い雲では第2領域は明瞭に存在しない場合もあり、この様な場合には第3領域は既に150km付近から始まる場合もある。
     ビーム幅を1度以下に減少すると分解能が改善される結果第2領域の高度増加率は減少するとはいえ、エコー頂高度は雲頂高度それ自身よりも直接雲頂付近の強エコー域を指向する様になり新たな雲頂測定誤差の問題を生じる。
     気象レーダではサイドローブは-28dB以下であり実用上エコー頂高度の測定には影響の無いことが示される。
     気象庁の5-cm波標準気象レーダにより求めたエコー頂高度から雲頂高度を得る為、しゅう雨、雷雨に対してビーム幅に対する個々に適した補正係数を用いたところ、最大+3.4kmに及ぶ誤差が-0.3∼+0.7kmの誤差の範囲で測定できることが分かった。
     2箇所のレーダ相互間のエコー頂高度の相対測定誤差の主要な原因は観測者による測定差、時間差、仰角読み取り誤差であり、これらに注意を払えば相対誤差0.35度で測定できることが分かった。一方、雲は時々刻々変化しているものであり、同一雲の連続比較観測から更に良い対応の得られることが示される。
     航空機からの写真測量による雲頂高度とレーダから求めた雲頂高度との比較観測によるとレーダは0∼1.5kmの誤差で測定できた。また、大気屈折率を月別、区域別に適した値を用いることにより遠距離のエコー頂高度を更に精度よく測定することが出来ることが分かった。
  • 金久 博忠
    1992 年 43 巻 3 号 p. 109-121
    発行日: 1992年
    公開日: 2006/10/20
    ジャーナル フリー
     Tung and Lindzen (1979) は大気ブロッキング現象を地形に依るRossby波の線形共鳴に依り説明したが、Pedlosky (1981) は地形の存在下での非線形共鳴に依ってブロッキング状態と帯状流状態が同一の基本帯状流に対して二つの安定定常解として存在する事 (非線形効果に依る定常解分岐及び多重定常解の存在) を示した。Pedlosky (1981) は一様な基本帯状流を考えたが、Jin and Ghil (1990) は基本帯状流に南北変化を許せばPedlosky (1981) の順圧モデルに於て周期解が存在する事を示した。此処では、Pedlosky (1981) の定常解分岐図の何処から如何にして周期解が分岐して来るのかを解析的に調べ、次の結論を得た。基本帯状流の南北変化に依り、ブロッキング状態に対応する定常解曲線上に二つのHopf分岐点が出現し、此の二つのHopf分岐点の間の安定定常解は不安定定常解と成る。基本帯状流の南北変化が更に大きくなれば、定常解分岐の様子自身も定性的に変化してしまう。
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