Papers in Meteorology and Geophysics
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53 巻, 4 号
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原著論文
  • 粒子会合への道筋
    廣瀬 勝己
    2003 年 53 巻 4 号 p. 109-118
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/07/21
    ジャーナル フリー
     トリウム同位体の内、234Thは海洋表層の有機炭素移出フラックスの評価のためのトレーサーとして広く利用されている。原理は海洋に均一に溶存している238Uから生成する娘核種の234Thが、海水中の沈降粒子と結合して表層から除去されることによる。すなわち、238Uからの非平衡量を求めることで、234Thの移出フラックスを求めることができる。さらに、234Thと沈降粒子に含まれる炭素 (POC) の間の比が得られれば、炭素の移出フラックスを評価することができる。このとき、沈降粒子中のPOCと234Thの比が重要な係数となるが、海域によって、また時間によって変動していることが分かってきた。POC/234Th比が変動する原因を明らかにするために、海洋学的要素と比較したところ、一次生産と関連していることが分かってきた。さらに、錯形成モデルをPOC/234Th比に適用した結果、生産される植物プランクトンの大きさの変化が一次生産の大きさに関連しており、その変化の方向は海域によって異なっていることを示唆している。太平洋の赤道域では、一次生産が増加すればするほど、植物プランクトンの形状は小さくなる。一方、大西洋の中緯度域では、一次生産が増加すればするほど、植物プランクトンの形状は大きくなる。このような生態学的変化を引き起こす要因として、微量栄養素 (鉄) の濃度が関係している可能性がある。太平洋の赤道域の表面水では栄養塩は存在するが鉄が枯渇している。一方、大西洋の中緯度では、鉄は枯渇していない。微量栄養素を摂取するためには、体積/表面積効果により形状が小さいプランクトン程有利である。このため、本来一次生産が増加すると、植物プランクトンの形状が大きくなるべきものが、太平洋の赤道域では鉄の枯渇に適応して小さくなるものと推定される。さらに、赤道域では粒径が小さくなるにも係わらず、懸濁粒子として捕捉されるので、なんらかの会合体として存在することが推定される。この会合体が生成される機構についても錯形成モデルで考察した。
  • モデルの解説
    田中 泰宙, 折戸 光太郎, 関山 剛, 柴田 清孝, 千葉 長, 田中 浩
    2003 年 53 巻 4 号 p. 119-138
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/07/21
    ジャーナル フリー
     大気エーロゾルとその関連物質の分布の研究のために新たに開発された3次元エーロゾル化学輸送モデルModel of Aerosol Species IN the Global AtmospheRe (MASINGAR) の詳細を記す。MASINGARは大気大循環モデルMRI/JMA98と結合されたオンライン・モデルである。MASINGARは非海塩起源硫酸塩、炭素系、鉱物ダスト、海塩起源のエーロゾルを含み、移流、サブグリッドスケールの渦拡散と対流による輸送、地表面からの物質の放出、乾性・湿性沈着、化学反応を扱う。移流はセミ・ラグランジュ法によって計算される。積雲対流による鉛直輸送は荒川・シューバート法の積雲対流マスフラックスを基にしてパラメタライズされている。モデルの空間・時間解像度は可変であり、T42 (2.8°×2.8°)、鉛直30層 (0.8hPaまで)、で時間刻み20分での積分が標準的に扱われている。さらに、モデルは同化気象場データを用いるナッジング手法による4次元同化システムを内蔵し、これによって特定の期間の現実的なシミュレーションやエーロゾルの短期間の予報が可能となっている。2002年4月の鉱物ダストエーロゾルのシミュレーションから、MASINGARによって総観規模のエーロゾルのイベントが良くシミュレートできることが示唆されている。
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