大気中のメタン濃度を長期にわたって観測するためには、濃度を決定するための標準ガスが必要となる。気象研究所 (MRI) と気象庁 (JMA) では観測に使用する標準ガスを検定するために、水素炎検出器を備えたガスクロマトグラフを用いた測定システムを確立した。また、重量充填法で作製された一次標準ガスを導入し、基準となるメタンの濃度スケールを定めた。MRIとJMAの検定装置を比較した結果、両者がほぼ一致した検定値を示すと同時に、メタンの濃度スケールもほぼ同じであることが認められた。MRIの標準ガスと異なるガスメーカーで作製された標準ガスの濃度値を比較測定した結果、約5ppbのスケールの違いあった。その原因の一つとして、標準ガスの作製に用いた希釈ガスの純度が影響していることがわかった。MRIの観測で使用されたメタン標準ガスは長期にわたってほとんど濃度変化がないことが確認された。一方、気象庁の標準ガスは使用期間が短いために、濃度の安定性を評価するためにはさらに長期にわたってデータを収集する必要性が認められた。過去に実施された標準ガス比較巡回実験の結果を検討した結果、MRIと他の機関との標準ガス・スケールの違いが明らかになった。その違いは、主に各機関が導入した一次標準ガスが異なるためであることが判明した。
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