1996年7月7日に南九州上で発達した降水系内の3タイプのメソβスケールの降水帯を、数値モデルの出力や気象庁と九州豪雨観測実験の観測データを用いて解析した。
降水系は4つのメソβスケールの降水域から構成されていた。降水域Iでは、一方向から風が吹く環境で、その中でいくつかの短い対流性降水帯が組織化した。これらの短い降水帯の対流は、バックビルディング型の特徴を持っていた。別の降水領域からの強い流出流が侵入した領域Iの西部分では、鈎状の降水帯が発達した。別タイプのメソβスケールの降水帯が、降水域III内に再現された。この降水帯では、中層風によって対流セルが風下に移動するときに、高相当温位の気塊が降水帯の側面から供給され、降水帯全体の対流が維持していた。
気流構造と降水帯の形状の比較から、中層の風向がメソβスケールの降水帯の型を決定する重要な役割を果たすことが示唆された。さらに、他のメソβスケール降水域からの冷たい気流が、降水帯の形状に影響を及ぼしていた。
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