Papers in Meteorology and Geophysics
Online ISSN : 1880-6643
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55 巻, 3+4 号
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原著論文
  • 武田 重夫
    2005 年 55 巻 3+4 号 p. 45-54
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
      シンプルな対流の一形態であるサーマルのモデルを、時間変化する少数のパラメータを含む、ある仮定された流れの場及び密度擾乱により構築する。流れの場はヒルの球形渦に類似したものであり、密度擾乱は低次のエルミート関数系で表現する。モデルパラメータの時間変化を表す式を非粘性かつ非拡散のブシネスク系から、最適近似の手法を用いて見積もった。初期の流れの場は静止状態を想定し、初期の密度場は中立成層中に低密度擾乱を発生させることを想定する。モデルパラメータの時間変化は数値積分により見積もった。このモデルの時間的振る舞いは、初期時刻からのある時間範囲内では、数値シミュレーションの結果の幾つかの特徴を定性的に表現しているように思われる。
  • 瀬古 弘, 中村 一
    2005 年 55 巻 3+4 号 p. 55-74
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
      1996年7月7日に南九州上で発達した降水系内の3タイプのメソβスケールの降水帯を、数値モデルの出力や気象庁と九州豪雨観測実験の観測データを用いて解析した。
      降水系は4つのメソβスケールの降水域から構成されていた。降水域Iでは、一方向から風が吹く環境で、その中でいくつかの短い対流性降水帯が組織化した。これらの短い降水帯の対流は、バックビルディング型の特徴を持っていた。別の降水領域からの強い流出流が侵入した領域Iの西部分では、鈎状の降水帯が発達した。別タイプのメソβスケールの降水帯が、降水域III内に再現された。この降水帯では、中層風によって対流セルが風下に移動するときに、高相当温位の気塊が降水帯の側面から供給され、降水帯全体の対流が維持していた。
      気流構造と降水帯の形状の比較から、中層の風向がメソβスケールの降水帯の型を決定する重要な役割を果たすことが示唆された。さらに、他のメソβスケール降水域からの冷たい気流が、降水帯の形状に影響を及ぼしていた。
  • 柴田 清孝, 出牛 真, 関山 剛, 吉村 裕正
    2005 年 55 巻 3+4 号 p. 75-119
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
      化学モジュールをMJ98大気大循環モデル(力学モジュール)と結合させて成層圏大気化学研究用の3次元化学輸送モデル(CTM)を気象研究所で開発した。このモデル(MJ98-CTM)を約15年積分して、再現された化学物質の平均場に着目して解析を行った。化学モジュールはファミリー法を使い、成層圏の主な化学種を含み、7種のファミリーを含む34の長寿命種、15の短寿命種、79の気相反応、34の光解離を扱っている。タイプI、IIの2種類の極成層圏雲(PSC)と硫酸エーロゾルも含み、PSC上で6種、硫酸エーロゾル上で3種の不均一反応を扱っている。力学モジュールで使う海面水温とオゾンは気候値を使い、地表面に発生源をもつ化学種は化学モジュールの中で地表面での濃度を固定して、MJ98-CTMの2つのバージョンT21L45、T42L45を積分した。放射活性気体の二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、オゾンは両モジュール間でインタラクティブに扱われなかった。T21 とT42の水平分解能は、それぞれ、5.6°(∼600km)、2.8°(∼300km)に相当し、L45の鉛直分解能は上端を0.01hPa(∼80km)に持ち、成層圏で層厚が2kmに相当する。
      MJ98-CTMは中層大気におけるオゾンや他の化学種の時間的、空間的な特徴を定性的によく再現することができた。しかし、下部成層圏においては化学種、特にオゾンの分布に系統的な誤差を有し、オゾン全量の過大評価に繋がっている。この主な原因は、化学種の輸送に関わるもので、2つの要因がある。1つはMJ98モデルがつくる風の場のバイアスであり、もう一つは鉛直分解能が粗いことである。
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