Papers in Meteorology and Geophysics
Online ISSN : 1880-6643
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57 巻
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著論文
  • 藤部 文昭, 北畠 尚子, 別所 康太郎, 星野 俊介
    2006 年 57 巻 p. 1-9
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/19
    ジャーナル フリー
      台風0418 (2004年9月7~8日) と台風9119 (1991年9月27~28日) は互いによく似た経路で西日本を通り,ともに大きな強風被害をもたらした。これら2つの台風による風速分布の特徴を気象庁のデータを使って調べた。どちらの台風も風は中心の右側(南東側)で最も強かったが,台風9119は中心の左後方(西側)にも強風域を伴っていた。この強風域は強雨と低温を伴っており,中心後方の降雨帯に乾燥空気が侵入することによる蒸発冷却によって形成されたと考えられる。これに対して台風0418は中心後方の降雨が弱く,風速分布は軸対称な渦と移動速度との重なったものにほぼ近かったことが示された。
  • 高野 洋雄, 檜垣 将和
    2006 年 57 巻 p. 11-19
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/19
    ジャーナル フリー
      波浪の効果(wave set-up)を考慮した高潮モデルを開発した。このモデルはPrinceton Ocean Model (POM)と、気象研究所で開発された第3世代波浪モデルMRI-IIIを基本に構成されている。波浪の効果(wave set-up)は、波浪モデルのスペクトルから計算されたradiation stressをパラメータ化して高潮モデルに取り込んでいる。業務での利用を想定して、このモデルではそれ以上の複雑な機構は考慮しなかった。
      このモデルは、外洋に面した沿岸における高潮を精度よく推算する。2000年の台風第3号(Kirogi)により、八丈島の八重根検潮所では2.5mという大きな高潮が観測された。従来型の高潮モデルでは、非常に小さな値(最大偏差0.51m)しか計算されないが、新しいモデルではより現実的な値(2.22m)を計算した。この値は、依然として観測値よりは小さな値であるが、wave set-upを評価することにより、最大偏差が1.71m改善されている。
  • 山崎 明, 坂井 孝行
    2006 年 57 巻 p. 21-36
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/19
    ジャーナル フリー
      マグマ溜りの膨張や収縮による地殻応力変化に伴って地表にどのような磁場が生じるかという問題は火山電磁気学の重要なテーマである。最も基本的な火山の地殻変動モデルである茂木モデルについては、ピエゾ磁気効果の解析解が与えられている。しかし火山では通常火山地形が存在するので、地形がピエゾ磁気効果に及ぼす影響を調べておく必要がある。この問題については三次元の数値計算が容易でないなどの理由からこれまでほとんど研究されてこなかった。筆者らは円錐形の火山地形をモデルに選定し、この地形がピエゾ磁気効果にどのような影響を及ぼすかについて調べた。計算にあたり、地殻応力の解析は有限要素法で行い、線形ピエゾ磁気効果よりピエゾ磁化を求めた。さらに、求めたピエゾ磁化を地殻全体で積分し、地表におけるピエゾ磁気効果を求めた。その結果、火山表面ではピエゾ磁気効果に占める地形効果の割合は場所によって50%にも達し、決して無視出来ない大きさであることがわかった。また火山の縁辺部においては応力集中により局所的なピエゾ磁気効果の異常が発生することがわかった。
  • 小川 完, 碓井 敏宏, 高谷 祐吉, 北尾 隆, 播本 孝史, 加藤 信次, 土橋 士郎, 緑川 貴, 吉川(井上) 久幸, 土器屋 由紀 ...
    2006 年 57 巻 p. 37-46
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/28
    ジャーナル フリー
      篤志観測船「ありげーたりばてい」の北太平洋航路上(主に北緯30~40度)において、海水(pCO2sea)および大気中の二酸化炭素分圧(pCO2air)の観測を1999年1月から2000年10月までの期間に9回行った。pCO2seaとpCO2airの観測結果から、180度以西の海域では8月を除いた期間、海洋は大気から二酸化炭素を吸収しており、一方西経160度以東では、11月から5月の期間に吸収域となっていた。西部海域においては、4~6月に全炭酸が東部海域に比べてより大きく減少したと見積もられた。この全炭酸の減少は硝酸・亜硝酸イオンの減少とよく対応しており、両者の比率が C/N = 9.5であったことから、生物活動の影響によるものと考えられた。観測されたpCO2seaと表面水温との関係を利用して、西部海域における2000年の月別二酸化炭素フラックスを評価した。当該海域は、夏には~0 GtC yr-1、冬には~0.4 GtC yr-1、年平均で0.2 GtC yr-1の二酸化炭素を大気から吸収したと見積もられた。この年間吸収量は、1990年代に全海洋が年間吸収した二酸化炭素のおよそ10%に相当する。
  • 直江 寛明, 岡田 菊夫
    2006 年 57 巻 p. 47-54
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/28
    ジャーナル フリー
      遠洋上にある南鳥島(24.3°N, 154.0°E)で1993年2月から3月にかけて海洋性エアロゾル粒子を9試料採集した。電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分析器を用いて、半径範囲0.4-2.0 μmの個々のエアロゾル粒子について各試料あたり約100個の粒子の元素組成を分析した。その結果、89%から98%は海塩粒子で、硫黄が多く含まれた粒子や鉱物粒子はともに3%の個数割合であった。海塩粒子のうち5%はCl/Naの重量比が1以下であった。これは塩素が不足し粒子が変質したことを示している。変質した海塩粒子が25%も占めた試料があり、このときの流跡線はアジア大陸に近接した海洋大気から輸送されていた。人間活動で汚染された空気塊が長距離輸送されたとき、非均質反応によって海塩粒子が変質したと考えられる。
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