Papers in Meteorology and Geophysics
Online ISSN : 1880-6643
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62 巻
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 出牛 真, 柴田 清孝
    2011 年 62 巻 p. 1-46
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/31
    ジャーナル フリー
       本論文では、気象研究所で新たに開発した全球化学気候モデル(気象研究所化学気候モデル バージョン2)について記述する。バージョン2(MRI-CCM2)は、バージョン1(MRI-CCM1)と同様のフレームワークをもち、地上から成層圏までのオゾンおよび他の大気微量成分の時空間濃度分布を計算するために必要な化学・物理プロセスをその相互作用とともに考慮している。詳細な対流圏化学過程を新たに組み込んだことで、対流圏と成層圏におけるオゾン化学過程をバージョン2では統一的に取り扱っている。バージョン2の化学モジュールにおいては、90の化学種・172の気相反応・59の光解離反応・16の不均一反応に加えて、改良されたセミ・ラグランジュスキームをもちいた格子スケールの輸送計算、サブ格子スケールの積雲鉛直輸送・乱流鉛直輸送、乾性・湿性沈着、さまざまな起源からの微量成分のエミッション、の各プロセスを取り扱っている。このバージョン2を用いて数値積分を11年間行い、1990年代の微量成分濃度分布の再現実験を行った。数値積分は、大気場の同化を行った場合と行わない場合の2通りについて行った。この数値積分結果においては、南半球極域の下部対流圏におけるオゾン濃度の過小評価および上部対流圏・下部成層圏の中高緯度における過大評価がみられるものの、中・下部対流圏におけるオゾン濃度の地理的な分布や季節変動はオゾンゾンデの観測とおおむね良く一致した。また、一酸化炭素(CO)・一酸化窒素(NO)・ヒドロキシルラジカル(OH)などの濃度分布の特徴もバージョン2は現実的に再現した。南半球高緯度においてCO濃度を約15ppbv過大評価したものの、バージョン2は観測されたCO濃度の季節変動をおおむね良く再現し、観測されたNO濃度の鉛直分布の特徴を捉え、またOHラジカルの濃度分布は最近の他の化学気候モデルが再現した濃度分布と同様の特徴を示した。
  • 緑川 貴, 石井 雅男, 笹野 大輔, 小杉 如央, 杉本 裕之, 平石 直孝, 増田 真次, 鈴木 亨, 高村 友海, 吉川 久幸
    2011 年 62 巻 p. 47-56
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/31
    ジャーナル フリー
       人為起源CO2の吸収・蓄積に伴い、海洋表層の全炭酸濃度が長期的に増加し、酸性化を引き起こす。海洋の酸性化が今後さらに進行した場合、海洋生態系に大きな影響を及ぼすことが懸念されている。北太平洋亜熱帯域においてこれまでに取得・蓄積されてきた海水中CO2分圧等の炭酸系観測データを使用して、pHの高精度観測が行われていない期間における東西各海域のpH時系列を推定した。北太平洋亜熱帯の各海域で見積られたpHは、いずれも長期的に有意な低下傾向(年平均変化率-0.001~-0.002yr-1)を示した。水温変化の寄与を除いたpHの低下速度は、亜熱帯東部で大きい。亜熱帯東部では、亜寒帯系の高全炭酸水が流入して酸性化を加速させている可能性が見出された。また、pHの低下は、40年前に比べて近年加速しており、今後のCO2の排出シナリオに応じてさらに速くなると推定された。
  • 真野 裕三
    2011 年 62 巻 p. 57-62
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/14
    ジャーナル フリー
       AIRSやIASIのような新世代の衛星搭載赤外サウンダーは数千ものチャネルを持っている。一方、サウンダーの全チャネルの持つ情報の自由度はチャネル数より遥かに小さい。このことは、各チャネルの間に強い相互関係があることを推測させる。もしチャネル間に相互関係があれば、サウンダー用の高速放射モデルの計算に利用できる可能性がある。このため、大気トップから各気圧レベル間の透過率を多数の大気プロファイルについてLine-by-lineモデルで求め、IASIのチャネル間の透過率の関係を統計的に調べた。この結果、CO2チャネル間、および水蒸気チャネル間に相関の良い組み合わせが多数見出された。IASIの配信用616チャネルを対象にした場合、41チャネルの透過率から他の387チャネルの透過率を実用的精度で統計的に推定可能であることが分かった。これらのチャネルでの放射計算は、この統計的推定を利用することにより計算時間が約半分になることが分かった。616チャネルから情報量に基づくチャネル選択を行った場合でも、推定可能なチャネル数は全チャネル数の3割から4割に及ぶため、計算効率の向上に有意に寄与する。
  • 笹野 大輔, 石井 雅男, 緑川 貴, 中野 俊也, 時枝 隆之, 内田 裕
    2011 年 62 巻 p. 63-73
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/12
    ジャーナル フリー
       JFEアドバンテックが新たに開発した高速応答溶存酸素(DO)センサーRINKOを多筒採水器付CTDシステムに搭載し、西部北太平洋および日本海において各層観測を行った。現場での観測によって、RINKOはDOの変化に対して素早く応答することが確かめられた。RINKOの出力には、時間ドリフト(< 6 μmol kg-1)や、下げと上げのキャストの間で圧力ヒステリシス(< 4 μmol kg-1)の問題がみられたが、各層観測によるDOボトルデータに加えて、水温や圧力のデータを用いて補正することができた。DOの変動が鉛直的に大きい表層を除き、今回の方法によってRINKOから得られたDOの不確かさは1 μmol kg-1以内であった。このようにRINKOはCTDシステムと共に使用する上で実用的に十分な精度で鉛直的に連続してDOを観測することが可能であり、より詳細なDOの時間・空間的変動の把握に大いに役に立つであろう。
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