Papers in Meteorology and Geophysics
Online ISSN : 1880-6643
Print ISSN : 0031-126X
ISSN-L : 0031-126X
65 巻
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 清野 直子, 中野 辰美, 能登 美之, 大野 恭治
    2014 年 65 巻 p. 1-14
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/20
    ジャーナル フリー
       気象研究所が参画する研究プロジェクト「気候変動に伴う極端気象に強い都市創り」(Tokyo Metropolitan Area Convection Study for Extreme Weather Resilient Cities,TOMACS)では,2011年と2012年の夏季を中心に,首都圏における積乱雲の発達環境等を調べる目的でつくばにおいてゾンデ観測を実施した.この観測への利用を図るため,高層気象台で開発された気象観測用ゾンデの飛翔予測プログラム(Aerological Observation Simulation, AOS)について,落下予測精度の検証を行った.館野における2004年から2010年までの夏季(6月~9月)を対象期間とし、9時の高層気象観測のうち落下位置情報が取得されていた728事例について,AOSによる予測落下位置を観測された落下位置と比較したところ,予測と観測の位置ずれは平均としては偏りが小さく,距離誤差の平均は約16kmだった.観測された落下位置の75%は,70%予測楕円内に収まっていた.また、90%近い事例では,落下観測位置が90%予測楕円内にあり、落下範囲の予測はしきい値90%で概ね観測と整合していたといえる.いっぽう,99%予測楕円の中に含まれていた観測落下位置は全体の96%で,予測よりも低い割合にとどまった.70%予測楕円内に落下していた事例が70%以上あったことには,AOSで水平風速の予報誤差を表現するために設定されていた風速のばらつきよりも,計算に用いた数値予報モデルの水平風予報誤差が小さかったことが関係していた.また,観測時に降水のあった事例ではAOSの予測誤差が大きい傾向が見られた.
       2011年と2012年の集中観測期間(Intensive Observation Period, IOP)を中心とするゾンデ観測に,AOSプログラムを適用した.この観測では,200g気球を用いて到達高度を現業観測より低い22 km程度とし,下部成層圏での東風の影響を受けにくくすることで,ゾンデ落下域が海上になりやすい設定とした.観測で得られたデータに基づき,AOSにおいて200 g気球使用時に用いる上昇速度・到達高度・降下速度のパラメータの見直しを行なった.その結果,落下予測精度が向上することを確認した.
  • 仲江川 敏之, 鬼頭 昭雄, 楠 昌司, 村上 博之, 荒川 理
    2014 年 65 巻 p. 15-33
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/20
    ジャーナル フリー
       中央アメリカおよびカリブ海地域は時空間的に複雑な気候を示しているにも関わらず、これまで高解像度モデルによる、将来予測が殆ど行われてこなかった。20 kmメッシュと60 kmメッシュ全球大気大循環モデルを用いて、中央アメリカおよびカリブ海での今世紀末の水文気候予測を行い、予測の不確実性を定量化した。この二つの水平解像度は、地域気候モデルを利用する際の粗い水平解像度と同等である。両解像度モデル共に、観測季節降水パターンを良く再現することができた。今世紀の終わりまでに、全ての季節、殆どの対象地域で、降水量は減少すると予測された。陸域での蒸発は、一般的に乾季に減少し、雨季に増加すると予測された一方、海洋での蒸発は、熱帯収束帯を除いて、年間を通じて増加すると予測された。従って、表層土壌水分と表面流出は、全ての季節、殆どの陸域で、両解像度のモデルによって、減少すると予測された。今世紀末では、年河川流量が減少すると予測されているが、それは降水量の減少と蒸発の増加に起因している。広い範囲で陸域平均した水文気象変数は、気節平均、月平均共に、統計的に有意な将来変化が見られた。これとは対照的に、個々の国の領域平均では、年平均値でも、その変化は有意でなく、非常に不確実であった。
  • 小山 亮
    2014 年 65 巻 p. 35-56
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/21
    ジャーナル フリー
       衛星データを利用した熱帯低気圧の強度、すなわち中心気圧(最低気圧)および最大風速の推定は、特に海上など現場観測データが少ない地域において、災害の防止、軽減に重要であるが、現在も困難な課題である。この数十年の間、気象庁及びその他予報センターにおいて、ドボラック法が主要な強度推定手法として利用されているが、この手法は、熱帯低気圧の雲パターン情報に基づく主観的、経験的アプローチによるものである。本研究では、改良型マイクロ波探査計(AMSU-A)の55GHz帯の輝度温度(TB)データから得られる暖気核の強さから中心気圧を推定する新しい手法を開発した。本手法で導入した回帰式は、AMSU-A観測で得られる暖気核の強さとRSMC Tokyo - Typhoon Centerで蓄積されている2008年の台風事例の気象庁ベストトラック中心気圧を関連付けることにより導出した。この導出では、AMSU-A観測に含まれる粗い空間解像度、氷雲及び降水によるTB減衰の影響による誤差を考慮するようにしている。2009~2011年の台風の中心気圧を本手法によって推定し、ベストトラックデータに対して評価した結果、平均二乗平方根誤差が10.1hPa、バイアスが0.3hPaであった。評価データのうち、全体の51%が誤差±5hPa以内、79.3%が誤差±10hPa以内に収まっていた。また、本手法の推定精度は、暖気核サイズが比較的大きく特定の雲パターンをもつ熱帯低気圧の場合に、ドボラック法による推定よりも高い傾向があることが分かった。
  • 北畠 尚子, 星野 俊介, 櫻木 智明
    2014 年 65 巻 p. 57-74
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/29
    ジャーナル フリー
    衛星観測に基づく台風強度推定は、航空機観測が実施されていない北西太平洋において台風情報を即時的に発表するために必須である。気象庁では、TRMM/TMIマイクロ波放射計の10、19、21、37、85GHz帯の輝度温度分布に基づいて台風の最大風速の推定を行う方法を採用している。そこでは台風の構造を表現するために、台風中心から2度以内の領域の輝度温度を用いて同心円や円環の領域のパラメータを計算している。本研究ではその改良のため、台風の移動方向に相対的に、前方、後方、左、右の4象限に分割した領域も設定することで、台風の構造の非対称性を表した。これらのパラメータを1998-2008年の台風観測事例について計算し、k-means法によりクラスター分析を行うことにより台風の構造別に10種類のクラスターに分類した。そしてこれらのパラメータを説明変数、気象庁ベストトラックデータの最大風速を被説明変数として、回帰式をクラスターごとに作成した。
    この2008年までの事例に基づく推定法を、2009-2012年の台風観測事例に適用して、最大風速の推定値の検証を行った。検証期間の全事例のRMSEは6.26 m s-1であった。クラスター別に見ると、輝度温度の非対称性の強いクラスターは先行研究の方法と比較して推定精度が改善したが、軸対称性の強いクラスターに関しては先行研究の方法よりも推定精度が悪化したものがあった。推定精度の改善を阻む要因としては、回帰式の被説明変数がベストトラックデータすなわち推定値でありドボラック法等に起因する誤差を含むことや、台風中心の位置が6時間ごとのベストトラックデータの内挿であるために生じる位置ずれ等が影響していることが考えられる。
  • 新堀 敏基, 甲斐 玲子, 林 洋介, 林 勇太, 菅井 明, 長谷川 嘉彦, 橋本 明弘, 高木 朗充, 山本 哲也, 福井 敬一
    2014 年 65 巻 p. 75-107
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    気象庁の降灰予報で運用している領域移流拡散モデル(JMA-RATM、旧称「火山灰移流拡散モデル」)の改良を行った。(i)初期値の噴煙柱モデルに気象レーダーによる噴煙エコー頂高度の時間変化を利用、(ii)入力値に非静力学モデル(JMA-NHM)である水平格子間隔2 km、鉛直60層(モデルトップ20.2 km)の局地モデル(LFM)を対応、(iii)カニンガム補正した鈴木の落下速度、レインアウト、雨に加え雪・霰によるウォッシュアウトを導入した。従来の火山灰の量のほか、火山礫の径も同時予測の対象とし、これら降下火砕物の密度や形状の予測への影響について検討した。降礫の被害が発生した2011年1月26~27日、2月14日、3月13日、4月18日霧島山(新燃岳)噴火の事例に適用した結果、噴煙エコー頂高度の時間変化の利用とLFMの入力はJMA-RATMによる降灰・降礫予測を改善、カニンガム補正は降灰予測へわずかに効果があった。レインアウトおよびウォッシュアウトは降灰予測への影響が大きいが、観測値が十分でないため今後、キャリブレーションが必要である。また、火砕物の密度や形状の観測値に基づく設定は降礫の到達距離や落下時間の予測への影響が大きいが、一部見逃しがあることから、噴煙柱モデルに風の影響を考慮することが課題である。
feedback
Top