日本きのこ学会誌
Online ISSN : 2432-7069
Print ISSN : 1348-7388
13 巻, 3 号
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  • 種坂 英次, 吉田 元信
    原稿種別: 本文
    2005 年 13 巻 3 号 p. 123-131
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    紀伊半島南西海岸域に分布する7つの島で記録した大型担子菌類の多様性と種数-面積関係について,島の生物地理学的観点から調べた.シロホウライタケ,チャヒラタケ,カレバハツ,ネンドタケ,ウチワタケ,アミスギタケ,アラゲキクラゲなどの種は4つ以上の島々で共通して観察された.外生菌根を形成するカレバハツを除いて,これらのほとんどの種が木材腐朽菌であったことは注目された.各島での記録種数は島の自然植生面積に対して,慣例的な累乗式,S=cA^2,によく適合した.ここで,Sは種数,Aは面積,cとzは定数である.得られたz値,0.350は,本研究と類似の地理的条件をもつ他地域で調べられた維管束植物のそれと比較して小さく,動物のそれよりも大きかった. 種数と陸群集からの距離との間に負の相関性はみられなかった.落合の指数で示した島間の種類似度は,植生面積が似通った島問で高く,さらに共通の陸群集から近距離にある島間,あるいは近接して分布する島問で高かった.
  • 吉田 博
    原稿種別: 本文
    2005 年 13 巻 3 号 p. 133-142
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    ハナビラタケの栄養生長における栄養要求性を基礎培地を設定して静置培養法により検討した.本菌は広範な炭水化物を炭素源として利用できるが,その資化性は炭水化物の種類によりかなり相違していた.グルコース,ガラクトース,マンノース,フルクトース,可溶性デンプン,グリコーゲン,デキストリンは良好な炭素源であった.培地の至適グルコース濃度は2%であるが,可溶性デンプンの至適濃度は5%であり,13%の濃度においても菌糸体は生長した.有機態窒素であるポリペプトン,ソイトン,酵母エキス,肉エキスおよびカザミノ酸は良好な窒素源であるが,無機態窒素での生長は良好ではなかった.窒素源としてアミノ酸を単一添加した場合,アラニン,バリン,アスパラギン酸,グルタミン酸,アルギニン,リジン,セリンで菌糸体の0.59〜0.70倍量の菌糸体収量が得られたが,カザミノ酸に匹敵するものはなかった.本菌の至適窒素濃度は0.01〜0.04%Nの範囲にあった.
  • 種坂 英次
    原稿種別: 本文
    2005 年 13 巻 3 号 p. 143-147
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    西南日本に位置する小さな町,奈良県平群町,において野生きのこ食習慣を調べた.常緑広葉樹が混生する落莫広葉樹林が二次林として優占し,集落の周囲には竹林とアカマツ林が形成されている.ここでは,200種以上のきのこ類が発生するが,伝統的に9種のきのこしか採集・消費されてこなかった.これら9種のきのこはアカマツと共生する菌根菌に限られた.広葉樹林に発生する他のきのこ類は,たとえ商業的な栽培菌として知られた菌,あるいは特に東北日本で一般的に利用される菌であっても収穫されない.本研究は住民,アカマツ林,および菌根菌の緊密な関係を明らかにし,この関係は西南日本に典型的な野生きのこ食習慣を表現した.
  • 吉田 博
    原稿種別: 本文
    2005 年 13 巻 3 号 p. 149-155
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    ハナビラタケの栄養生長にともなう菌糸体中の低分子炭水化物,グリコーゲンおよび有機酸の分布変化を検討した.培地中にギ酸,酢酸,シュウ酸,コハク酸,フマル酸,リンゴ酸,クエン酸およびイソクエン酸が集積し,シュウ酸の集積は他の有機酸類よりも顕著であった.乾燥重量あたり,栄養生長中の菌糸体の低分子炭水化物含量は9.5〜15.5%の範囲であった.菌糸体からトレハロース,グルコース,フルクトース,アラビトール,マンニトールが確認され,主成分はアラビトール,マンニトールおよびトレハロースであった.乾燥重量あたり,菌糸体のグリコーゲン含量は7.0〜11.1%の範囲であった.トレハロース,アラビトール,マンニトール,グリコーゲンは菌糸体に蓄積し,貯蔵炭水化物としての機能を有しているものと思われる.菌糸体の有機酸含量は0.5〜1.2%の範囲であり,9種の有機酸が確認された.主成分はリンゴ酸,クエン酸,フマル酸,シュウ酸およびピログルタミン酸であった.
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