シイタケ上面栽培で生じる廃液(上面水)のバイオレメディエーションなどへの有効利用を目的に,リグニン分解酵素の1種であるラッカーゼに注目し,上面水に含まれる各種酵素活性,上面水による内分泌撹乱物質の減少,上面水におけるラッカーゼ活性の変動,上面水の濃縮法などについて検討した.上面水中には,子実体発生処理後22日目に,ラッカーゼ,セルラーゼ,キシラナーゼ,及び酸性プロテアーゼ等の酵素活性が確認できた.この上面水にビスフェノールAと4-t-オクチルフェノールを500ng/mlになるようにそれぞれ添加して40℃で23時間反応させたところ,それぞれ17.9%と23.5%まで減少した.上面水に含まれるラッカーゼ活性は,最初に液を交換する時期の3-4週間目に最大となり,それ以降減少した.上面水は限外ろ過法により100-200倍に濃縮可能であり,凍結乾燥法によってラッカーゼ活性を66%以上保持した状態で粉末化することも出来た.濃縮上面水を低温保存したところ,約100日までは,ラッカーゼ活性が約80%維持された.以上の結果から,上面水はラッカーゼの酵素源として,濃縮可能で保存性もよいことから,バイオレメディエーションなどへの有効利用の可能性が示された.
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