日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第53回大会
選択された号の論文の105件中1~50を表示しています
  • 畑井 喜司雄
    セッションID: S1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
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    水生動物(特に魚介類)の真菌病を専門に研究する研究者は,私が昭和50年にこの研究に着手するまで日本には存在しなかった.特に,下等菌類に起因する魚介類の病気に関しては,どのような手法で菌の分離・培養・同定・保存および病原性の確認を行えばよいのかが分からず,過去の文献を読むことから着手し,その結果,昭和51年に「魚病研究」に総説「魚類寄生ミズカビ」を掲載することができ,それから手探りで魚介類の真菌病の研究を開始したのが始まりである.水生動物の真菌病は,一旦発生すると有効な治療法がないために,甚大な被害を被ることが少なくない.従って,その防除法が重要な目標となるが,その前に次から次に見つかる真菌病の原因菌を特定することに最初は忙殺された.魚介類の真菌病は,鞭毛菌類の卵菌類に分類される菌であることが多く,海生生物の病原菌は,卵菌類のクサリフクロカビ目の菌類,また淡水生物の病原菌は,同じ卵菌類のミズカビ目の菌類であることをまず明らかにした(なお,現在,卵菌類は菌類から,除外されてストラメノパイル生物に位置付けられている).しかし,魚病学の分野では依然として卵菌類に起因する病気を真菌病として取り扱っている.これは病気を解説する際に安易であることにも因っている.すなわち,クサリフクロカビ目の菌は全実性の組織内寄生菌で,後者は分実性の体外寄生菌である.これらの症例を記載した論文中で,何種類かの菌を新種として報告した.また,多くの経験を積むことで,上述の菌の分離培養法・同定法・感染試験法(網もみ法)・薬剤感受性試験法の手法もほぼ確立した.
  • 廣岡 裕吏
    セッションID: S2
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
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    子嚢菌門,ボタンタケ目に所属するネクトリオイド菌類は,直径約0.3mmの色鮮やかな子嚢殻(子実体)を形成する微小菌類の1つである.ネクトリオイド世代はテレオモルフ(完全世代・有性世代)であり,アナモルフ(不完全世代・無性世代)には,AcremoniumCylindrocarponCylindrocladiumFusariumGliocladiumTuberculariaVerticillium等がある.これらはいずれも,樹木や農作物等の植物の衰退,時には重大な被害をもたらす植物寄生菌として重要である.また,非植物寄生性ネクトリオイド菌類として,植物病原菌に寄生する菌寄生菌や,カイガラムシ・アブラムシ等の害虫に寄生する昆虫寄生菌,デオキシニバレノールやゼアラレノンといった人畜に悪影響をもたらすカビ毒生産菌,セファロスポリン系やシクロスポリン等の有用活性物質生産菌が含まれ,経済的にも重要な菌群である.さらに,Gibberella fujikuroiのようにジベレリン発見の契機となった種も存在している.しかし,日本を始めアジア各国におけるネクトリオイド菌類の分類学的研究に関する報告は少なく,欧米に比べてたち遅れた状態にある.そこで,本研究では,最新の分類体系を基に日本産ネクトリオイド菌類の分類学的検討,さらに新たな類別法の模索を行い,最終目標としてわが国における本菌群のモノグラフ作成を試みた. その結果,本研究では2科16属57種555菌株のネクトリオイド菌類を採集,分離,同定した.これらの中には, 1新属,11新種,日本新産22種(未発表も含む)が含まれていた.また,過去に採集された日本産ネクトリオイド菌類を再検討し,42種について異名処理を行った.新たな類別法については,日本固有種であるNeonectria castaneicolaと広域分布種であるNeo. rugulosaを用いることにより,子嚢内子嚢胞子保有数の違いによる新たな類別法を発見した.本研究では,さらに植物病原菌,害虫に対し病原性の強い寄生菌もいくつか発見され,本菌群の生物資源としての重要性を追認した.これらの結果から本研究は,菌類学だけでなく植物病理学,森林病理学,作物保護学などにおいても重要な知見を得られたものと考える.
  • 中森 泰三
    セッションID: S3
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
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    菌類の子実体は菌類の繁殖器官であると同時に,多くの動物の餌ともなる.子実体のいくつかの形質(形態や毒成分など)は菌食動物に対する防御として進化してきたと考えられているが,実際の菌食動物に対する防御効果はほとんど調べられていなかった.本研究では,子実体食トビムシCeratophysella denisanaの食性を明らかにした上で,子実体のいくつかの形質に防御機能があることを明らかにした.
     まず,野外調査・実験により,C. denisanaは特定の子実体菌種を選択的に利用しており,餌選択を決める要因が子実体にあることを明らかにした.これは,子実体の形質がトビムシの餌選択に影響し,場合によっては防御として機能しうることを示唆する結果である.また,C. denisanaの子実体上での摂食部位,および,胞子の摂食耐性の調査により,C. denisanaは糞によって胞子を分散する可能性が低く,捕食者的性格が強いことが示唆された.
     次に,C. denisanaにほとんど摂食されないヘラタケ(Spathularia flavida)およびツバキキンカクチャワンタケ(Ciborinia camelliae)の子実体は,傷を受けるとC. denisanaに対し忌避作用を示すことを明らかにし,この忌避作用が,これらの菌種が摂食されない一要因であり,被食防御として機能していると推察された.同様に,C. denisanaに利用されない菌種に着目することで,スギエダタケ(Strobilurus ohshimae)とニオイコベニタケ(Russula bella)のシスチジアにはC. denisanaに対して致死作用があり,被食防御効果があることを明らかにした.シスチジアは多くの菌種に見られるが,その生態的機能はこれまでほとんど知られていなかった.本研究はシスチジアの生態的機能を明らかにしたものとしてインパクトは大きいと思われる.
  • 坂本 裕一
    セッションID: S4
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
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    担子菌類の子実体形成には温度と光が重要であり, 子実体の発生誘導, 及び形態形成に重要な影響を及ぼす. エノキタケ(Flammulina velutipes)に暗黒下で低温処理を行った結果, 傘が未分化な子実体(ピンヘッド子実体)を形成した. すなわち,エノキタケは低温のみで子実体原基の発生誘導が可能であること,及び暗黒下では傘が分化しないことが確認された. 二次元電気泳動により, 子実体形成過程で発現するタンパク質を解析したところ, 子実体形成過程で発現量の変化するタンパク質を特定することが出来た. その中には, エノキタケで報告があった遺伝子(C1)のN末端と相同性が高いものが複数含まれていた(FBA1~4). 次に暗黒下温度低下により発現するタンパク質の発現挙動について解析した. その結果, 子実体形成過程で発現する多くのタンパク質は, 温度低下により発現誘導が起こることが明らかになった. 特に, 子実体形成過程に重要な役割を果たすと考えられるFDS遺伝子が温度低下のみで発現が誘導されることが明らかになった.
  • 尾谷  浩
    セッションID: S5
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
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    自然界では,無数の病原微生物が植物を攻撃しているが,その中で特定の植物に病気を引き起こすことのできる病原体の種類は驚くほど少ない.多くの病原体は特定の植物を選択的に侵害し,個々の寄生性には明確な宿主特異性があるのが通例である.植物の寄生病のうち約80_%_は菌類によって引き起こされるが,植物寄生菌類の宿主特異的な寄生性を決定する因子として,宿主特異的毒素(HST)の存在が知られている.HSTの発見は1933年にさかのぼる.Tanakaは,鳥取県の二十世紀ナシに大被害を与えていたナシ黒斑病菌(Alternaria alternata Japanese pear pathotype)の培養ろ液を黒斑病に感受性と抵抗性のナシ品種に処理すると,感受性品種のみ黒色壊死斑が形成されることを見出し,宿主特異性を示す毒素の存在を初めて報告した.しかし,当時は国際的に全く反響を呼ばなかった.その後,1964年にPringleおよびSchefferは,エンバクvictoria blight病菌(Cochliobolus victoriae)などの毒素研究の成果に基づいてHSTの基本概念を提唱し,HSTが注目を浴びるようになった.現在,HSTの定義として,(1) 宿主植物にのみ毒性を示すこと,(2) 宿主植物の毒素耐性度と病害抵抗性が一致すること,(3) 病原菌の毒素生産能と病原性が一致すること,(4) 病原菌の胞子発芽時や侵入時に毒素が放出されること,(5) 放出毒素により宿主植物に生理的変化が引き起こされ病原菌の感染を可能にすること,が挙げられている(西村1970,甲元1990,KohmotoおよびOtani,1991).このような性質を持つ毒素は,ただ単に特異的な毒性を示す物質ではなく,病原菌の病原性発現に不可欠な第一義的病原性決定因子であると考えられている.これまでに, Alternaria属菌とCochliobolus属菌を中心に20種類を越える病原菌がHSTを生産することが報告されている.
  • 柘植 尚志, 張 裕介, 間瀬 千晶, 新城 明久, 八田 理恵子, 伊藤 芳, 田中 孝欣, 播本 佳明, 赤木 靖典, 小松 龍太, 佐 ...
    セッションID: S6
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
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     Alternaria alternataは,自然界に広く分布する本来腐生的な糸状菌である.しかしながら本菌には,それぞれ異なる作物,あるいは作物品種にのみ病気を引き起こす7つの病原性系統が存在し,病原型(pathotype)と呼ばれている(1-4).これら病原型の病原性は,それぞれが生産する宿主植物にのみ毒性を示す菌の第2次代謝産物(宿主特異的毒素)によって決定されている(1-4).したがって,A. alternataの病原型は,腐生的菌株がそれぞれ固有の毒素生産能力を獲得することによって病原菌化したものと考えられ,植物病害発生の根本現象である“腐生菌からの病原菌誕生”,“寄生性の種内分化”を研究するための好適なモデルである.
    筆者らの研究グループでは,A. alternataにおける植物寄生性の進化と種内分化の分子機構の解明を目的として,毒素生合成遺伝子群の同定を進めている.これまでに,7つの病原型のうちナシ黒斑病菌(AK毒素生産菌)(5),イチゴ黒斑病菌(AF毒素生産菌)(6),タンゼリンbrown spot菌(ACT毒素生産菌)(7),リンゴ斑点落葉病菌(AM毒素生産菌)(8)およびトマトアルターナリア茎枯病菌(AAL毒素生産菌)(9)から毒素生合成遺伝子を単離し,それぞれの毒素生合成遺伝子群がクラスターとして存在することを明らかにした.また,各病原菌の毒素生合成遺伝子が1.8 Mb以下の小型染色体にコードされていることを見出すとともに,イチゴ黒斑病菌,リンゴ斑点落葉病菌,トマトアルターナリア茎枯病菌から,毒素生合成遺伝子をコードする小型染色体の欠落株を分離した(6,8,9).これら染色体欠落株は毒素生産性,さらに病原性を完全に失うが,栄養成長,胞子形成,胞子発芽などは正常であり,これら染色体が生存・成育には必要でない余分な染色体であることが明らかとなった.
  • 太田 祐子
    セッションID: S7
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
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    木材腐朽菌は、樹木の辺材および心材を腐朽させる菌である。腐朽菌といっても、生きた木に侵入し枯死させる「病原性」の強い菌から、倒木などの死んだ材のみを栄養源とする腐生性の菌まで、様々な性質をもつ菌を含む。木材腐朽菌のなかでも、根や幹の地際部より侵入し根株を腐朽させる根株腐朽病菌は、しばしば「病原性」の強い菌として問題視されている。特に、ナラタケ属菌、マツノネクチタケ属菌は、重要な林業樹種に対して根株腐朽病害をひきおこす原因菌として、これまで様々な角度から研究がすすめられてきた。マツノネクチタケ(Heterobasidion annosum s.s. ) については、現在、ゲノムプロジェクトが進行中であり(2009年5月に公開予定)、今後分子生物学的な側面からの根株腐朽病の感染機構解明や防除方法の確立が期待されている。今回は、これら代表的な根株腐朽菌であるナラタケ属菌、マツノネクチタケ属菌について紹介する。 1.種・系統について ナラタケ属菌とマツノネクチタケ属菌は、分布域がひろく、病原性や形態に幅のある1種の菌であると考えられていたが、複数の生物学的種を含むコンプレックスであることが明らかされた。現在は、生物学的種ごとに異なる形態的特徴、宿主範囲、分布域、病原性をもつことが明らかになり、これらの情報と分子系統学的手法によって「種」が整理されつつある。しかしながら、離れた地域に分布する異なる種間でも交配試験を行うと比較的高い率で交配が成立したり、数遺伝子座を用いた系統解析でも種間の関係が明瞭にしめされなかったり、種問題は依然として解決していない。属内の種間の関係および系統については、広葉樹と針葉樹の両方を宿主とするナラタケ属菌は、おもに地理的分布が反映されているが、主として針葉樹を宿主とするマツノネクチタケ属菌では、マツ属、トウヒ属、モミ属の分布が、種分化に大きな影響を与えたと考えられる。分布に関しては、局地的には、人為(材や苗木の異動)によって、これまで分布しなかった地域に菌が侵入定着した例がいくつか明らかにされている。
  • 小西 思演, 田中 栄爾, 田中 明男, 武田 桂三, 井上 義彰, 金城 典子
    セッションID: A1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
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     2008年5月及び6月, 東経135˚25'10, 北緯35˚41'00"に位置した冠島で採集したCordyceps sp. を報告する. 冠島はオオミズナギドリの繁殖地としての保護区として規制されている. 蛾の蛹(繭)から生じたCordyceps sp. の子実体は黄色呈した褐色, 高さ3.2-4.2cm, 巾2-3mmの柄部と巾1.2-0.4cm×0.7-1.5cmの頭部からなる. 子嚢果は斜埋生で524-648μm×267-381μm, 子嚢408-613μm×6.7-8.6μm, 子嚢頭部4.8-5.2μm×5.7-6.2μm, 子嚢胞子は4本, 二次胞子に分裂する. 子嚢胞子が32に分裂するものの長さ168-212×1.7-1.9μm, 子嚢胞子が64の二次胞子に分裂するものの長さは290-302×1.9-2.2 μm, 二次胞子の長さは3.3-6.2μm, 平均4.4μm, 一方 32に分裂するもの3.8-6.7μm, 平均4.8μmであった. これまで小林(1983年)によって Lepidoptera の蛹(繭)に寄生したクサナギヒメタンポタケC. kusanagiensis は1981年7月5日山形県草薙で採集され, 稀な種として報告されている. 今回, 冠島で採集されたCordyceps sp. は明瞭に形態的な差異が認められるため, 新種としての可能性はあるのか, 現在rDNAで検討中である.
  • 平山 和幸, 田中 和明
    セッションID: A2
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
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    Lophiosotma bipolare (クロイボタケ綱, プレオスポラ目) は草本・木本植物に生じる淡水生子のう菌類として知られ, 流水域・止水域から氾世界的に報告されている. 本菌は紡錘形子のう胞子の両端に突出した粘性付属糸をもつことと淡水生であることにより特徴付けられ (Hyde 1995, Nova Hedwigia 61: 119), 同様の特徴をもつ淡水生のL. frondisubmersum や汽水生のL. armatisporum とは, 主に子のう胞子の大きさにより区別されている. 子のう胞子にみられる両端突出型付属糸は, 水環境に適応した結果として一般的に考えられている. しかし我々の調査において, 淡水域に加え陸上の植物基質からもL. bipolare 類似菌が多数発見されていることから, その分類学的・生態学的意義について再考する必要がある. また本研究で得られたL. bipolare 類似菌は, 子のう胞子計測値が多様であることからL. bipolare を含む複数種からなると推測される. そこでL. bipolare の定義を明確にし, 類縁種との形態的差異および系統関係を明らかにすることを目的として, L. bipolare 類似菌15 株について, 形態比較と28S およびITS-5.8S nrDNA 領域に基づく分子系統解析を行った.  その結果, 15 株のうち5 株はL. bipolare と同定された. 本種は従来知られていたように淡水域のみに生息するわけではなく, 陸上植物体上にも生息していることが示された. 一方で, 本種と非常に類似した形態的特徴をもち淡水生であるにも関わらず, L. bipolare とは別系統と考えられる株も存在した. 10 株は少なくとも6 種からなることが示唆されたが, これらの種と生息場所や植物基質との関連性はみられなかった. これら類似菌については, 子のう胞子計測値の微妙な違いも考慮し分類する必要があると考えられる.
  • 伴 さやか, 坂根 健, 中桐 昭
    セッションID: A3
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
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     我々は大阪府摂津地方で,クズ大木の根に生息するボクトウガ科幼虫から発生するツブタケ型の冬虫夏草を採取した. 本種はイタドリ等の根塊に生息するボクトウガ科幼虫から発生するボクトウガオオハリタケ(未記載種)よりも子座が短く太いことで区別され,子実体は虫体から1~3本生じ,先で1~2回分枝する. 柄は淡褐色. 結実部は上部に生じ,子嚢殻は表生,赤褐色,卵型で320−570 × 260−350 (451.8 × 308.2) μm,子嚢胞子は225−250 × 5−6 (238.0 × 5.5) μm,多細胞となるがpartsporeに分断しない. 子嚢胞子から得られた分離株のrDNA ITSおよび28S D1/D2領域の塩基配列に基づいた解析を行ったところ, Ophiocordyceps robertsii, O. emeiensis,ボクトウガオオハリタケと相同性が高く,また形態的特徴も類似したが,系統樹ではそれらとは別のクラスターを構成した. これらのことから本種をOphiocordyceps属の新種(和名: クズノイモムシツブタケ)と判断した. また,本種は培地上でHirsutella型アナモルフを形成する. 本種が未熟のまま数年経過した後に,別種のOphiocordycepsに重複寄生され,子実体がほうき状に多数分枝して更に別種のように見えるケースも観察されたので併せて報告する.
  • 廣岡 裕吏, Rossman Amy, Samuels Gary, Chaverri Priscila
    セッションID: A4
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
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    Nectria属菌は, 20属少なくとも200種以上を含むNectria科の基準属であるとともに, 多くの植物病原菌を含むことでも知られている. しかし, 本菌の分類学的研究は, テレオモルフ-アナモルフ関係におけるデータ不足や, Nectria属の定義が幅広いことなどから, 現在狭義Nectria属と呼ばれている. この状況を打開するため, 演者らはこれまでに集めた狭義Nectria属菌を用い, 本菌群の分子系統学的検討を行うこととした. 6遺伝子(ITS, LSU, β-tubulin, EF, ACT, RPB1)を用いた分子系統解析の結果から, 本菌群は大きく2つのクレードに分かれ, それらはアナモルフであるTubercularia属(CL-1)とGyrostroma属, Zythiostroma属(CL-2)によって区別された. CL-1内のN. cinnabarinaは, 4つの系統群の存在が認められた. また, 日本から採集したNectria sp. 1は, 単系統性が支持された. CL-2内では, Gyrostroma属(CL-2-1)とZythiostroma属(CL-2-2)のクレードが形成された. CL-2-1内のN. xanthoxyliは, 2つの系統群の存在が認められた. CL-2-2内のN. cucurbitulaおよびN. aquifoliiは, 2つの系統群の存在が認められた. また, 日本から採集したNectria sp. 2は, 単系統性が支持された. Nectria cinnabarinaNectria属の基準種である. 本研究の結果, 現段階において狭義Nectria属 はN. cinnabarinaTubercularia属をアナモルフに持つ種に制限され, 分生子殻(Gyrostroma属, Zythiostroma属)をアナモルフに持つ種はNectria属菌から取り除く必要が明らかとなった.
  • 原田 守, 高松 進, Vasyl Heluta, Svitlana Voytyuk
    セッションID: A5
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
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    Neoerysiphe属は5種で構成されるうどんこ病菌の小さな属である. Neoerysiphe属の系統関係を再構築し, 宿主, 地理的関係からNeoerysiphe属の進化について考察することを目的として, 35サンプルのITS領域と30サンプルの28SrDNA領域のシークエンスを行い, これに既存のデータを加えて分子系統解析を行った. その結果, Neoerysiphe属は9つのグループを形成し, それぞれのグループは宿主および地理的分布により特徴づけられた. それぞれのグループの宿主はシソ科, クマツヅラ科, ヤエムグラ属, フウロソウ属, キク科の5連により構成された. シソ科寄生菌のグループN. galeopsidisは遺伝的に均一であり, これは本菌が最近になってそれぞれのシソ科宿主に分散したことを示している. 一方, キク科に寄生する菌は, キク科の連ごとに5つのグループに分かれた. うどんこ病の分子時計により, キク科の各連に寄生するグループは1000万年前以降に分化していることが示された. キク科植物はおよそ3800万年~2000万年前にキク科の各連に分化していることから, Neoerysiphe属のキク科宿主の各連への分散はhost-jumpingによるものである可能性が高い. シソ科寄生菌のグループは世界全体, キク科の2連とヤエムグラ属とフウロソウ属寄生菌のグループは西アジアとヨーロッパ, キク科の2連とクマツヅラ科寄生菌のグループは新大陸, キク科の1連に寄生する菌は日本に分布する. また, 今までキク科に寄生する菌は, N. cumminsiana1種とされてきたが, 今回の解析により5つのグループに分かれることが明らかとなった. このうちの1グループをN. cumminsianaとし, その他の4グループの新種記載を準備中である.
  • 山岡 裕一, 升屋 勇人, 稲葉 重樹, 山口 薫, 鈴木 里江子, 長倉 理恵, 徳増 征二
    セッションID: A6
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
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     筑波大学菅平高原実験センターは,本州中央部の標高約1,300mの高冷地に位置し,ススキ草原,アカマツ林,夏緑広葉樹林の他,外国樹種を含む様々な樹木が植栽された樹木園が保護管理されている.この立地を利用し菌類のインベントリー調査を行ってきたが,その調査中に未記載種と考えられるオフィオストマキン科菌類が分離されたので報告する.1) Ophiostoma sp. S-1 :子嚢殻は黒色,基部は球形で直径107-175 µm,頚部は長さ438-924 µm,先端に褐色でやや縮れた孔口毛を有する.子嚢胞子は方形で,壁は薄く2.4-3.6 x 1.2-1.6 µm.アナモルフはSporothrix型.分生子は長楕円形から棍棒型でやや湾曲し,4.0-7.0 x 1.0-1.6 µm.子嚢殻頚部先端に褐色でやや縮れた孔口毛を有し,方形の子嚢胞子を有するOphiostoma属菌として,O. brunneociliatumO. ainoaeが知られているが,本菌はこれら2種とアナモルフが異なる.2) Ophiostoma sp. S-2 :子嚢殻は丸底フラスコ型,基部は黄褐色で直径62-80 µm,頚部は黒褐色,基部と頚部を含め長さ74-152 µm,頚部先端の孔口毛はコーン型で長さ28-46 µm.子嚢胞子は帽子型で,壁は厚く大きさは3.2-4.0 x 1.6-2.4 µm.アナモルフはHyalorhinocladiella型.分生子は棍棒型で,2.0-3.6 x 1.0 µm.子嚢殻の形態はCeratocystiopsis属菌と類似するが,子嚢胞子の形態が異なる. なお,本研究は財団法人発酵研究所の助成をうけて行った.
  • 細矢 剛, 平山 裕美子
    セッションID: A7
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
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    Hyphodiscusは,ズキンタケ目ヒアロスキファ科に所属し,ゼラチン状の托組織と,基部から先端までが顆粒に覆われた短い毛を持つ小型の子嚢盤を形成することを特徴とする.本属菌は本邦には3種が報告されている(Hosoya , 2002).演者は本邦産ヒアロスキファ科菌類についての研究途上,本属に属する未報告種と考えられる試料を採集し,分類学的研究を行なったので報告する. 本種は,Hyaloscyphaの外見に類似した短い柄をもった小型の子嚢盤を形成する.托外皮層は絡み合い菌組織よりなり,比較的厚壁の菌糸状組織がゼラチン状の基質に埋没する.毛は単細胞,円筒形から棍棒形,無色,最大30μm,最太で4μm,全体に粒径約0.5μmの微小な顆粒が付着する.子嚢胞子は4.5-6 x 2-3μm,円筒形,無色,2個の油球を含む.側糸は分枝せず,円筒形,子嚢先端を越えない.単胞子分離株は,Catenulifera型のアナモルフを形成した.PDA上の生育は遅く制限的で,直径27 mm (23C, 2 週間)のコロニーを形成した.気菌糸はわずかに発達し,束状となる.フィアライドは明瞭~不明瞭,最長17μm,基部で膨らみを帯び,最大 2-3μm ,円筒形から細長いとっくり形.カラーはよく発達し,上部にろうと状に開放し, 最大で分生子の2倍程度の長さとなる.分生子はほぼ球形から洋こま状あるいはかぶら形,しばしば基部は断頭形となり,フィアライド上に連鎖あるいはドロップ状となる. 上記のような性状はHyphodiscus属およびCatenulifera既知種とは合致せず,未報告種である可能性が高い.本菌のITS-5.8S配列は,登録済みの配列の中ではH. hymeniophilusと強く支持されたクレードを形成した.しかし,Catenuliferaと形態的類似性が指摘されているCadophoraとの関係は支持されなかった.
  • 藤岡 佳代子, 高松 進, 野村 幸彦
    セッションID: A8
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
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    日本で初めて完全世代が確認された数種うどんこ病菌および新寄主植物の記録 藤岡佳代子1)・高松進1)・野村幸彦2) (1)三重大院生資;2) 千葉県四街道市) Records on teleomorph and host plants of powdery mildew fungi newly found in Japan by K. Kayoko1), S. Takamatsu 1), Y. Nomura 2) (1) Mie Univ.; 2)Yotsukaido-shi)   キランソウ・ナガミノツルケマン・リュウキンカ・アカネ・オタカラコウ・ウラジロマタタビに本邦で初めてうどんこ病菌の完全世代を確認した.カンサイタンポポは新寄主植物・ガガイモ・ノブドウうどんこ病菌は日本で初めて形態の記載を行った.1)キランソウ 鳥取県大山町で’08年10月初旬に採集,菌叢を葉の両面に形成し,付属糸は菌糸状,子嚢は1個,子嚢胞子は8個.Podosphaera fuscaと同定した.2)ナガミノツルケマン 鳥取県大山町で’08年10月初旬に採集,菌叢は葉の両面に形成され,付属糸は菌糸状,子嚢は1個,子嚢胞子は8個.Podosphaera koreanaと同定した.3)リュウキンカ ’06年9月下旬に採集,菌叢は葉や茎に形成され,付属糸は菌糸状,子嚢は3-8個,子嚢胞子は3-5個.Erysiphe aquilegiaeと同定した.4)アカネ 岡山市で’07年11月初旬に採集,菌叢は葉や実に形成され,付属糸は菌糸状,子嚢は複数個,子嚢胞子は2個.Golovinomyces rubiae と同定した.5)オタカラコウ 岡山県苫田郡で’06年11月初旬に採集,葉や茎に菌叢を形成し,付属糸は菌糸状,子嚢は複数,子嚢胞子は未形成.Neoerysiphe galeopsidisと同定した.6)ウラジロマタタビ 鳥取県大山町で’08年10月初旬に採集,菌叢は葉の裏面に形成され,付属糸は基部が膨潤した針状.閉子嚢殻上部に冠毛細胞を多数生じ,子嚢は複数,子嚢胞子は2個.Phyllactinia guttataと同定した.7)カンサイタンポポ 岡山県小田郡で’04年5月に採集,菌叢は葉や茎に形成され,分生子は鎖生,フィブローシン体を含む.Podosphaera fuscaの不完全世代と考えられる.8)ガガイモ 岡山県井原市で採集,菌叢は葉の表面に形成され,付属糸は菌糸状,子嚢は1個,子嚢胞子は8個.Podosphaera sparsaと同定した.9)ノブドウ 岡山市で’03年10月に採集,菌叢は葉の裏に形成され,付属糸は基部が膨潤した針状.閉子嚢殻上部に冠毛細胞を多数生じ,子嚢は複数,子嚢胞子は2個.Phyllactinia guttataと同定した.2),3),6)および7)は本邦における新寄主植物である.
  • 楠田 瑞穂, 淀野 亮祐, 上田 光宏, 白坂 憲章, 山中 勝次, 宮武 和孝, 寺下 隆夫
    セッションID: A9
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
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    マツタケの菌糸体生育に及ぼすトレハロースの影響とトレハラーゼ活性 Effect of trehalose on the vegetative mycelial growth and its hydrolyzing enzyme, trehalase activity *楠田瑞穂1)・淀野亮祐2) ・上田光宏1)・白坂憲章2) ・山中勝次3) ・宮武和孝1) ・寺下隆夫2) (1)大阪府立大・生資循環工研;2)近畿大学農;3)京都菌類研) Title of presentation,by *M. Kusuda1)・R. Yodono2) ・M. Ueda1)・N. Shirasaka2) ・K. Yamanaka3) ・K. Miyatake1) ・T. Terasita2) (1) Lab. of Biocycle Engineering, Osaka Prefecture Univ.; 2) Fac. of Agr., Kin-ki Univ.; 3) Kyoto Mycological Inst.) マツタケ菌糸体はグルコース(Glu)、フラクトース、二糖類ではラクトース、マルトース、セロビオース、トレハロース(Tre)、多糖類のデンプンなどで比較的良好な生育を示す。演者らはこれまでは菌糸体生育のためのGlu供給について検討し、マツタケの糖質基質分解酵素系の特徴と子実体形成を困難にしている酵素生産系の欠陥を明らかにしてきた。今回はGlu2分子からなり、菌糖と呼ばれるマツタケのTreとその生産酵素系について検討したので報告する。
    使用菌株は針葉樹アカマツ由来のT. matsutakeZ-1株を用いた。培養は浜田マツタケおよびマツタケ改変液体培地で検討した。その結果、浜田液体培地のGluをTreに替えて培養すると、Gluの約1.5倍よりも生育が良くなった。また、Glu基質では4%以上で生育抑制が認められたが、Treでは、8%でもなお生育は濃度の増加に伴って良くなった。菌体外トレハラーゼ活性はTre基質とGlu基質とではかなり違った変化を示した。を液体培養した大量の静置培養液からこのトレハラーゼの精製を試みた。得られた部分精製酵素(比活性111倍)についてその性質を調べたところ、活性最適温度35~40℃、最適pHは4.5~5.0の酸性トレハラーゼで、Agイオンで活性化され、Cu,Mn,Znイオンでは阻害された。
    現在、この酵素の完全精製を試みている。
  • 阪本 鷹行, 南  正彦, 上田 暁生, 鈴木 一実, 入江 俊一
    セッションID: A10
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
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    白色腐朽菌Phanerochaete chrysosporiumは二次代謝的に木質リグニンやダイオキシン類等の難分解性有機化合物を単独で完全分解できることから, バイオエタノール生産や環境浄化への応用が期待されている. 難分解性有機化合物分解にはP. chrysosporiumが生産するリグニンペルオキシダーゼ(LiP)やマンガンペルオキシダーゼ(MnP)等のリグニン分解酵素群が深く関与していると考えられているが, 発現機構の詳細については未解明の部分が多い. 本研究室の南らが行ったP. chrysosporiumのトランスクリプトーム解析により, lipおよびmnp遺伝子の転写開始時にCa2+シグナル伝達因子であるカルモデュリン(CaM)遺伝子の転写が誘導されることが示された. 本研究では, リグニン分解酵素発現とCaMとの関係を考察することを目的として, CaM阻害剤がLiPおよびMnP発現へ与える影響を調査した. CaM阻害剤として, トリフルオペラジンとW-7を用いたが, 前者は酵素反応を直接阻害する事が判明し, 以降はW-7のみを用いた. 最終濃度100 μMのW-7を培養48時間目に添加することで酵素活性はほぼ完全に抑制された. しかし, 培養60時間以降にW-7を添加しても, LiP活性は抑制できなかった. また, 対照薬としてCaMに対する親和性が低いW-5を用いた場合は, W-7程には酵素活性は抑制されず, 本実験系におけるW-7の作用機作はCaMであることが強く示唆された. 現在, W-7添加によるlipおよびmnp遺伝子における転写物量変動の測定を行っている.
  • 池田 隆造, 民谷 栄一, 高村 禅
    セッションID: A11
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
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    担子菌ラッカーゼはメディエーターの存在下で, ラッカーゼ単独では酸化し難い物質を酸化することが知られている. 前回, 我々は2,2’-azino-bis(3-ethylbenzothiazoline-6-sufonic acid) (ABTS)の存在下での担子菌ラッカーゼによるアゾ系染料Evans blueの脱色について報告した(平成20年度日本菌学会講演要旨). 今回は, ABTS存在下での担子菌ラッカーゼによるトリアリルメタン系染料に対する脱色を解析した.
    担子菌ラッカーゼは市販のTrametes sp.ラッカーゼ(大和化成)からイオン交換クロマトグラフィーおよびゲル濾過によって精製した標品を用いた. トリアリルメタン系染料はマラカイトグリーンおよびクリスタルバイオレットを用いた. 精製ラッカーゼ(酵素濃度0.5 nM)の両染料(染料濃度0.025 mM)に対する脱色活性は, 反応温度30度, 異なるpH (2.0, 2.5, 3.0, 3.5, 4.0, 4.5, 5.0, 5.5, 6.0, 6.5, 7.0, 8.0), および異なる濃度(0, 0.0005, 0.001, 0.0025, 0.005, 0.01, 0.025 mM)のABTS存在下で, マイクロプレートリーダーを用いて経時的に吸光度を測定することによって測定した. 両染料ともにラッカーゼ単独ではいずれのpHにおいても24時間ではほとんど脱色されなかった. しかしながら, 共存するABTSの濃度に依存してラッカーゼの両染料に対する脱色活性の増加が観察された. 反応6時間後のマラカイトグリーンは0.025 mM ABTS存在下でpH2.5-5.5において70%以上が脱色され, 反応24時間後には0.005 mM以上のABTS存在下でpH3.5-5.0において80%以上が脱色された. 反応6時間後のクリスタルバイオレットは0.025 mM ABTS存在下でpH2.5-5.0において50%以上が脱色され, 反応24時間後には0.005 mM以上のABTS存在下でpH3.0-5.0において70%以上が脱色された. 以上の結果から, 担子菌ラッカーゼのトリアリルメタン系染料に対する脱色活性はメディエーター・ABTSの存在下で著しく高まることが判明した。
  • 川口 未央, 内田 龍児, 野中 健一, 増間 碌郎, 大村 智, 供田 洋
    セッションID: A12
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
    会議録・要旨集 フリー
    [目的] 真菌の代謝産物は新規生物活性物質発見素材として大きな可能性を秘めている. 本研究では最近分離した真菌Cylindrocarpon sp. FKA-58 株の代謝産物と, 同属に帰属したFKI-4750株の代謝産物の比較について報告する.
    [方法] 真菌FKA-58株は箱根のヒマラヤ杉の下の土壌より, FKI-4750株は父島のオガサワラグミ根元の土壌より分離された. 形態観察及び塩基配列解析より両株をCylindrocarponに属する異種菌株と同定した. 両株を10種の培地を用いて振盪培養し, その代謝産物をLC/UVで分析し, 代謝産物に富んだ培地を選択した. 選択した培地でFKA-58株を培養し, 溶媒抽出物を液々分配クロマトグラフにかけ, さらにODSカラムを用いたHPLCにより各ピーク成分を単離精製した. 量的に多い成分は各種機器分析により構造決定し, 抗菌活性等の生物活性を測定した.
    [結果・考察] 各培地における両株のLC/UVパターンは大きく異なっていた. FKA-58株で最も代謝産物数が多いと判定されたのは微量金属群を含む培地であり, ここからascochlorinを含む既知類縁体と新規類縁化合物が単離された. FKI-4750株は何れの培地でもascochlorin類を産生しておらず, 明確な代謝産物は既知fusaric acidのみであり, 特に魚油を含む培地で高産生(2.2mg/ml)されていた.
    FKA-58株から単離された新規類縁化合物は, グラム陽性菌に対する抗菌活性と, diacylglycerol acyltransferase(トリグリセリド生成に関与する酵素)に対する阻害活性が確認された.
    今回の結果より, 既知真菌からも新規化合物は発見できるということ, そして同じ属でも種が異なれば代謝産物は大きく異なることを確認した.
  • 足立 亜衣, 須原 弘登, 前川 二太郎
    セッションID: A13
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
    会議録・要旨集 フリー
    DDTは、第2次世界大戦以降広く利用されてきた殺虫剤である.この物質は,非常に安定な物質であり,一度環境中に放出されると食物連鎖上位の生物に大きな影響を与える.これまで,バクテリアや木材腐朽菌などによるバイオレメディエーションが研究されてきたが,真菌類を用いた研究は初期段階である.そこで,担子菌類を用いてDDTの生物処理に有効な菌類の探索を行った. はじめに,腐生菌を中心に全国から採集した37属65種,不明種31株を用いてHPLC分析によるDDT減少率を指標としたスクリーニングを行った.その結果,TUMC10103 9%,TUMC 10102 10%,TUMC10105 30.7%,TUMC10104 31.9%,TUMC10101 18.7%を優良菌株として選抜した. GC/MS分析を行った結果,TUMC10103,10104から代謝物DDDと考えられる物質が検出された.これら両菌株はHPLC分析でも同様にDDDと思われるピークが検出されているため,DDTはDDDへと代謝されることが示唆された.また,TUMC10101,10102からはDDTの代謝物として微量のDDDと水酸化物が,TUMC10105からはDDDと痕跡量のメトキシル化物が検出された.そのため,TUMC10101,10102はDDTをDDDへ代謝し,その後水酸化物に代謝するか,もしくはDDTを直接水酸化すると考えられる. 現在までにDDTの代謝物として,水酸化物は報告されておらず,本研究がはじめてである.そのため,今後,代謝酵素の特定を行い,DDTの代謝経路を明らかにし,これらの菌を用いたバイオレメディエーション法の確立を目指す.
  • 三川 隆, 藤原 恵利子, 鈴木 真言, 雑賀 威, 金山 明子, 佐藤 弓枝, 池田 文昭, 長谷川 美幸, 小林 寅喆
    セッションID: A14
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
    会議録・要旨集 フリー
    爪白癬の主要な起炎菌はTrichophyton rubrumおよびTrichophyton mentagrophytesであるが, これらの白癬菌の培養には時間を要し, 検出率も低いため, 正確な診断や適切な抗真菌薬治療の点から問題となっている. 本研究ではnested PCRを用いて爪から直接白癬菌のDNAを増幅し, それをRFLPによって分析する同定法(PCR-RFLP法)を検討した. KOH法による直接鏡検で白癬菌に類似した菌体が観察された爪検体50例について, 培養法とPCR-RFLP法を実施し, その結果を比較した. 培養法では爪検体をサブロー寒天培地に接種し, 27℃, 10日間培養した. PCR-RFLP法では爪検体からDNAを抽出し, 白癬菌に特異的なプライマーを設計してnested PCRを行い28S rDNA遺伝子を増幅した. 特異的プライマーで増幅しなかった検体はユニバーサルプライマーを用いて増幅した. PCR産物は4種類の制限酵素を用いて消化し, 電気泳動パターンをBioNumerics(Applied Maths, Kortrijk, Belgium)を用いて解析し菌種を同定した. 白癬菌が検出された症例は, 培養法10例に対して, PCR-RFLP法では, 34例と3倍以上の検出率であった. 特に, 培養法で白癬菌が検出されなかった40検体に対してもPCR-RFLP法では26例から白癬菌を検出することが出来た. また, 白癬菌同定までの時間は培養法では10~20日間を要したが, 本方法では2日以内に短縮された. なお, 白癬菌とその他の菌種が混在していると考えられたPCR産物については温度勾配ゲル電気泳動(TGGE)で目的のDNAを分離した後にPCR-RFLP法を実施することにより白癬菌を検出することが出来た. PCR-RFLP法は爪白癬菌の検出, 同定において, 迅速性, 感度の点から有用な方法であることが示唆された.
  • 時本 景亮, 越谷 博, 長谷部 公三郎, 茂 一孝, 西尾 昭
    セッションID: A15
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
    会議録・要旨集 フリー
     日本産原木栽培品, 中国産原木栽培品および中国産菌床栽培品の乾シイタケサンプルを加熱調理し, 約20名の被験者による官能検査(香り, 味, 歯切れ, 後味の4項目)を行った. ついで同じサンプルの傘部分を粉砕し, 種々の条件で加熱水抽出した後, 濾過液について味認識装置「Insent社製 TS-5000Z」を用いて食味解析を行った. 用いたセンサーと解析した食味の種類は, (1)旨味(AAEセンサー), (2)旨味コク(AAEセンサー), (3)塩味(CT0センサー), (4)苦味(C00センサー), (5)渋味(AE1センサー), (6)苦味雑味(C00センサーとCT0センサー), (7)渋味刺激(AE1センサーとCT0センサー), であった. 他方, 物性測定装置(島津EZ-TEST)による治具貫通エネルギーやポータブル型ニオイセンサ(XP-329_III_, 新コスモ電機(株))による臭気指数も求めた.  官能検査における評価は個人差が大きいが, 概して日本産および中国産の原木栽培品が中国産菌床栽培品よりも高い評価となり, 特に歯切れの差異が明瞭であった. 味覚センサーの測定値は水抽出の温度に左右され, 60-80℃の範囲では温度が低いほど苦味雑味や渋味刺激の値が高くなったが, 旨味や旨味コクの値には比較的影響が小さかった. また, 苦味雑味および渋味刺激は中国産菌床栽培品で強い傾向がみられ, 旨味や旨味コクには3者間に明瞭な差異が無かった. 官能検査で歯切れが良いと評価されたサンプルは物性調査でも治具貫通に要するエネルギーが小さかった. また, 香りが強いと官能評価されたサンプルは臭気指数も高いものが多かった.
  • 上田 成一, 金城 チエ
    セッションID: A16
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
    会議録・要旨集 フリー
    〔目的〕昨年度に引き続き, 耐熱性カビの発芽および生長に及ぼす二酸化炭素の影響について調べたので報告する.
    〔方法〕供試菌株は, 食品原材料由来のHamigera avellanea, Neosartorya glabra, N. hiratsukae, N. spinosa, Talaromyces bacillisporus (2菌株), T. macrosporus の7菌株を, オートミール寒天培地で1, 2, 3ヵ月, 25または37℃で培養後, 子嚢胞子懸濁液を定法により調製した. 試験には, 普通ブイヨン(pH5.0, 以下NB培地)とNB培地に寒天末2%を加え平板培地にしたもの(以下NBA培地)を使用した. 子嚢胞子懸濁液を0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)を用いて106cells/mLに調製した後, ブドウ果汁で置換し80℃, 10分の加熱後, 氷冷して試料とした. NB培地は, あらかじめ48wellマイクロプレートに490μL/wellずつ分注しておき, 各試料を2wellに10µLずつ, NBA培地の場合は2ヵ所に3µLずつを接種した. 試料を接種したマイクロプレートとNBA培地, 酸素吸収剤をアルミパウチに入れ, 酸素濃度0%(二酸化炭素濃度は約10%)になることを確認し, 混合ガスを用いて二酸化炭素と窒素の濃度比(%)30:70, 50:50, 70:30に設定した. 25または37℃で1, 5, 14日間および1ヵ月間培養後, 倒立顕微鏡を用いて子嚢胞子の発芽の有無を計測し, 平均発芽率を算出した. 次に, 画像解析ソフトを用いて発芽菌糸の長さを計測し, これを生長度とした.
    〔結果〕NBA培地において, 二酸化炭素濃度約10%では供試菌株全ての発芽を完全に阻害した. NB培地においては菌種によって二酸化炭素の影響が異なり, H. avellanea およびN. glabra は50%, N. hiratsukae は70%で完全に発芽阻害を受けたが, N. pseudodischeri, N. spinosa, T. bacillisporus, T. macrosporus は70%でも完全に発芽を阻害することはできなかった. 生長度は, 全ての供試菌株で二酸化炭素濃度が増すにつれ小さくなった.
  • 山口 薫, 田中 健治, 中桐 昭
    セッションID: A17
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
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    不完全菌 Peyronelina glomerulata は水辺の浸水した腐朽木等に生息し,中心部の20-30個の球形細胞とそれをとり囲む7-17本の腕からなる王冠型の分生子を基質表面の気中に形成する.この分生子は空気を抱き込み,水に浮く構造となっており,半水生菌の特徴を備えている.
    すでに我々は,これまでの培養による生活環の解明と形態や分子系統の研究から,本種のテレオモルフはフウリンタケ型担子菌 Flagelloscypha であることを明らかにしている.今回,菌糸隔壁の微細構造を観察したところ,本種が真正担子菌綱に特徴的なパレントソームに囲まれた樽型孔隔壁を有することがわかった.過マンガン酸カリウムとオスミウム酸の2種類の固定法を用いて観察したところ,隔壁孔中央部のseptal swellingの周りに電子を透過する領域を持つという特異な隔壁構造を持つことが明らかになった.同様の隔壁構造は,海生担子菌である Nia vibrissa 及び Digitatispora marina でも観察されている(Brooks, 1975).
    系統解析によると, Peyronelina glomerulata 及び FlagelloscyphaNia vibrissa に近縁で,フウリンタケ型担子菌の多くが含まれる Nia クレードに属する.このような特異な隔壁構造がフウリンタケ型担子菌の系統を反映したものなのか,水生環境という生態を反映したものなのか,興味が持たれる.
  • 田中 栄爾, 古賀 博則
    セッションID: A18
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
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    Heteroepichloë sasae(子嚢菌類,バッカクキン科)は宿主チマキザサ(Sasa sp. Sect. palmata)の未展開葉の葉鞘を取り巻く黒い角状の子座を形成する.活物寄生菌である本菌の宿主–寄生菌相互関係を明らかにするため,光学顕微鏡と透過電子顕微鏡による組織観察をおこなった.まず,本菌が感染している宿主の展開葉上面に現れる白い組織を観察した結果,この組織は葉の上面の葉脈に並行して成長した菌糸の残渣であると考えられた.また,子座のパラフィン切片を光学顕微鏡で観察すると,子座は未展開葉間のすきまを埋めており,菌糸は宿主組織内には侵入していないことが確認された.次に,本菌の栄養摂取法を解析するため,宿主生長点付近の組織の超薄切片を透過電子顕微鏡で観察した.まず,子座が形成されている未展開葉を観察したところ,葉の上面側の菌糸は葉脈と並行に積層しており,葉の近くほど菌糸が細く,菌糸の内部も充実していることが明らかになった.また,葉の裏面側には菌糸が散在していた.菌糸と宿主の接触面では,植物細胞壁にもクチクラ層にも全く変化は見られなかった.さらに,糖質(1,2-グリコール基)を検出する塩基性ビスマス染色をおこなったところ,葉の上面側の菌糸の周辺に多量の糖質が検出された.一方,子座が形成されていない宿主生長点付近の組織を観察したところ,菌体の存在は認められず,葉上面の糖質の滲出も検出されなかった.以上の結果から,本菌は宿主生長点付近の葉の上面の細胞から,何らかの作用により糖質の滲出を促し,その滲出した糖質を栄養源として葉鞘内で生育するエピファイト(Epiphyte)であると結論づけられた.エピファイト菌糸は葉の成長とともに葉脈に並行に生長し,宿主葉から離れた菌体は肥大して子座に変化すると推測された.また,子座を形成する前に葉が展開した場合は,菌糸の生育が停止すると考えられた.
  • 藤川 貴史, 阿部 敬悦, 久我 ゆかり, 西村 麻里江
    セッションID: A19
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
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    動植物は病原菌の感染時に, 病原菌の細胞壁成分を認識する事で生体防御反応を引き起こし感染を阻止する. 一方で病原菌は自身の細胞壁成分を再構築することで宿主の認識を回避していることが知られている. いもち病菌(Magnaporthe grisea)は主にイネ科穀類に感染する病原糸状菌であり, イネによる細胞壁の認識を回避する何らかの機構を持っていると考えられるが, 感染時の細胞壁成分に関する知見はこれまでほとんどなかった. そこでイネ葉鞘を用いて感染時のいもち病菌の主要な細胞壁成分の局在について, 特異的な蛍光標識染色により観察を行った. β-1,3-グルカンやキチンは発芽管や付着器で観察されたが, 侵入菌糸ではほとんど検出されなかった. 一方、α-1,3-グルカンは発芽管や未成熟な付着器及び侵入菌糸で検出された.またプラスチック上で感染器官を形成させた場合, α-1,3-グルカンは付着器でしか検出されなかったが, 植物成分の添加によりα-1,3-グルカンが発芽管でも検出された。これらの結果から、いもち病菌においてα-1,3-グルカンは植物成分により蓄積が誘導されることが明らかになった. イネにはα-1,3-グルカナーゼがないことから, イネによる菌の細胞壁認識の回避機構にα-1,3-グルカンが関わっている可能性が考えられる.(本研究は生研センター異分野融合研究事業により支援を受けた。)
  • 久我 ゆかり, 藤川 貴史, 西村 麻里江
    セッションID: A20
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
    会議録・要旨集 フリー
    生きている宿主細胞中に侵入し共存が成立する糸状菌病において,宿主による病原菌の認識機構と病原性との関係を解明することは重要である.近年ヒトの感染症において宿主細胞中酵母型細胞の細胞壁で新規に生成されるα-1,3-グルカン(αGlu)がβ-1,3-グルカン(βGlu)の外側に多く位置し,宿主による病原菌認識機構を抑制することが報告されている.イネいもち病菌(Magnaporthe grisea)の分生胞子は葉面で発芽して発芽管を伸ばし,付着器を形成した後表皮細胞に侵入し,宿主細胞中で生育・蔓延する.感染成立における病原菌細胞壁の役割を検討するためイネ葉鞘に接種したイネいもち病菌の細胞壁成分を免疫蛍光抗体法により検討したところ,αGluおよびβGluの存在が確認されたため、本研究では両細胞壁成分の局在を免疫電顕法により検討した.接種48時間後のイネ葉片を,化学固定(2%グルタルアルデヒドおよび1%オスミウム酸による二重固定)あるいは急速凍結固定し,前者はエタノール脱水,後者は0.01%オスミウムアセトンによる凍結置換後,Spurr樹脂に包埋した.αGluおよびβGluに対してそれぞれマウスIgMλ(MOPC-104e),(1→3)-β-グルカンマウスIgGモノクローナル抗体,次いで各金コロイド標識二次抗体でラベルした.その結果,各細胞壁成分が検出された領域に重なりはあったが,βGluはいもち病菌細胞壁全体に,またαGluは細胞壁外側周辺にもっとも多く検出される傾向があり,両グルカン成分の細胞壁内局在には偏りがあることが示唆された.今後、宿主細胞による病原菌認識におけるαGluおよびβGluの役割を明らかにする必要がある.(本研究は生研センター異分野融合研究事業により支援を受けた.)
  • 金子 繁, 西田 正幸
    セッションID: A21
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
    会議録・要旨集 フリー
     家庭用生ゴミ処理機による生ゴミ分解の基材として用いるために販売されている,袋入りスギオガ屑が,袋内で変色を起こしているため,購入者が原因を気にして問題となった.スギオガ屑は,間伐材の有効利用という観点,さらにオガ屑は表面積が大きく,多孔性であり,保水性,通気性が良いことなどで,優秀なバイオリアクターとして,生ゴミの分解に利用することが図られてきた.オガ屑の変色は和歌山県内のスギ間伐材を利用した「バイオウグラン」と呼ばれる販売用オガ屑で起こった.変色は,オガ屑を入れたビニール袋内面に接したオガ片を中心に散在的に見られ,変色部表面を観察した結果,オガ屑の表面にかびなどが生育しているのではなく,個々のオガ片が青褐色に内部から変色していることが明らかになった.変色オガ屑片からの分離試験で,Ophiostoma piceaeが高い頻度で分離され,非変色オガ屑片からも同菌が低頻度で分離された.スギオガ屑が作製されたスギと同地域に生育していたスギ丸太(伐倒後1ヶ月,2ヶ月,6ヶ月)の樹皮部,辺材部,心材部からの分離試験では,O. piceaeは分離されなかった.しかし,同様のスギ丸太からオガ屑を作製したオガ片からは,伐倒後1ヶ月,2ヶ月,6ヶ月のオガ屑から,それぞれ24%,20%,1%の分離頻度でO. piceaeが分離された.さらに,未変色のオガ屑をビニール袋に詰め,25℃,および室温に置いた結果,1ヶ月後に伐倒後1ヶ月および2ヶ月のスギ丸太から作製したオガ屑において,ビニール袋の内面に接した部分で変色が確認され,発生頻度は伐倒後1ヶ月の丸太からのオガ屑の方が高かった.変色オガ片からは高い頻度でO. piceaeが分離された.以上から,生ゴミ処理機の基材に用いるスギオガ屑の変色にはO. piceaeが関与することが示唆された.
  • 月星 隆雄, 張 猛, 早川 敏広, 岡部 郁子, 菅原 幸哉
    セッションID: A22
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
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    2008年新潟県でオーチャードグラスおよびリードカナリーグラスから分離されたBipolaris属菌は, 長さ50-225μm の大型黄褐色分生子を形成し, 日本新産種B. zeaeと同定された. 本菌はrDNA-ITS塩基配列に基づく分子系統解析ではB. bicolorの近縁に位置した. 中国河南農業大学保存株Curvularia sichuanensisはへその突出した褐色分生子を形成し, 形態的に類似するクローバ汚斑病菌C. trifoliiより分生子幅が広く, 異なる分子系統となり, 日本でも沖縄県のローズグラスから分離された. 中国産種C. pseudorobustaは分生子が褐色で強く屈曲し, 中間細胞が大きく膨れ, C. trachycarpiの分生子は淡色でほとんど屈曲せず, 中間細胞はあまり膨れず, イネ褐色米の原因菌C. inaequalisと近縁であった. その他数点の中国産菌株が既報の形態記載あるいはITS配列がDDBJデータベースと一致せず, 新種となる可能性がある. 静岡県で採集した葉枯パッチ症状を示すベントグラスから日本新産種Drechslera catenariaを認めた. 本菌の分生子は淡色, 倒棍棒形で, 先端に向かって漸尖し, コムギ黄斑病菌D. tritici-repentisと近縁であった. また, 北海道, 山形, 長野および静岡の各県で採集した同症状サンプルからはブルーグラス褐斑病菌D. poaeと形態的に類似するが, 分生子がより淡色で, 偽隔壁数の少ない菌が分離され, 分子系統でも明らかに別グループとなることから, 新種と考えられた. Bipolaris, CurvulariaおよびDrechslera属菌の形態およびrDNA-ITS領域の配列データを蓄積することで, 各菌種の分子系統上の位置をより明確にできる.
  • 島本 繭, 橋本 靖
    セッションID: A23
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
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    林床性の草本植物であるベニバナイチヤクソウはその種子に胚乳を持たないため, 自力で発芽することが出来ない. 近年, これらの種子がロウタケ科の一種の菌に寄生して発芽する例が観察されている. その一方, 成熟した森林で大きなコロニーを形成しているベニバナイチヤクソウは, 樹木と共生する多様な外生菌根菌と非特異的に共生し, その中に発芽の際の特異的な菌は見られていない. このような共生菌の変化が, 発芽から成熟するまでの生長過程でどのように起こるのかは明らかではない. そこで本研究では, ベニバナイチヤクソウの発芽時に特異的に関わる菌が, 比較的若い段階の成体において継続して定着しているかを明らかにすることを目的とした. 実験として, 2ヶ所のシラカンバ若齢林において本種の種子約8万粒を埋設し, 発芽時の共生菌の種を再確認した. また, 種子を埋設した場所の近くで, 発芽から間もない本種個体の菌根菌と, その周辺のシラカンバの若齢木の外生菌根菌の種構成をrDNAのPCR-RFLP法とシークエンスによって調べ, 発芽時の特異的共生菌が菌根を形成しているかの確認を行った. その結果, 埋設した80437粒の種子のうち約4%にあたる3518粒が発芽していた. DNAの抽出を行った菌は埋設林によらず, 全てロウタケ科の1種であるSebacina vermiferaに最も高い相同性を示した. 一方, ベニバナイチヤクソウ及びシラカンバの外生菌根サンプルからは, 多様なタイプの菌が出現した. ベニバナイチヤクソウの菌根55サンプルのうち, 約9%が発芽時の共生菌と同じS. vermiferaと思われる菌によるものだったが, シラカンバ外生菌根からはこの菌は見つからなかった. 以上より, ベニバナイチヤクソウは, 発芽後しばらくの間, 発芽時に特異的に依存していた菌を保持したままであるが, 森林が成熟しコロニーが拡大するにつれ, 徐々に周囲の外生菌根菌に共生相手を乗り換えて生活していると考えられた.
  • 馬田 英隆, 辻田 有紀, 遊川 知久
    セッションID: A24
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
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    【目的】ヒナノシャクジョウ科の植物はいずれも光合成を行わず,菌根菌から有機炭素を得て生育する菌類従属栄養植物である.日本に自生するキリシマシャクジョウの菌根菌については,すでに寺下・川上(1991)によりAM菌であることが明らかになっているが,日本産ヒナノシャクジョウ科の菌根菌について分子レベルで特定を試みた報告はない.そこで,本研究では キリシマシャクジョウ,シロシャクジョウおよびルリシャクジョウの菌根菌について分子レベルでの特定を行った. 【材料と方法】 キリシマシャクジョウは2集団(鹿児島県湧水町と垂水市)から16個体,シロシャクジョウは2集団(鹿児島県湧水町と屋久島町)から12個体,ルリシャクジョウは1集団(鹿児島県屋久島町)から3個体を採取した.採取した植物体の根組織からDNAを抽出し,菌に特異的なプライマーを用いて核DNAリボソームRNA遺伝子SSU領域を増幅した後,得られた塩基配列をGenBankの既知データと比較することで,菌の種類を特定した. 【結果及び考察】 それぞれの植物体の根から得られた菌の配列はすべてGlomus group A に属した.キリシマシャクジョウ2集団から得られた菌根菌の塩基配列は全て同じであり,またルリシャクジョウにおいても全て同一であった.シロシャクジョウ2集団からは4タイプの塩基配列が検出されたが,それぞれ98%以上の相同性があった.シロシャクジョウ,ルリシャクジョウおよびキリシマシャクジョウから得られた配列間での相同性は93%~95%であった.ルリシャクジョウとシロシャクジョウの1集団(屋久島町)は同一場所に混在していたが,菌を住み分けていた.以上のことから,3種のヒナノシャクジョウ属植物における菌根菌の種特異性は非常に高いと考えられる.
  • 松田 陽介, 清水 瞳子, 森 万菜実, 伊藤 進一郎
    セッションID: A25
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
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    イチヤクソウ属植物は根に菌との共生体であるアーブトイド菌根を形成し,自らの光合成生産物に加え,根系に定着する菌根菌を通じて周囲の樹木から光合成産物を獲得すると示唆されている.イチヤクソウは日本の様々な森林生態系の林床に生育する常緑多年生草本であるが,上記のような栄養獲得様式に関する知見はない.そこで本研究では,イチヤクソウの栄養獲得様式を明らかにするための端緒として,異なる光環境下で生育する個体の菌根形成とその形成率の季節変化,定着する菌類を調べた.調査は,三重県津市のコナラ・クヌギ二次林で行った.2007年1月から11月にかけて,合計6回,イチヤクソウ3個体ずつを明所,暗所から採取した.採取個体の光環境は,各個体と林外の被陰されない場所における照度の比較にもとづき相対照度として算出した.各個体の根系は,基部,中央部,先端部の3つの部位に大別し,各部位から10~30枚の切片を作成してから,光学顕微鏡観察を行った.根の表皮細胞に貫入する菌根菌菌糸の侵入形態にもとづき6タイプ(コイル初期,コイル,分解初期,分解,コイルなし,デンプン)に大別し,その割合を測定した.上記調査のために採取した個体,さらにDNA解析用に採取した個体の菌根からDNA抽出をしてからITS領域のシークエンス解析を行った.得られたDNA塩基配列はBlast解析を行った.採取した全ての根で菌糸コイルが確認されたことから,イチヤクソウにおいてアーブトイド菌根の形成を明示した.明所,暗所における菌糸コイルの形成率は,それぞれ16.8%から46.2%,14.1%から58.1%と季節によって異なり,上層木により林冠が被覆される5月,7月の夏期において高くなる傾向を示した.菌糸コイルの形成割合は根の部位により異なり,根の先端部から基部にかけて減少する傾向にあった.根に定着する菌種として,現在までに,主としてベニタケ科が推定されている.以上より,イチヤクソウは林床の光環境が悪くなる条件下で菌根形成を,特に根の先端部で高頻度に行なうと考えられた.さらに,イチヤクソウに定着する菌根菌種はいずれも外生菌根菌種と分類学的に同一であるため,上層木のコナラ,クヌギに外生菌根を形成する菌と菌糸を介して繋がっている可能性がある.
  • 山中 高史, 赤間 慶子, 早乙女 梢, 根田 仁
    セッションID: A26
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
    会議録・要旨集 フリー
    1998年9月、2002年10月、伊豆諸島三宅島の火山噴出物堆積地に生育するオオバヤシャブシの地下からAlpova属と思われる地下生菌を採取した。また、三宅島2000年噴火によってオオバヤシャブシが枯死した地点から土壌を採取し、そこでオオバヤシャブシ実生を育てたところ、地下部にAlpova属と思われる子実体が形成されていた(Yamanaka and Okabe 2006)。これら子実体から分離した菌株を、フランキア菌株を接種して根粒を形成させるか、菌を接種しないが窒素施与して育てた、オオバヤシャブシ苗にそれぞれ接種した。その結果、いずれも外生菌根を形成し、それらはこれまで海外において、Alpova diplophloeusの接種によってハンノキ属実生苗に形成された外生菌根とよく似た特徴を有していた。これら菌の窒素栄養源の利用能を調べたところ、アンモニア態窒素およびグルタミン酸をよく利用していた。また、nucLSU領域を使用し、これら分離菌の分子系統解析を行ったところ、本菌はハンノキ属樹木の菌根菌として海外で報告されているA. diplophloeusA. austroalnicolaと同一クレードを形成し、近縁であることが示された。その一方で、本菌はA. diplophloeusA. austroalnicolaとは大きく異なるnucLSU塩基配列を有しており、異なる種である可能性が示唆された。
  • 柳原 巧, 岩瀬 剛二
    セッションID: A27
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
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    鳥取砂丘は,鳥取市の日本海側に面した日本最大の海岸砂丘であり, 砂丘植物の典型的自生地としての価値は極めて大きいものである. しかしながら, 鳥取砂丘において, 草本植物の感染形態をはじめとする菌根菌の感染実態に関する報告はなく, 不明である。そこで鳥取砂丘の一部である鳥取大学乾燥地研究センター内の海岸砂丘を調査地とし, 砂丘草本植物におけるアーバスキュラー菌根の感染形態を細胞学的に調査した.  調査地において植生調査を行い, ウンラン(Linaria japonica), オニシバ (Zoysia macrostachya),ケカモノハシ (Ischaemum anthephoroides), コウボウムギ (Carex kobomugi),ハマグルマ (Wedelia prostrata), ハマニガナ (Ixeris repens), ハマニンニク (Elymus mollis), ハマヒルガオ (Calystegia soldanella), ハマボウフウ(Glehnia littoralis)の9種類の砂丘草本植物を同定することができ, これら植物の採取を行った. 定法に従って植物根内のアーバスキュラー菌根の組織を染色して, アーバスキュラー菌根形成の有無を調査し, 感染形態やアーバスキュラー菌根特有の組織の観察を行ったところ, 調査した植物種の全てにおいてアーバスキュラー菌根の形成が認められた. さらに, 非菌根性あるいは菌根形成頻度が低いとされているカヤツリグサ科のコウボウムギの根にも樹枝状体の形成が認められ, アーバスキュラー菌根の構造が観察できたことから, アーバスキュラー菌根菌は調査地の植生において普遍的に存在することが示唆された. また, ハマヒルガオ, コウボウムギでは菌根形成率, 感染率ともに低く, これら植物は菌根依存性が低いと推測された.
  • 岡山 将也, 谷亀 高広, 岩瀬 剛二
    セッションID: A28
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
    会議録・要旨集 フリー
    ラン科植物の種子は極めて小さく貯蔵養分をほとんど蓄えていないため, 発芽や初期の生育に必要な栄養分を完全に菌根菌に依存しており, このような菌依存性は菌従属栄養と呼ばれている. ムヨウラン属 (Lecanorchis spp.) は, 日本に10種程度分布しており, 緑葉を持たず生活環全体を通して菌従属栄養となった無葉緑のラン科植物である. そこでムヨウラン属の根に共生する菌根菌を明らかにし, 生態の解明と保全に資する知見を得ることを目的として研究を行った.
    採取したラン科植物は, ムヨウラン属の, キイムヨウラン (Lecanorchis kiiensis), エンシュウムヨウラン (L. kiusiana var. suginoana), ミドリムヨウラン (L. virellus), ウスギムヨウラン (L. kiusiana), ムヨウラン (L. japonica), ホクリクムヨウラン (L. hokkurikuensis), クロムヨウラン (L. nigricans), アワムヨウラン(L. trachycaula), シラヒゲムヨウラン (L. flavicans var. acutiloba) および種名不明のムヨウラン属の1種 (Lecanorchis sp.) である. 定法に従い, ムヨウラン属の菌根菌の分離菌株を取得した. 培養菌糸からのDNA抽出にはCTAB法を用いた. さらに, 1 cm~2 cmに切断した根からもDNeasy Plant Mini Kit (QIAGEN) を用いて, 直接DNAを抽出した. rDNAのITS領域の塩基配列を用いて, 分子系統解析を行い, 菌根菌を同定した.
    一部のサンプルからはチチタケ属のチョウジチチタケ(Lactarius quietus)が見出され, ムヨウラン属の菌根菌は全てベニタケ科 (Russulaceae) に属する菌類であることが示された. ベニタケ科の菌は樹木に外生菌根を形成することが知られている. ムヨウラン属は光合成能力がなく, この結果はベニタケ科の菌の菌糸を通して樹木の光合成産物がムヨウラン属に供給されており, 樹木, ベニタケ科の菌根菌, ムヨウラン属の三者間共生が成立していることを示唆するものであった.
  • 奥田 彩子, 大和 政秀, 岩瀬 剛二
    セッションID: A29
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
    会議録・要旨集 フリー
    エリコイド菌根はツツジ科植物内の特定の亜科の根中で表皮細胞のみに形成されるコイル状の菌根である. エリコイド菌根を形成する植物においてツツジ科植物についての研究は行われることが多いが,その他の科の植物についてはよく分かっていない. 本研究ではその代表例として特にツツジ目に含まれるイワウメ科のイワウチワ,オオイワカガミの菌根に着目した.
    イワウメ科の植物は従来の分類体系では1科でイワウメ目を作るとされていたが,DNA塩基配列データを加味した上で高等植物を分類したAPG植物分類体系ではツツジ目に入り,エゴノキ科やハイノキ科に近いとされる. 山地の岩場や高山でその姿を見ることが多い.
    ツツジ科以外の植物においてもツツジ科植物と同じ種類の菌類が菌根を形成し,植物間の菌根ネットワークを作る例が近年見付かってきており(Bergero et al. 2000など),イワウメ科でもそれが形成されることにより他の植物と養分のやり取りなどを行っている可能性がある.
    これらイワウメ科植物の菌根の形態を調べたところ,菌糸コイルが形成されている根の太さなどに若干の違いはあるが,イワウメ科植物もツツジ科植物同様にエリコイド菌根様の菌根を形成し,そのコイルは表皮細胞に限定されていることがわかった. そこで菌根菌の同定を行い, また周辺に生育する樹木の根をサンプリングし,その根内の菌根菌を比較することでイワウメ科植物との間で菌根ネットワークを形成する可能性のある植物及び菌について調べた.
    イワウチワは鳥取県においてレッドデータブックに記載されている種であり,その菌根について調べることはイワウチワの保全につながるであろうと推測される.
  • エストラーダベラスコ ベアトリス, ルイスロサノ ファン マニュエル, バレア ホセ ミゲル
    セッションID: A30
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
    会議録・要旨集 フリー
    Increased salinization of arable land is anticipated to raise devastating global effects in the coming years. Mediterranean countries already have both arable land salinization and desertification problems. Arbuscular mycorrhizal (AM) fungi have been shown to improve plant tolerance to abiotic environmental factors such as salinity. The AM fungi Glomus coronatum, which is a reperesentative species in salinity environments, and isolated from sand dunes in the Natural Park of Cabo de Gata (SE Spain) was used in our study. Two other AM fungi isolated from non-salinized environments; G. intraradices and G. mosseae were also used in the experiment. Asteriscus maritimus (L.), a member of the Asteracea family, was selected to carry out the greenhouse experiment to be native of lands surrounding the Mediterranean Sea, especially Spain. In this study, A. maritimus plants were grown in sand and soil mixture with two NaCl levels (0 and 50 mM) during 10 weeks of non-saline pre-treatment, following 2 weeks of saline treatment. Results showed that inoculated plants grew more than nonmycorrhizal plants. Unexpectedly G. intraradices was the most efficient AM fungi in terms of fresh weight, dry weight and Qyield although plants inoculated with G. coronatum showed better stomatic conductance. Plants inoculated with G. mosseae showed a intermediate pattern between the other two AM fungi. Based on these results, the AM fungi inoculation helps the growth of A. maritimus in saline conditions and G. intraradices appears to be the most efficient of the three AM fungi studied. This study may be useful in revegetation and regeneration projects by selecting adequate species of AM fungi.
  • 廣瀬 俊介, 岩瀬 剛二
    セッションID: A31
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
    会議録・要旨集 フリー
    ギンリョウソウ(Monotropastrum humile)及びウメガサソウ(Chimaphila japonica)は共にツツジ科シャクジョウソウ亜科の植物で, ギンリョウソウ属は葉緑素を欠く絶対的な菌従属栄養植物であり, ウメガサソウ属は緑葉を持つが, 菌類にも依存する部分的菌従属栄養植物であることが示唆されている. ギンリョウソウは, 根系に菌根を形成し, ベニタケ科と特異的に共生関係を持つことが明らかにされてきているが, ブナ林における菌根共生の実態は明らかになっていない. また, ウメガサソウは菌根共生現象に関する知見に乏しい. 本研究はブナ林に自生するこれら植物の菌根共生の実態を明らかにすることを目的とした. 鳥取県八頭郡八頭町のブナ純林にはギンリョウソウとウメガサソウが自生しており, その植物形態および菌根形態を光学顕微鏡を用いて観察し, 次いで菌根のrDNA ITS領域を用いて系統解析し, 菌根菌種を同定した. その結果, ギンリョウソウは根に菌鞘とペグ状組織が認められ, モノトロポイド菌根を形成していることが確認できた. また, 植物のサイズや形態, 菌根形態の違い等により2つのタイプに分けることができ, それぞれのタイプはベニタケ属内の異なる種の菌根菌と共生していることが系統解析の結果, 示された. 一方, ウメガサソウは表皮細胞内に菌糸コイルが認められたことなどから, アーブトイド菌根を形成していることが確認できた. また, 系統解析の結果, キシメジ属の菌根菌と共生していることが明らかになった. なお, ウメガサソウの菌根および菌根菌については今回の報告が初めてのものである. 今回, 同所的に生育する2種の植物間に共生する菌根菌に違いが見られ, 特異的選択性の存在が示唆された.
  • 吉村 侑子, 岩瀬 剛二
    セッションID: A32
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
    会議録・要旨集 フリー
     マメ科ニセアカシア(Robinia pseudo-acacia)は、街路樹や庭木に植えられる北米原産の落葉高木で、肥料木や砂防等の用途に用いられている。またこの植物は、外生菌根とアーバスキュラー菌根を同時に形成することでも知られる。そこで今回は、ニセアカシアの菌根共生の実態を明らかにすることを目的として、鳥取市湖山町の鳥取大学農学部湖山の森敷地内でニセアカシアの菌根形態を調査するとともに、両タイプの菌根菌を室内で接種して形成される菌根を調べ、さらにDNAによる菌根菌の種同定を試みた。
     野外調査地からのサンプリングは、湖山の森敷地内からランダムにニセアカシアの根を採集することで行った。サンプルは実験室に持ち帰り、丁寧に土壌を取り除いた後定法に従って菌根の形態観察及び菌根からのDNA抽出を行い、分子生物学的手法を用いて同定を行った。また、室内実験では感染源である外生菌根菌及びアーバスキュラー菌根菌としてScleroderma sp. とGlomus intraradicesを用いた。実験パターンは、外生のみ接種、アーバスキュラーのみ接種、両方接種、そして何も接種させないものの4パターンに分けた。さらにこれらのうち半数には約1か月に1度の間隔で施肥した。
     結果、野外調査では外生菌根菌及びアーバスキュラー菌根菌を検出できたが、主に観察されたのはアーバスキュラー菌根であった。また、室内実験により植物が生育する際の栄養条件によって、菌根形成も影響を受けることが明らかとなった。
  • 牛島 秀爾, 須原 弘登, 前川 二太郎
    セッションID: B1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
    会議録・要旨集 フリー
    Oudemansiella属は担子菌門,ハラタケ目に所属する木材腐朽菌であり,広葉樹の倒木や枯枝上に子実体を形成する.本属は日本では4種(O. brunneomarginataO. canariiO. mucida,O. venosolamellata)が報告されている.これらは主に肉眼的および顕微鏡的形質,生態的性質により種の分類が行われてきたが,交配試験等の遺伝学的性質および分子系統学的解析を行って検討した報告は少ない.したがって,日本産Oudemansiella属菌の種多様性を明らかにすることを目的として,肉眼および顕微鏡的形質に基づいた分類手法に加えて交配試験および分子系統学的解析を行っている.
    ネッタイヌメリタケOudemansiella canarii (Jungh.) Höhn.は,亜熱帯から熱帯地域に分布し,各種広葉樹腐朽材上に発生する白色腐朽菌である.子実体はモリノカレバタケ型.傘表面は淡黄白色から淡灰褐色あるいは白色を呈し,強い粘性および明瞭な皮膜の破片を付着し,ひだは白色で幅広く,柄につばを欠くことなどの特徴を有している.本邦では,小笠原諸島,南西諸島などから報告されている.しかしながら,日本産Oudemansiella属の分子系統学的な検討により,日本産ネッタイヌメリタケは外国産のそれとは遺伝的に近縁ではあるが,異なる枝に配置されるとともに,本邦産の菌株はニュージーランドで報告されたOudemansiella australis G. Stev. & G.M. Taylorときわめて近縁な関係にあることが示唆された.O. australisは、ネッタイヌメリタケと比較して、傘表面の皮膜の破片を欠く.しかし、つばは無く,担子胞子の形態や大きさなどは類似する.本邦亜熱帯域には,新たにO. australisの分布が推測された.また,両者が採集にあたって混同されている可能性も否定できない.今後は本邦においてネッタイヌメリタケと同定されている標本について,顕微鏡的形質を検討し,分離菌株を用いた交配試験および分子系統学的解析を試みることによって,両種の本邦における地理的分布と類縁関係を明らかにしたい.
  • 下野 義人, 広井 勝, 上田 俊穂, 後藤 康彦, 高松 進
    セッションID: B2
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
    会議録・要旨集 フリー
           ニセクロハツには5型がある
    *下野義人1)・広井勝2) ・上田俊穂3) ・後藤康彦4) ・高松進5)1)大阪府
    立香里丘高;2)郡山女子大;3)長岡京市;4)我孫子市;5)三重大生資)
           Russula subnigricans consists of the five genetic species, by *Y.Shimono1),
    M.Hiroi2), T.Ueda3), Y.Goto4), S.Takamatsu5)(1)Kourigaoka H. S.; 2) Koriyama
    Women’s col.; 3) Nagaokakyou City; 4) Abiko City; 5) Mie Univ.)
     ニセクロハツは子実体に触れたり,傷つけたり,あるいは子実体を切断すると,その部分が赤変したままで,クロハツやクロハツモドキのように赤変後,黒変しないきのこである.リボソームDNAの28SおよびITS領域に基づいたクロハツ節の解析結果から,クロハツは3型に,クロハツモドキは9型に,ニセクロハツは5型にそれぞれ分かれた.ここではニセクロハツの分子系統解析の結果,子実体の巨視的な形態的特徴・顕微鏡的な特徴に関して,報告する.
     28Sを用いた分子系統解析ではニセクロハツは大きなグループを作り,遺伝的に異なった5群(型)に分かれた.しかし,ITS領域の解析ではニセクロハツの3型(B-2,B-3,B-4)は同一群に属したが,それ以外の2型(B-1,B-5)は3型と同じ群に属さなかった.タイプ標本を含むB-1はクロハツと同じ群を形成した.
     子実体の巨視的な形態観察ではヒダが細かくて柄が長いB-2,ヒダの赤変性が強いB-3など,型間に違いが見られた.顕微鏡的な特徴では胞子の表面構造やカサの表皮の状態が,タイプ標本を含むB-1とB-3との間で明らかに異なった.
     以上のことから,分子系統解析で得られた5型間に子実体の巨視的な,あるいは顕微鏡的な特徴の違いが見られたので,B-2やB-3はニセクロハツの別種か,あるいは変種と考えることができる.
  • 吹春 俊光, 清水 公徳, 田中 千尋
    セッションID: B3
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
    会議録・要旨集 フリー
    演者らは各地でアンモニア菌相を調査しているが,2006年~2007年にニュージーランド,2008年鹿児島県奄美大島でアンモニア菌の調査をおこない,これまで日本きのこ学会の2007年と2008年の大会等でその結果を報告してきた.今回は採集された菌の中でナヨタケ科Coprinopsis 属の未知2種を中心にご紹介する.●方法:調査地1;ニュージーランド南島 Westport近郊地で,ラジアータマツの植栽林,マヌカ林,ナンキョクブナ属の林内にプロットを設け,2007年1月にフクロギツネ死体を林内土壌表面に放置し(1plot/1個体),死体腐敗跡に発生した菌を2007年5月9日に観察した.調査地2;鹿児島県大島郡龍郷町にある,奄美自然観察の森において,調査区をスダジイ林内に設け,2007年6月6日に尿素肥料を散布し,その後に発生する菌を継続観察した.子実体の形態観察は培養子実体に基づいておこなった.系統樹を作製するために,培養子実体から抽出したDNAを鋳型とし,PCR法によりrDNA-ITS領域を増幅し,その塩基配列を解析した.GenBANK登録データ検索し,得られた塩基配列を用いてアライメントを行い近隣結合法による系統樹を作製した.●結果:調査地1から,既知アンモニア菌ザラミノヒトヨタケCoprinopsis phlyctidospora(担子胞子粗面)及びC. aff.phlyctidospora phylogenetic group B(Suzuki et al. 2002,未記載,担子胞子粗面)の近縁未知種 C. aff.phlyctidospora 1(担子胞子表面は平滑)が分離された.また調査地2からも未知種 C. aff.phlyctidospora 2(担子胞子表面は粗面刺状)が分離された.今回の大会では今回分離された未知2種についてより詳しい検討結果を報告する.
  • Jay Kant Raut, Akira Suzuki, Megumi Yoshihara, Shogo Takeshige, Chihir ...
    セッションID: B4
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
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    The effects of pH, ammonium-nitrogen concentration and temperature on the basidiospore germination in Coprinopsis spp. having warty spores collected from urea-treated forest floor in different biogeographical regions were investigated. The isolates were identified based on ITS rDNA sequences and their morphological features. The tested isolates were Coprinopsis phlyctidospora from Japan and Canada, Coprinopsis sp. from New Zealand (Suzuki et al., 2002) and Coprinopsis echinospora from Canada. The effective range of ammonium-nitrogen concentration for the germination was from 0.0001 M to 1 M with the optimum at 0.1 M for C. phlyctidospora from Japan and Canada and 0.01 M for Coprinopsis sp. from New Zealand. The pH range for the germination was from 6.0 to 9.5 with pH optimum for C. phlyctidospora from Japan and Canada was 8.0, whereas for Coprinopsis sp. from .New Zealand and C. echinospora from Canada was 8.5. Furthermore, the basidiospores of the C. phlyctidospora from Japan and Coprinopsis sp. from New Zealand germinated at the temperature range from 5 C to 40 C with optimum temperature at 30 C whereas, C. phlyctidospora and C. echinospora from Canada germinated from 5 C to 30 C with optimum temperature at 15 C.These suggest that the Coprinopsis spp. have similar physiological characteristics of the spore germination for responses to pH and ammonium-nitrogen concentration, irrespective of their different inhabiting regions. It is also suggested that the Coprinopsis spp. were well adapted to the temperature of each inhabiting area.
  • 広井 勝
    セッションID: B5
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
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    (目的)近年きのこの分類は形態的なものからDNA分析にもとづく分類体系に変化してきている。演者は既にアンズタケ類似きのこの脂肪酸組成の分析を行い、アンズタケ目きのこには共通してデヒドロクレペニン酸(以下DCAと略す)が高い組成比で検出されることを認めてきた。そこでこれらを再確認するとともに、形態的にアンズタケ目きのこと類似しているいくつかの科、属のきのこについてDCAの分布と分類群との関連を検討した。 (方法)アンズタケ目のきのことしてはアンズタケ属、クロラッパタケ属、カレエダタケ属、カノシタ属、ヒメハリタケモドキ属(Sistotrema)のきのこを対象に分析を行った。脂肪酸組成の分析は、子実体よりクロロホルム:メタノール(2:1)混液で脂質を抽出後、塩酸メタノールでメチル化しガスクロマトグラフィーで行った。DCAの同定はガスクロマトグラムの保持時間やGC-MSにより行った。 (結果)アンズタケ属、クロラッパタケ属などアンズタケ科のきのこにはいずれもDCAの存在が確認された。カレエダタケ属のきのこにも高い組成比でDCAが存在していた。カノシタ科のきのこではカノシタ、シロカノシタのDCAの組成比は高いが、ヒメハリタケではその割合が低かった。ヒメハリタケは小型のシロカノシタと混同されがちであるが、子実体に褐色のしみを作りやすい特徴がある。ヒメハリタケモドキSistotrema confluensはヒメハリタケに似るがさらに小型種で、このきのこにも高い組成比でDCAが認められた。アンズタケ目に形態の類似しているきのこであるラッパタケ科、ホウキタケ科、シロソウメンタケ科などのきのこにはDCAは見られなかった。
  • 折原 貴道, 池田 枝穂, 大和 政秀, 保坂 健太郎, 前川 二太郎, 岩瀬 剛二
    セッションID: B6
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
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    きのこを形成する菌類の中でも, 被実性の子実体を形成し, 胞子の射出機構を欠失している点が特徴であるシクエストレート菌 (sequestrate fungi) の分類学的および系統学的研究は日本国内において特に遅れており, 今後の研究により多くの新分類群や未知の系統が明らかになることが期待される. 国内のシイ・カシ類樹下に発生するシクエストレート担子菌コイシタケはHydnangium carneum の学名が与えられているが, オーストラリアに分布しユーカリと特異的に菌根を形成するH. carneum とは, 形態的・生態的特徴のいずれも大きく異なる. 演者らは, コイシタケおよびブナ・ミズナラ樹下に発生し, 形態的に本種と酷似する未報告種(仮称:ミヤマコイシタケ)の形態学的評価および核リボソームDNAのITS領域を用いた系統解析を行った. 分子系統解析の結果, コイシタケはH. carneum とは遠縁である, ベニタケ属の系統内で分化したシクエストレート菌であることが示され, 形態的にも子実層部のシスチジアなど, ベニタケ属菌に特徴的な構造が確認された. ベニタケ属の系統内では複数のシクエストレート菌の系統が分化していることが知られているが, コイシタケおよびミヤマコイシタケはそれらの既知系統のいずれにも属さなかった. また, コイシタケはミヤマコイシタケと種レベルで異なることが分子系統解析結果からも支持された. 両種は肉眼的には酷似しているが, 担子胞子や担子器の形態など複数の顕微鏡的特徴に差異があることも明らかになった. ミヤマコイシタケの担子胞子はベニタケ属菌に特徴的なアミロイド反応を呈する一方, コイシタケの担子胞子は非アミロイドであることから, 両種を含む系統ではシクエストレート菌への系統進化が起こった後に担子胞子のアミロイド反応が消失したと考えられる. また, 両種の分布状況に基づく生物地理学的考察も行う.
  • 伊藤 大志, 須原 弘登, 前川 二太郎
    セッションID: B7
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
    会議録・要旨集 フリー
    Phanerochaete属は, 担子菌門サルノコシカケ目に属する木材腐朽菌で, 日本からは20種が報告されている. 近年の分子系統学的研究で, Phanerochaete属は単系統のグループとしての支持は難しく, 形態学的に似た異種をグループ化した属であることが示唆されている. 本研究では, 日本産Phanerochaete属およびその類縁属の標本と分離菌株を用いて形態学的及び分子系統学的解析を行い, Phanerochaete属の分類群の再検討を行うことを目的とした.
    ITS領域を用いた系統解析の結果, Phanerochaete属およびその類縁属は、タイプ種であるPhanerochaete velutinaを含み主にPhanerochaete属種からなるクレードA, タイプ種であるPhlebia radiataを含むPhlebia属のみで構成されるクレードB, これ以外のPhanerochaete属種と多くの近縁属を含む多系統なクレードCから構成されることが示唆された. このうちクレードAには, 狭義Phanerochaete属と, それに近縁なRhizochaete属クレード, Hjorstamia属クレードが含まれており、このクレードがPhanerochaeteコアクレードであることが示唆された. 以上のことから, Phanerochaete属はこれまでの研究と同様に, 狭義Phanerochaete属とそれ以外の多系統な種の集合であることが示された. また, 今回初めてPhanerochaeteコアクレードのサブクレードとしてHjorstamia属クレードが示され, このHjorstamia属クレード内に, 日本新産種のHjorstamia amethystea (Hjortstam & Ryvarden) Boidin & Gillesを見出した.
  • 彌永 このみ, 須原 弘登, 霜村 典宏, 前川 二太郎
    セッションID: B8
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
    会議録・要旨集 フリー
    担子菌門,アンズタケ目に所属するSistotrema 属は, 多くの種において,倒木や枯枝上あるいはコケ類に背着性の子実体を形成し, 6-8本の小柄を持つつぼ型の担子器を形成することによって特徴付けられる.Nilssonら(2006)は分子系統解析に基づき,本属は少なくとも4つのクレードに分かれ,有柄のHydnum 属を含むクレードでは菌根を形成する種の存在を明らかにした.本研究では,本属菌とその類縁属菌であるBotryobasidium 属などの日本産標本および分離菌株を用いて, rDNAに基づく系統解析に加え, 担子菌門の高次分類群における系統的類縁関係を推察する上で重要な形質である菌糸隔壁孔部の超微細構造を比較検討することにより,これらの分類群の系統的類縁関係を推察した. rDNA塩基配列を用いた系統解析の結果, S. brinkmannii は複数の系統に分かれた.また, S. musicola は, Nilssonら(2006)の結果と同様にHydnum 属と類縁関係にあった.さらに,供試菌について透過型電子顕微鏡により隔壁構造を観察した結果,いずれの分類群もdolipore-parenthesome型の隔壁構造を有したが, parenthesome(以下PSとする)の構造が異なっていた.すなわち, S. brinkmannii のPSは大型の孔(直径150-300 nm)を少数持ち, S. musicola はPS に小型の孔(直径60-120 nm)を多数有していた.これらの結果から, Sistotrema 属は生態的な差異のみでなく, PSの構造的差異からも2つの系統に分けるのが妥当であると考えられた.また, Botryobasidium 属およびSistotremastrum 属のPSがSistotrema 属とは異なり,無孔のPSであったことから,アンズタケ目には異なる3つの隔壁構造が存在することが明らかとなり,本目の再分類の必要性が示唆された.
  • 白水 貴, 廣瀬 大, 徳増 征二
    セッションID: B9
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
    会議録・要旨集 フリー
     アカキクラゲ綱は二又分岐する担子器に特徴づけられる、担子菌門ハラタケ亜門に属する“異担子菌類”の一群である。本綱はDacrymycetaceae科とCerinomycetaceae科の2科から構成されるDacrymycetales目1目のみからなり、現時点で9属109種を有する比較的小規模なグループである。本綱菌はすべて針・広葉樹材を分解する褐色腐朽菌で、木材腐朽菌類の進化を考える上で重要な系統群であると考えられる。演者らは木材腐朽菌類の進化過程を解明することを目的とし、本綱の分類・生態・進化学的研究を進めている。ここでは、その一環として取り組んできた分子系統解析により本綱の高次分類に見直しを迫る結果が得られたので報告する。
     本邦産アカキクラゲ類6属28種と外国産株から得た18S rDNAおよび28S rDNA D1/D2領域の塩基配列を用いて分子系統樹を構築した。結果、アカキクラゲ類としては例外的な分岐しない担子器を持つDacrymyces unisporusがアカキクラゲ綱クレードの最も外側に配置された。このD. unisporusと他のアカキクラゲ類の間には、担子菌類の高次分類で重視される“担子器の形態”に著しい差があることが認められた。これらに基づき、演者らは、新目“Unilacrymales”とこれに属する新科・新属を設立し、ここに本種を転属することを提案する。またこの系統樹では、クッション状子実体を有し、Dacrymycetaceae科の1種として認識されてきたDacrymyces punctiformisがCerinomycetaceaeクレードに含まれた。この解析結果は、“背着性の子実体を有する”ことで特徴づけられてきたCerinomycetaceae科の定義が不十分であることを示唆している。この問題を解決する上で、演者らは、従来重視されてきた“子実体の外部形態”に加え、さらに複数の形態形質、すなわち“クランプコネクションの有無”、“担子胞子の隔壁数”および“発芽様式”を有用な分類形質として採用し、これらの組み合わせによりCerinomycetaceae科を再定義することを提案する。     *本研究の一部は財団法人発酵研究所の助成を受けて行った。
  • 安藤 洋子, 岩瀬 剛二, 児玉 基一郎, 前川 二太郎
    セッションID: B10
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
    会議録・要旨集 フリー
    ホウキタケ属(Ramaria)は珊瑚状~箒(ほうき)状の子実体を形成する担子菌門(Basidiomycota),ラッパタケ目(Gomphales)に所属し,世界で500種以上,日本では20種余りが報告されている.近年,分子系統学的手法を用いた分類学的研究が行われるようになり、ホウキタケ属が側系統の分類群であることが明らかとなった.しかし,系統的類縁関係に基づく再分類は未だなされていない.また,これまで日本産ホウキタケ属の中には疑問種も含まれており,さらに,報告されていない多くの未同定種の存在も知られている.本研究では,日本産のホウキタケ属について,その実態を明らかにするため,全国各地より採取した本属子実体標本について,各標本の肉眼的,顕微鏡的特徴を詳細に記載するとともに,生態学的特性(菌根形成の有無,菌根形態,基質,発生時期など)を調査した.さらに,分子系統分類学的解析のため,核の大サブユニット25S rDNA,ミトコンドリアのatp6遺伝子領域の塩基配列に基づく系統解析を試みた.その結果,Ramaria botrytis comp. 1,Ramaria botrytis comp. 2,Ramaria cyanocephala comp. 1,Ramaria cyanocephala comp. 2,Ramaria cf. botrytoidesRamaria cf. conjunctipesRamaria cf. subdecurrensRamaria cf. myceliosaRamaria cf. longicaulisなど,既知の分類群に類似する種,およびRamaria sp. 1(地方名:シロネッコモダシ),Ramaria sp. 2(地方名:コノミタケ)など,新種の可能性がある分類群を見出した.また,今回用いた遺伝子領域の解析の結果,従来のホウキタケ属は,ガウチエリア属(Gautieria;地下生菌),ラッパタケ属(Gomphus;アンズタケ型菌類),スリコギタケ属(Clavariadelphus;棍棒型菌類)およびレンタリア属(Lentaria;ホウキタケ型菌類)をその内部に含むこと,また,ホウキタケ属を,ラマリア亜属(subg. Ramaria),ラエティコロラ亜属(subg. Laeticolora),レントラマリア亜属(subg. Lentoramaria)およびエキノラマリア亜属(subg. Echinoramaria)の4つの亜属に分ける分類は支持されないこと,さらに、従来のラッパタケ属は少なくとも2つ以上の属に分割する必要があることが明らかとなった.
  • 早乙女 梢, 服部 力, 太田 祐子, 柿嶌 眞
    セッションID: B11
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
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    Polyporus pseudobetulinusは, 北アメリカ大陸やユーラシア大陸の亜寒帯域に分布し, 一般的にポプラ属種(Popurus spp.)の枯死木又は生木上に発生する白色腐朽菌である. 本種の特徴は, 子実体は有柄, 菌糸組成は生殖菌糸と骨格結合菌糸からなる2菌糸型で, クランプ結合を欠く生殖菌糸を有することである. 日本では同じく亜寒帯域の北海道に分布するものの, ポプラ属種上ではなく, ヤナギ属種(Salix spp.)から本種が報告されている. さらに北海道からはヤナギ属上に発生する本種に類似した菌が採集されているが, 後者は, 生殖菌糸にクランプ結合を有する点が前者と異なる.
    今回演者らは, 日本産P. pseudobetulinus複合種について, 形態的特徴及び核DNAITS及びLSU領域に基づく分子系統解析による分類学的研究を行った. 本研究では, 北海道の各地より採集されたP. pseudobetulinus複合種6標本, カナダ産P. pseudobetulinus標本及び類似種P. subvariusの基準標本を用いた.
    分子系統解析の結果, 国内産P. pseudobetulinus複合種には2つのグループが存在することが明らかになった. そのうちの1グループは, カナダ産P. pseudobetulinusと同一クレードを形成し, これらは傘表面が黄白色で時に皺を有し, 肉質はもろく, 生殖菌糸はクランプ結合を欠くなど, 形態的特徴が一致していた. もう一方のグループは, P. subvariusの基準標本と同一クレードを形成し, 傘表面は灰色で, 強靭な肉質を有し, クランプ結合を有する生殖菌糸を持つなど形態的特徴が一致していた. 本研究の結果, 両者は系統的・形態的に別種であり, また, 日本には両種が分布していることが明らかになった.
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