アンサンブル
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15 巻, 3 号
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特集「氷の分子シミュレーション」
最近の研究から
  • 礒部 雅晴
    2013 年 15 巻 3 号 p. 186-196
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2014/08/26
    ジャーナル フリー
    高密剛体球系の融点近傍で生じる「トランジェントな結晶」を定量化するため,広範な応用が可能な2つの新しい方法論を開発した.まず,(i)配向秩序を定量化する最近接結合秩序パラメーターを高次近接シェル(第2近接以上)へと拡張した.また,(ii)シアストレスのポテンシャルパートと関係のある配向因子の相関関数を高次近接シェル内の粒子を衝突候補とみなし時間で粗視化することにより,従来の粒子衝突ベースの計算に比べ,約2桁高速な計算を実現した.これらのブレークスルーにより,粘性係数と直接関係するシアストレス自己相関関数の遅い緩和,すなわち(30年来の難問である)いわゆる「モラセステール問題」の系統的な研究が可能となった.特に(ii)の方法では,従来は膨大な計算量により不可能とされた4体2時間配向因子自己相関関数(すなわち,8点相関)の計算も可能となり,その距離依存性の関数系を統計精度よく求めることに成功した.本研究は,高密液体で生成する「トランジェントな結晶」の時空構造解析のみならず,一般の液体-ガラス系やジャミング転移を定量づける有益な解析ツール(方法論)の一つとしての今後の応用や発展が期待される.
  • 竹村 和浩
    2013 年 15 巻 3 号 p. 197-201
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2014/08/26
    ジャーナル フリー
    蛋白質の回転拡散およびNMRスペクトル密度の再現を目的として水モデルの最適化を行った.水モデルは既存のSPC/E モデルを基に,結合長を1%長くすることにより,他の熱力学物性を大きく変更することなく並進拡散係数を再現した.最適化した水モデル(SPC/Eb)を用いることにより,蛋白質の回転緩和時間の再現およびNMR緩和より得られるスペクトル密度再現に成功した.
博士論文紹介
  • 高橋 和義
    2013 年 15 巻 3 号 p. 202-206
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2014/08/26
    ジャーナル フリー
    Isotropic Periodic Sum (IPS)法は,Ewald法に代わる周期境界条件下の相互作用計算手法として開発された.その基本概念は,周期的な反応場の決定である.本研究では,いくつかの系におけるIPS法の精度を評価し,その応用の可能性を示した.また,IPS法が抱える計算速度上の問題点を解決するために,IPS法と多重極展開法とを組み合わせたIPS/Tree法を開発した.さらに,計算精度上の問題点を解決するために,IPS法の基本概念の拡張を行い,Linear-combination-based IPS (LIPS)法を開発した.
連載
  • 志賀 基之
    2013 年 15 巻 3 号 p. 207-212
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2014/08/26
    ジャーナル フリー
    近年の大型並列計算機の発展とともに分子シミュレーションと電子状態計算を統合した第一原理シミュレーションが普及し,国際標準になりつつある.これを用いて,従来では扱えなかった複雑な化学反応動力学や,光吸収や電磁場応答のような電子状態由来の物性などを対象に,さまざまな応用研究が広まっている.本稿では,電子状態理論の基礎をなすHartree-Fock 法について,分子シミュレーションとの接点を少し意識しながら再考したい.
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