21 世紀に開発されたアト秒(10−18 秒, as)レーザーパルスは, 化学反応の駆動力となる分子内電子移動を観測する手段であると同時に, それを誘起する強力な道具でもある. 本稿では, 分子内電子移動のモデルケースとして, 芳香族分子の環電流を取り上げる. 偏光を適切に調整した超短レーザーパルスを芳香族分子に照射することで, 静磁場の印加より短時間で強い環電流を発生させ, その方向も制御することができる. 骨格振動との非断熱結合を通して, アト秒スケールの光誘起環電流を振動分光で観測する可能性も提案する.
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