Journal of the Society of Inorganic Materials, Japan
Online ISSN : 2185-4378
ISSN-L : 1345-3769
32 巻, Supplement 号
選択された号の論文の24件中1~24を表示しています
論説
論文
  • 川島 さゆり, 向後 光亨, 梅垣 哲士, 小嶋 芳行
    原稿種別: 論文
    2025 年32 巻Supplement 号 p. S4-S9
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/08/05
    ジャーナル フリー

     バテライトは CaCl2–モノエタノールアミン(MEA)CO2–H2O系反応で合成し,0.6~1 μmの粒子を得た.様々な圧縮条件下でバテライトペレットを調製した.ペレットに白色LEDを照射すると,透過光は黄色から赤色になった.透過光は,粒子径0.6 μmで橙色,0.8~1.0 μmで赤色,2 μmで白色であった(CaCl2–Na2CO3–H2O系反応で調製).平均粒径0.6 μmのバテライトを用いてペレットの充填率を変化させた結果,充填率が高くなるになるに伴い白色LEDの透過光が赤色から黄色に変化した.バテライトペレットに青色LEDを照射すると,透過光の色は充填率の増加とともに橙色から黄色に変化した.バテライトペレットは550 nm以下の光を透過しないことが確認された.このように,透過光の色は,バテライトの粒子径とペレットの充填率によって制御することができた.

  • 大石 克嘉, 古藤 大輝, 渡邉 晃平, 小林 亮太
    原稿種別: 論文
    2025 年32 巻Supplement 号 p. S10-S15
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/08/05
    ジャーナル フリー

     新規CO2吸収コンポジットの構造をデザインした.このコンポジット内には,固体型CO2吸収材の一つとしてよく知られているLi2CuO2酸化物が使用されている.このCO2吸収コンポジットは,多層構造を持っており,その層状構造は純銅線上の酸化銅層,その酸化銅層上のLi2CuO2層から成っている.純銅線はこのコンポジットの基板材料であると同時に,その純銅線の温度は外部電源装置から電流を流す事により容易に上昇させる事が可能であった.幸運にも,純銅上の酸化銅層も大気中での加熱により容易に形成させる事が出来た.さらには,Li2CuO2層は容易にかつ均一に形成させる事が出来た.Li2CuO2層の生成は,約21%の酸素を含む大気における液体状のLi2CO3と固相の酸化銅間の液–固反応によるものである.大気中においてこのコンポジット内の純銅線に電流を流す事により,コンポジットの表面温度は容易に900℃まで上昇する事がわかった.この温度は,Li2CuO2がCO2を高速度で吸収および放出する温度よりも十分に高い温度である.このため,このコンポジットを使用すれば電流値を変化させる事でCO2の吸収・放出を制御できると予想される.

  • 小玉 翔平, 斎藤 智基, 柳瀬 郁夫, 武田 博明
    原稿種別: 論文
    2025 年32 巻Supplement 号 p. S16-S20
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/08/05
    ジャーナル フリー

     本研究では新規赤–近赤外発光蛍光体として,Eu2+を賦活したCaSc2O4(Eu:CaSc2O4)を合成し,その発光特性を調査した.Eu:CaSc2O4はEuを1%ドープした際に最も光量が高くなり,300 Kにおける発光波長は750 nmだった.10 K, 100 K, 200 K, 300 Kと温度を変えてフォトルミネッセンス励起–発光スペクトルを調査したところ,発光強度は10 Kで最も高く,300 Kになると10 Kの時に比べ約95%も強度が低下している,すなわち極めて強い温度消光を起こしていることが分かった.フォトルミネッセンス蛍光寿命は2成分であり,それぞれ3.10 nsと16.3 nsであることがわかった.Eu:CaSc2O4は赤–近赤外領域で10 nsオーダーの高速発光を示す蛍光体であることを明らかにした.

  • 武田 博明, 梅澤 楽音, 上原 拓海, 小玉 翔平, 柳瀬 郁夫, 杉山 和正
    原稿種別: 論文
    2025 年32 巻Supplement 号 p. S21-S26
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/08/05
    ジャーナル フリー

     近年,高温圧電センサ用候補材料としてメリライト型結晶が注目されている.本研究では,このメリライト型結晶の中でCaを主成分とするCa2MgSi2O7(CMS)およびCa2ZnSi2O7(CZS)に注目し,それらのバルク単結晶をチョクラルスキー法により育成した.CMSについてはとくにSr置換した組成であるCa1.7Sr0.3MgSi2O7(CSMS30)について調査し,その電気的特性は水晶と同様の圧電特性を示し,高温でも高い抵抗率を示すことがわかった.また,CZS結晶はメリライト型結晶の中で最も高い圧電d36定数を示すことが明らかとなった.CZS結晶は130℃で相転移を生じるものの,CSMS30と同様にSr置換により有望な高温圧電センサ用候補材料になりえる.

  • 石垣 隆正, 石井 沙耶花, 打越 哲郎
    原稿種別: 論文
    2025 年32 巻Supplement 号 p. S27-S37
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/08/05
    ジャーナル フリー

     酸化亜鉛ナノサイズロッドを水熱法により合成し,そのサイズと形態を制御した.ポリエチレングリコール(PEG)を添加剤として用い,表面吸着により粒子成長を制御した.PEGの添加によってロッド状のZnO粒子が合成され,その形態は反応溶液のpHによって変化した.pH=10.3–5では,PEGを添加して合成したロッド状ZnO粒子はPEGが粒子全体に吸着してサイズが小さくなった.pH>11では,(0001)面の表面Zn–Oの露出濃度が高いため,ZnO六角柱の側面にPEGが優先的に吸着し,c軸方向の成長が促進されて,ZnOロッド状粒子の長さが大きくなった.PEGの添加は,基板上に析出したZnOロッドに対しても同様の効果を示した.12 Tの強磁場下では,反応溶液の対流が抑制され,ZnOロッドのサイズが小さくなり,配向性が低下した.PEGを添加しても,強磁場下で対流が抑制された結果,ZnOロッドのサイズが小さくなり配向性が低下がした.

  • 平山 愉子, 及川 睦貴, 横山 歩, 池上 潤, 石田 弘徳, 大神 剛章
    原稿種別: 論文
    2025 年32 巻Supplement 号 p. S38-S46
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/08/05
    ジャーナル フリー

     水熱合成法と噴霧乾燥法により作製されたLiMn1-xFexPO4造粒体の電気化学的特性を明らかにするため,球状LiMn0.7Fe0.3PO4を作製し,電池評価を行った.球状LiMn0.7Fe0.3PO4は,水熱合成によりLiMn0.7Fe0.3PO4ナノ粒子を作製したのち,カーボンコート,造粒,焼成により作製した.作製した球状LiMn0.7Fe0.3PO4は,斜方晶系の空間群Pnmaに帰属され,100 nmほどのナノ粒子から成る12 μmほどの二次粒子だった.電池評価は電圧範囲2.5–4.2 Vで行った.まず,球状LiMn0.7Fe0.3PO4の基礎的な電気化学的特性を確かめるために,コインセルで評価を行った.球状LiMn0.7Fe0.3PO4/Liは,初回放電容量138.2 mA・h・g-1 (電流密度0.2 C)を示し,電流密度0.2 Cに対する3 Cにおける容量維持率は86.2%で,市販のLiFePO4と比較して優れたレート特性を示した.つぎに,球状LiMn0.7Fe0.3PO4の長期的な電気化学的特性を確かめるために,電極密度2.3 g・cm-3 (目付量20 mg・cm-2)の正極を作製し,パウチセルで評価を行った.球状LiMn0.7Fe0.3PO4/Graphiteは,市販のLiFePO4と比較して優れたレート特性およびサイクル特性を示した.

  • 鳥海 真司, 小島 隆, 上川 直文
    原稿種別: 論文
    2025 年32 巻Supplement 号 p. S47-S53
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/08/05
    ジャーナル フリー

     ヒドロキシアパタイト(HAp)ナノ粒子がH2O溶媒中に安定に分散したゾルを水酸化カルシウム(Ca(OH)2),リン酸(H3PO4),ソルビトールが溶解した水溶液を348 K,24 h加熱することで得た.この加熱処理後の溶液を脱イオン水中でセルロースチューブにて透析することで未反応の化学種を除去しHApナノ粒子の安定な分散ゾルを得た.ソルビトールは,分子中の各炭素原子に水酸基を有しCa2+イオンに配位することができる.さらに,溶媒の水分子とも水素結合を形成することで分散の安定化が期待できる.合成時のソルビトール濃度が0 mol・L-1の時は,得られた粒子の形態は一般的なロッド状であった.他方,ソルビトール濃度が1 mol・L-1の場合,粒子形状は平板状となり粒径が10 nmのHApナノ粒子の凝集した構造が確認された.すなわち,合成時に溶液に加えられたソルビトールは効果的にHAp粒子の粒径や形態に影響を与えた.得られた粒子のTG–DTA曲線およびFT–IRスペクトルはソルビトールのHAp粒子への吸着と配位を示しており,これが粒径や粒子形態そして分散状態に重要な影響を及ぼしたことがわかった.

  • 大倉 利典, 橋本 あや子, 橋本 英樹
    原稿種別: 論文
    2025 年32 巻Supplement 号 p. S54-S61
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/08/05
    ジャーナル フリー

     本研究では,リン酸マグネシウムガラスをベースガラスとして,Cs吸着粘土鉱物のガラス固化について検討した.その結果,リン酸異常現象がガラス化挙動と固化ガラスの構造特性に大きく影響することが確認された.MgO含有量が低い組成では透明なガラス固化体が得られたが,MgO含有量が高い組成では失透と融液粘度の上昇が観察された.XRD分析では,ほとんどの固化体試料に鋭い回折ピークがないことが確認され,大部分が均質なアモルファス構造を形成していることが示唆された.Csの揮発挙動は,Cs吸着粘土鉱物の予備焼成によって効果的に制御された.焼成中のポルサイトの形成がCsの固定化に重要な役割を果たしていることは,焼成前の試料ではCsの揮発率が低いことからも明らかである.水に対する浸出試験により,粘土鉱物の導入がガラス固化体の化学的耐久性を向上させることが明らかになった.固化ガラス構造へのSiとAlの導入は,水和反応の影響を低減することで耐水性の向上に寄与した.

  • 板谷 清司, 梅田 智広, Ian J. DAVIES, 大柿 真毅, 梶原 奨平, 黒江 晴彦, 武者 芳朗, 佐々木 哲朗
    原稿種別: 論文
    2025 年32 巻Supplement 号 p. S62-S71
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/08/05
    ジャーナル フリー

     多孔質骨止血材をアルギン酸塩(AG),アガロース(AGAR),リン酸化オリゴ糖カルシウム(POs–Ca)を用いて作製した.すなわち,(i) 止血を目的としてCa2+との静電的結合と水素結合によるAGおよびAGARの複合化を行い,(ii) AGとの架橋を目的としてPOs–Caを加え,さらに(iii) 骨治癒と再生を目的としてPOs–Caの加水分解生成物であるオリゴ糖含有水酸アパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2; HAp)を添加した.その結果,オリゴ糖含有HApを添加して作製した気孔率78.0%を有する60 mass%AG–40 mass%AGAR止血材は,疑似体液の取込み量(884%),酢酸緩衝液中を用いた酸溶解性,止血時間(ヒト血液で35分間以上),さらに骨治癒・再生に関して止血のための最適な特性を有していた.

  • 佐々木 達弥, 鈴木 綾華, 遠山 岳史
    原稿種別: 論文
    2025 年32 巻Supplement 号 p. S72-S78
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/08/05
    ジャーナル フリー

     アルカリ土類金属イオンは,炭酸イオン(CO3 2-)と反応して安定な炭酸塩を形成する.これらのイオンを利用した炭酸塩の無機化は,CO2固定化技術として注目されている.本研究では,製鋼スラグなどの産業副産物と排ガス中のCO2 からCa(OH)2を利用してCaCO3を合成することを目的とした,グリセリン水溶液中でのCa(OH)2 の抽出挙動とCO2吹き込みによるCaCO3の析出条件を検討した.Ca(OH)2 懸濁濃度5 mass%の溶液中のカルシウムイオン濃度は約16.7 g・dm-3で飽和し,溶解度の上限に達した.また,Ca(OH)2 の溶解度はグリセロール濃度の増加とともに増加した.カルシウムイオン溶液にCO2ガスを吹き込むと,グリセロール濃度と反応時間によって,バテライトとカルサイトの結晶形の異なるCaCO3粒子が生成した.溶液温度の上昇に伴い粒子径は減少したが,アラゴナイトを形成することなく単相のカルサイトのみが形成され,これまでの報告とは大きく異なることがわかった.これらのことから,グリセリン濃度,CO2吹き込み時間,溶液温度を変化させることにより,製鋼スラグからのCaCO3合成の要因が明らかとなった.

  • 外山 直樹, 水村 光希, 林 亜咲, 古川 茂樹
    原稿種別: 論文
    2025 年32 巻Supplement 号 p. S79-S86
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/08/05
    ジャーナル フリー

     本研究は,Si/Tiモル比10,30および100で合成したメソポーラス球状中空シリカ–チタニアを用いてアンモニアボラン加水分解活性とメチレンブルーの吸着および光触媒活性で評価した.メソポーラス球状中空シリカ–チタニアは,ポリスチレン粒子をテンプレートとしたゾルーゲル法で合成した.各Si/Tiモル比で合成した試料の形態をTEM写真で確認したところ,同じような形態をしていることが確認された.さらに,細孔径分布の結果から,メソ孔が存在することが示唆された.まず,これらの試料を用いてアンモニアボラン加水分解活性を行った.この結果から,Si/Tiモル比30で合成した試料の水素発生量が最も多かった.中和滴定による酸点量の結果から,アンモニアボラン加水分解からの水素発生量は,酸点量に依存することが明らかとなった.メチレンブルーの吸着反応では,Si/Tiモル比30で合成した試料が最も多く吸着し,アンモニアボラン加水分解活性の結果と同様であった.メチレンブルーの光触媒活性では,Si/Tiモル比10および30で合成した試料が活性を示した.これはアナターゼ型チタニア微粒子が混在していることが要因として考えられる.

  • 安東 修一, 石井 謙太郎, 鵜澤 正美
    原稿種別: 論文
    2025 年32 巻Supplement 号 p. S87-S93
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/08/05
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,加熱すりもみ法により得られたリサイクルコンクリート微粉をJIS標準砂の代替としてセメントモルタルに添加し,その再利用について検討した.普通ポルトランドセメントモルタルに異なる割合(10%,30%,40%)のリサイクルコンクリート微粉を添加した場合,リサイクルコンクリート微粉を添加していないモルタルと比較して,最大約10%の圧縮強度の低下が認められた.逆に,高炉セメントB種に相当するセメント,すなわち普通ポルトランドセメントと高炉スラグ微粉末を60:40で混合したセメントに,同じ割合のリサイクルコンクリート微粉を添加した場合,添加率が増加するにつれて圧縮強度の増加が観察され,最大で約5%の増加が観察された.この増加は,高炉スラグ微粉末によるリサイクルコンクリート微粉の活性化によるものと考えられる.耐硫酸性試験では,高炉セメントB種相当セメントにリサイクルコンクリート微粉が添加されたモルタルは,リサイクルコンクリート微粉が添加されていないモルタルと比較して,5 mass%硫酸水溶液では同等以上の耐酸性を示した.

  • 小西 敏功
    原稿種別: 論文
    2025 年32 巻Supplement 号 p. S94-S98
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/08/05
    ジャーナル フリー

     リン酸水素カルシウム二水和物(ブラッシャイト)または無水和物(モネタイト)は,β–またはα–リン酸三カルシウムの固相合成の反応原料として一般的に利用されている.したがって,ブラッシャイトやモネタイトの結晶相純度は,得られる結晶相のCa/P化学量論を調整するために重要である.本研究では,Ca(OH)2–H3PO4–H2O系からのモネタイトとブラッシャイトの生成過程における結晶相変化を調べることを目的とした.生成物の評価には,31P核磁気共鳴分光法,X線回折,フーリエ変換赤外分光法,走査電子顕微鏡,熱重量–示差熱分析を用いた.その結果,Ca(OH)2 および反応中間体である水酸アパタイト相が消費された48時間後に,細長い結晶形態を持つ単相のモネタイトが生成した.pH 4.0で形成されたブラッシャイトは単相であり,非晶質な丸い斑点を表面にもつ大きな板状の結晶形態を有していた.

  • 小嶋 芳行, 青木 悠真, 向後 光亨, 梅垣 哲士
    原稿種別: 論文
    2025 年32 巻Supplement 号 p. S99-S105
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/08/05
    ジャーナル フリー

     本研究では,乾式法による酸化カルシウムと生石灰からの非晶質炭酸カルシウム(ACC)の生成について検討した.ACCはCaOの自然消化と炭酸化の過程で生成した.CaO源として,沈殿炭酸カルシウムと石灰石を加熱して製造した酸化カルシウムと生石灰を使用した.また,相対湿度(RH)50%と65%の影響も検討した.それぞれのCaOが水酸化カルシウムに変換された時点で,すでにACCが形成されていた.酸化カルシウムを使用した場合,RH50%では24時間後に最大量のACCが生成された.一方,生石灰を用いた場合,ACCの生成量は50時間で最大となった.ACCの生成時間は,生石灰の方が酸化カルシウムよりも1.3–2.4倍長かった.湿度が高いほど,水和と炭酸化が早まり,ACCの生成時間は短くなったが,ACCの最大生成量に変化はみられなかった.

解説
  • 相澤 守, 小西 敏功, 本田 みちよ
    原稿種別: 解説
    2025 年32 巻Supplement 号 p. S106-S114
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/08/05
    ジャーナル 認証あり

     日本は他の先進諸国に先駆けて超高齢社会に突入している.健康寿命の延伸のためのアプローチは複数あるが,その一つに高機能なバイオマテリアルの開発がある.本稿では,健康寿命の延伸に貢献するバイオセラミックスについて解説する.バイオセラミックスの材料形態には,緻密体・多孔体・顆粒・ペーストがあるが,それらのなかで低侵襲治療を実現するペースト状人工骨に焦点をあてる.とくに,イノシトールリン酸を利用したキレート硬化メカニズムにもとづく,骨リモデリングサイクルに適合した有機/無機ハイブリッド型ペースト状人工骨の開発事例を紹介する.

  • 藤 正督, 石井 健斗
    原稿種別: 解説
    2025 年32 巻Supplement 号 p. S115-S122
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/08/05
    ジャーナル 認証あり

     セラミックスは融点が非常に高く,固相焼結により粉体原料を緻密化するためには1000℃以上の高温の熱処理を要する.焼結工程はエネルギー消費量が大きく,温室効果ガスを大量に排出するため,環境負荷が大きい.焼結過程において,望ましくない粒子の粗大化,初期化学量論比の変化,収縮による形状変化を引き起こし,最終製品の特性に大きな影響を与える.そこで,セラミックスを焼結せずに固化する技術を「無焼成固化法」と称して研究を進めてきた.本手法の重要な点は,粒子表面の機械化学的活性化にあり,具体的にはボールミルにより粒子表面を摩砕処理することで行う.無焼成固化法は,セラミックスと有機材料の機能性を大きく損なうことなく複合化することが可能であることが特徴である.本稿では,無焼成固化法のメカニズムと,その応用例について紹介する.

  • 目 義雄
    原稿種別: 解説
    2025 年32 巻Supplement 号 p. S123-S131
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/08/05
    ジャーナル 認証あり

     セラミックス産業界に共通する技術課題解決のための基盤的研究開発として,「セラミックスの高機能と製造プロセスの革新」が科学技術振興機構の研究成果最適展開支援プログラムA-STEP産業ニーズ対応タイプに選定された.2016年度から本技術テーマが開始されプログラムオフィサーとして5年間このプログラムを推進し2022年に追跡評価が実施され,高い評価を得た.筆者は,NIMSにおいて10年間「微粒子プロセスの高度化と多機能セラミックスの創製」に関するプロジェクトを行ってきた.ここでは,特に,セラミックスプロセスにおける成果として,1)ブラックボックスとされてきたセラミックス製造プロセスにおける構造形成過程に新しく光コヒーレンストモグラフィー(OCT)観察法を適用,2)経験と勘に頼っていた濃厚系スラリーの評価を科学的に裏打ちされた評価指標により制御・管理,3)より微細に粉砕しコンタミを減らすための粉砕ボールの条件を,シミュレーションと実験から明確,について紹介する.また,新規な製造プロセスの確立と新機能材料の提案例として,4)磁場を利用した粉体プロセスによる高度な微構造制御,5)電界印加したフラッシュ焼結法の新展開と応用,について著者らの成果を加えて紹介する.

  • 大野 晃
    原稿種別: 解説
    2025 年32 巻Supplement 号 p. S132-S139
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/08/05
    ジャーナル 認証あり

     セメントは主にコンクリート構成材料として使用され,社会インフラの整備に必要不可欠な建設資材である.しかしながらセメントの製造時には多量の熱エネルギーを必要とするとともに,原料である石灰石の脱炭酸により多量の二酸化炭素を排出している.日本では2050年までのカーボンニュートラルを達成するために国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によりグリーンイノベーション基金事業が創設された.グリーンイノベーション基金事業のプロジェクトのひとつとして,「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト」が組織された.ここでは,このプロジェクトで取り組んでいる,セメント工場から排出された二酸化炭素を利用した人工炭酸カルシウムの製造技術開発と,利用技術開発について解説する.

  • 殷 澍, 薛 羿貝, 大川 采久, 長谷川 拓哉
    原稿種別: 解説
    2025 年32 巻Supplement 号 p. S140-S149
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/08/05
    ジャーナル 認証あり

     酸化セリウム系希土類材料とその新規応用について解説する.酸化セリウムは,最も広く分布している希土類元素の1つであり,その研究は多くの材料研究者の注目を集めている.非化学量論的酸化物への可逆的な変換により,立方相酸化セリウムにはいくつかの特徴的な特性がもたらされる.本稿では,酸化セリウムベースの希土類材料の最近の進歩とその新しい用途について解説する.ソフト溶液プロセスによるさまざまな形態を有する酸化セリウムの構造制御と合成,紫外線遮蔽用化粧品材料,優れた酸素貯蔵機能(OSC)を有する触媒,化学研磨機能(CMP),ガス検知性能を備えた材料など,酸化セリウムの幅広い用途を紹介する.

  • 松本 尚之
    原稿種別: 解説
    2025 年32 巻Supplement 号 p. S150-S155
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/08/05
    ジャーナル 認証あり

     カーボンナノチューブ(CNT)は,優れた機械的強度や熱・電気伝導性から次世代複合材料のフィラーとして注目されているが,単純な混合ではその特性を十分に活かせない.本研究では,材料設計,プロセス設計,評価技術を統合し,CNT複合材料の性能を最大化するアプローチを提案する.材料設計により,CNTと窒化アルミニウム(AlN)を組み合わせた放熱材料においてフィラー充填率を低減しつつ,高い放熱性能と機械的強度を両立した.また,プロセス設計を工夫してCNTとPEEKの複合材料で均一な分散とネットワーク形成を実現し,高温環境下での機械的強度と電気特性を向上させた.さらに,非破壊評価技術を活用してCNTの分散状態やネットワーク構造を詳細に評価し,プロセスの最適化と材料性能の向上を達成した.これらの研究は,CNT複合材料の開発において,材料設計,プロセス設計,評価技術を統合するアプローチが次世代の高機能材料実現の鍵であることを示している.本稿は,この統合的アプローチが多様な産業分野におけるCNT複合材料の実用化を促進することを明らかにした.

  • 梅垣 哲士
    原稿種別: 解説
    2025 年32 巻Supplement 号 p. S156-S161
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/08/05
    ジャーナル 認証あり

     ナノサイズの空間に閉じ込められた物質は,通常では見られない物理的及び化学的特性を示す.この特性は空間に閉じ込められた物質の化学反応性にも影響を与え,反応の熱力学や速度論などの理論的な反応率を超える場合もある.本総説では,ナノサイズの空間に閉じ込められた物質が関与する化学反応についての報告例を挙げ,その特異性について紹介する.特に,ナノサイズの空間に閉じ込めた場合にみられる物質のサイズ,閉じ込められた物質とナノサイズの空間を形成する材料表面との相互作用,閉じ込められた物質同士の相互作用に焦点を当て,エネルギー貯蔵に関連する反応性に与える影響を議論する.

  • 藤本 憲次郎
    原稿種別: 解説
    2025 年32 巻Supplement 号 p. S162-S169
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/08/05
    ジャーナル 認証あり

     擬三成分系LiFePO4–LiMnPO4–LiCoPO4の500–700℃の範囲における反応相図が静電噴霧堆積法に基づいたハイスループット技術により構築された.還元雰囲気で熱処理した粉末試料群の粉末X線回折パターンと組成分析により,オリビン型単相領域が最も広いのは600℃で熱処理した場合であることが確認された.600℃で熱処理したLiFe1-xyMnxCoyPO4(0≤x≤1.0, 0≤y≤0.2)の充放電特性では,遷移金属サイトに10%のCoイオンを含むLiFe0.9-xMnxCo0.1PO4の試料群の容量が比較的大きい傾向を示し,なかでも0≤x≤0.5の範囲において高い容量を示した.

  • 板谷 清司, Ian J. DAVIES, 森田 孝治, 鈴木 達, 目 義雄
    原稿種別: 解説
    2025 年32 巻Supplement 号 p. S170-S179
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/08/05
    ジャーナル 認証あり

     本解説ではサブミクロンサイズの結晶粒から成る水酸アパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2:HAp) および関連化合物の高温超塑性について述べる.これらの化合物の高密度セラミックスは無加圧焼結法(一段階および二段階焼結)や加圧焼結法(熱間等方加圧およびパルス通電加圧)によって作製することができる.高密度HApセラミックスの高温引張り試験を最適な加熱温度および歪み速度の条件下で行うと,粒界すべりや結晶粒のスイッチングが促されることによって引張り歪みは600%近くまで増加する.

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