近年, 多量の無機物粉体を混入した無機物質中心の無公害プラスチックスが注目されているが, 本研究はこのようなプラスチック廃棄物処理を効率よく行なうための粉砕時における無機質充てん剤の挙動および充てん剤の表面活性がプラスチック複合材の安定性におよぼす影響を明らかにすることを目的としている。カルシウム化合物-ポリ塩化ビニル (PVC) 系混合摩砕において, PVC粉末のメカノケミカル分解におよぼすカルシウム化合物の表面活性 (酸点, 塩基性点) の影響とメカノケミカル分解の作用機構について検討した。
摩砕によるPVC粉末のメカノケミカル分解はPVC単独より, カルシウム化合物を添加, 混合摩砕することによりいちじるしく促進される。すなわち, PVC分子中のC-C結合の機械的切断はおもに塩基性点を発現するCa (OH)
2, C-Cl結合の機械的切断はおもに酸点を発現するCaSO
4・2H
2OおよびCaCO
3を添加することにより促進される。さらに, 酸点と塩基性点をともに発現するCaSO
4・2H
2OとCa (OH)
2の3成分系混合摩砕では協奏反応による両者の同時切断に効果的である。
一方, 混合摩砕中にPVCの分解により発生した塩化水素はカルシウム化合物の活性表面により塩化物として約40%程度捕獲され, しかもこの塩化物は水洗によって完全に除去することができる。また, 混合摩砕物を加熱すると分解温度の低温度化および発熱量の低下がみられた。
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