水溶液からの硫酸カルシウム二水塩の析出過程を明らかにするために, 塩化カルシウム溶液と硫酸ナトリウム溶液を当量混合することにより, 各種過飽和度の硫酸カルシウム溶液を調製し, その溶液から硫酸カルシウム二水塩が析出するときの液相のカルシウムイオンの濃度変化をカルシウムイオン電極を用いて測定した。さらに, トリポリリン酸ナトリウムを添加した溶液についてもカルシウムイオンの濃度変化を測定した。これらの実験で得られた結果から, つぎのことが明らかとなった。
1) 硫酸カルシウム二水塩の析出は初濃度の高さ (過飽和度) により二つに分けられる。半水塩の溶解度よりも高い初濃度の硫酸カルシウム溶液からは常温でも最初に硫酸カルシウム半水塩が析出し, ついで二水塩に変化する。半水塩の溶解度よりも低い初濃度の溶液からは硫酸カルシウム二水塩が直接析出する。
2) イオン電極を使用することにより, 結晶析出前 (結晶析出の誘導期) の溶液中のカルシウムイオンの挙動が明確になった。
3) トリポリリン酸ナトリウムは硫酸カルシウムの結晶核の生成には全く影響をおよぼさないが, 結晶析出を阻害する。
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