トリコテセンの化学的分析法は通常,複数種の同時分析を行なう必要上,クロマトグラフィーによる方法が最も適しており,薄層クロマトグラフィーは,ガスクロマトグラフィーとともに重要な分析手段と考えられるが,トリコテセンは,けい光性が全く無く,UV吸収も微弱であり,また構造上微量分析に適する官能基に乏しいため,薄層定量法の開発は他のマイコトキシンに比べてかなり遅れている.現在までに報告されている方法としては,硫酸,p-アニスアルデヒド,塩化アルミニウムなどのテルペン系化合物の万能試薬を用いた発色あるいは発けい光法,及びトリコテセンの共通骨格であるエポキシ基に選択的に反応する4-(p-ニトロベンジル)ピリジン(NBP)による呈色法並びに,ニコチンアミドとエポキシ基から生成される四級ピリジニウム体が,アルカリ性で活性メチレン化合物と反応し,それを酸性とすることにより強いけい光生成物を与えることを利用したけい光法などがある.これらの方法は,いずれもそれぞれ適用の範囲,限界があるが,ここでは上記5種の分析法について,それぞれの方法及び特徴の概略を説明する.なお,トリコテセンは8位の構造の差異により2群に大別されるが,ここでは上野らの分類に従い,8位にカルボニル基のあるものをタイプB,無いものをタイプAとする.
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