マイコトキシン
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1987 巻, 26 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 上田 成一
    1987 年 1987 巻 26 号 p. 1-6
    発行日: 1987/12/30
    公開日: 2009/08/04
    ジャーナル フリー
    生薬は動植物を素材とする天然物であるためカビが生えやすい.さらに製造工程中に特別な殺菌工程が加えられない場合が多いので,収穫前の自然環境や製造工程段階でのカビ汚染が避けられない.このような事情を考慮してか生薬のカビ汚染について日本薬局方では生薬総則の中で「生薬は,カビ,昆虫または他の動物による汚損物または混在物およびその他の異物をできるだけ除いたものであり,清潔かつ衛生的に取り扱う」と規定してあるだけで,それ以外の規格は定まっていない. 植物生薬汚染カビについては主としてマイコトキシン生産菌検索を中心に研究されており,市販生薬や製薬原料生薬からマィコトキシン生産菌も検出されている.また,マイコトキシン生産菌が高温高湿の環境条件下では植物生薬上でマイコトキシンを生産することが実験的に確認されていることからも,植物生薬のカビ汚染は衛生上重要な問題である. ところで,植物生薬の品質確保の観点からこのような有害カビの除去についての必要性が指摘されながらも,具体的な除去法の開発は食品素材の殺菌法に比較すると遅れているのが現状である.医薬品工場においてはGMPが実施され衛生面が改善されたが,植物生薬の製造や調整加工に関係している事業所に対してはGMP化が進んでいない.その理由としてこうした事業所は零細なところが多いため,カビ除去へ高額な設備投資が困難なのが一因とも考えられる.そこで,低廉な設備で済み,しかも安全かつ容易な殺菌法である乾熱殺菌法を植物生薬のカビ除去法として導入する意図のもとに基礎実験を行った.
  • 山本 勝彦
    1987 年 1987 巻 26 号 p. 7-12
    発行日: 1987/12/30
    公開日: 2009/08/04
    ジャーナル フリー
  • 上村 尚
    1987 年 1987 巻 26 号 p. 13-16
    発行日: 1987/12/30
    公開日: 2009/08/04
    ジャーナル フリー
    著者らは,1970年以来都内で市販されている穀類,種実類,豆類,香辛料およびそれらの加工品など,広範囲の食品についてマイコトキシンの汚染実態調査を行い,その結果を報告してきた. また,穀類などの食品原料がマイコトキシンに汚染された場合,調理加工を経てもトキシンが残存するか否かは人体への摂取との関連で重要な問題である.これらの問題を解明するために,調理加工時の各種条件下におけるマイコトキシンの消長についても報告してきた. 今回,汚染実態調査の結果,マイコトキシンの自然汚染が確認された食品について調理を行い,調理後,それらマィコトキシンが食品中に残存するかについて調査を行った.また,食品は原料から製品に至るまで種々の工程を経るが,仮に原料がマイコトキシンに汚染されていたとしても製造工程中で分解あるいは除去されることも考えられる.そこで,実際の製造方法により製品を作製し,各工程でのマイコトキシンの挙動について調査したのでその結果を併せて報告する.
  • 田中 敏嗣
    1987 年 1987 巻 26 号 p. 17-22
    発行日: 1987/12/30
    公開日: 2009/08/04
    ジャーナル フリー
    日本では昔から麦の赤カビ病原菌としてFusarium属のカビが注目され,下痢や嘔吐などを伴う赤カビ中毒症が数多く報告されている.諸外国においても,1940年代にソ連で発生した食中毒性無白血球症(ATA症),北米で頻発する家畜の拒食や嘔吐,子宮肥厚および各種臓器の出血などを特徴とするカビトウモロコシ中毒症などはフザリウムマイコトキシンに起因することが知られている. フザリウムマィコトキシンとして,強い細胞毒性を有するデオキシニバレノール(DON),ニバレノール(NIV)等のトリコテセン系マイコトキシンや,エストロゲン様作用を示すゼアラレノン(ZEN)などがあり,近年これらマイコトキシンによる穀類中の自然汚染が明らかにされている.これらの報告を見ると,アメリカ,カナダ,イギリス,南アフリカではもっぱらDONのみの汚染であり,わが国の四国,石川県ではDON, NIVの複合汚染がみられている.一方,ZENは世界各地で検出されている.これらの汚染調査にはそれぞれ異なった方法が用いられており,それぞれのデータを一概に比較することは難しい.したがって,今回,ヒトや家畜への影響が憂慮されているDON, NIVおよびZENについて,それらの暴露量を明らかにする目的で,まず,DON, NIV, ZENの同時微量分析法の開発,つづいて世界各地の穀類における汚染実態の把握,さらに自然汚染麦を用いて製粉,加熱調理におけるトキシンの除去の可能性について検討した.
  • 宇田川 俊一
    1987 年 1987 巻 26 号 p. 23-26
    発行日: 1987/12/30
    公開日: 2009/08/04
    ジャーナル フリー
    今日,わが国は食糧をはじめ生活必需品の多くを諸外国から輸入し,aflatoxin(AF)汚染にみられるように輸入品について検査の結果,クレームをつけて廃棄処置をとっている例も少なくないといわれている.しかしながら,このような危害を防止する研究については比較的関心が向けられないままに過ごしてきたようである.とくに医薬品のカビ汚染とそれに伴うマイコトキシン産生の問題は食品ほど研究が多くなく,一般の関心も低いようである.こうした研究は生産国はもとより,日本のような大消費国でも積極的に取組む必要があり,輸入医薬品原料が規格上不適当であるから廃棄するというだけでは国際的にもひんしゅくをかうことになりかねない.そこで本シンポジゥムでは食品とともに医薬品におけるマイコトキシン汚染の制御を話題の一つとして構成することにした. とりわけ植物性生薬を対象とした医薬品のカビ汚染は対策面での決定打がなく未だに品質管理上苦慮しているのが現状である.オーバービューでは,とくに医薬品についてのこのような背景を説明してみよう.
  • 諸岡 信久, 箕輪 徳男, 斉藤 智明, 角田 廣, 辰野 高司
    1987 年 1987 巻 26 号 p. 27-30
    発行日: 1987/12/30
    公開日: 2010/02/04
    ジャーナル フリー
    6α, 7β, 9α-Trihydroxy-8(14), 15-isopimaradine-20, 6-γ-lactone(PT)produced by Phoinopsis sp., one of the pathogenic fungi of pine wilt disease, was transformed to 7-oxo-6 α, 9 α-dihydroxy-8(14), 15-isopimaradiene-20, 6-γ-lactone (OPT) and others by pine callus. The transformation was inhibited by α-naphthoflavone added in the metabolic system. OPT was considered active form of PT, because OPT had a α, β-unsaturated ketone in the structure. OPT was obtained from PT by chemical oxidation, too.
  • 伊藤 幸勝, 一二三 恵美, 須藤 佳寿美, 宇田 泰三, 大谷 勝己, 川村 理, 永山 智, 佐藤 夫美, 上野 芳夫
    1987 年 1987 巻 26 号 p. 31-35
    発行日: 1987/12/30
    公開日: 2010/02/04
    ジャーナル フリー
    A direct enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA) for the quantitation of aflatoxin B1 (AFB1) was developed by the utilization of horseradish peroxidase (HRP) labelled anti-AFB1 monoclonal antibody and 96-well immunomicroplate coated with AFB1-bovine serum albumin conjugate. The detection limit for AFB1 was ca. 5 pg/assay. A quick ELISA system was also developed using the 8-well immunomicroplate, and ca. 50 pg to 5 ng/assay of AFB1 were quantitated within 10 min.
  • 長谷川 明彦, 田中 敏嗣, 山本 進, 戸矢崎 紀紘, 松田 良夫, 宇田川 俊一
    1987 年 1987 巻 26 号 p. 37-41
    発行日: 1987/12/30
    公開日: 2009/08/04
    ジャーナル フリー
    O-Methylsterigmatocystin(以下OMSTと略す)は,BurkhardtとForgacsがAspergillus flavusからaflatoxins(以下AFと略す)と同時に新代謝産物として,またColeらは同じA. flavusからの単独生産を報告している.その後,sterigmatocystin(以下STと略す)とともにChaetomium spp., Farrowia sp., Monocillium nordiniiなどの菌類からも生産性が明らかにされた.最近BhatnagarらはAFの生合成に関する研究においてAFを生産せず,しかもOMSTを蓄積するA. parasiticusの1系統が存在することを報告した.著者らは,輸入ナッツ類からのAF生産菌の分離とそれらのAF生産力,輸入ナッツ類のAF汚染について実態調査を行いその一部を報告したが,その際に輸入ピーナッツより分離したA. parasiticusの1菌株が,AF生産能を示さずOMSTのみ生産することを確認したため,本菌株の同定と合わせて報告する.
  • 河合 清, 石崎 希代子, 久田 和夫, 中丸 輝彦, 野澤 義則
    1987 年 1987 巻 26 号 p. 43-46
    発行日: 1987/12/30
    公開日: 2010/02/04
    ジャーナル フリー
    Emodinおよびskyrin (Penicillium islandicumより), averufinおよびversicolorin A, B (Aspergillus versicolor より)などのanthraquinone化合物は単離ラット肝ミトコンドリアの酸化的リン酸化反応を除共役し,ATPの生合成を著しく阻害する.これらのanthraquinone化合物は共通して水酸基の1個がβ-位に位置し,その水酸基がO-methyl化された誘導体や水酸基を持たないもの(chrysophanol, deoxyversicolorin Aなど)では除共役作用が極めて弱い.Anthraquinone核上の水酸基の位置と除共役作用との関係について1-hydroxyanthraquinone, 1,2-dihydroxy-, 1,4-dihydroxy-, 1,5-dihydroxy-および1,8-dihydroxyanthraquinones(Fig.1)を用いて比較検討した結果,β-位に水酸基をもつ1,2-dihydroxyanthraquinone(alizarin)のみが強い除共役作用を示し,その他の化合物は極めて弱い作用しか示さなかった.このことはanthraquinone核上のβ-位に水酸基を持つもののみが強力な除共役作用を示すことを示唆している.しかし,最近,β-位の代りにγ-位に水酸基を有するerythroglaucin(4-hydroxyphyscion)(Fig.1)が除共役作用を有することが報告され,β-位と同様にγ-位に水酸基を有するpolyhydroxyanthraquinoneも除共役作用を有することが強く示唆された.このことを確認する目的でislandicinおよびiridoskyrin (from P. islandicum)(Fig.1)について除共役作用を検討した.その結果,両化合物とも,かなり高濃度でも除共役作用を示さないことが判明した.
  • 佐藤 夫美, 永山 智, 川村 理, 上野 芳夫
    1987 年 1987 巻 26 号 p. 47-49
    発行日: 1987/12/30
    公開日: 2009/08/04
    ジャーナル フリー
    Chicken meat, wheat and porcine plasma spiked with various amounts of ochratoxin A were extracted with 0.5% metaphosphoric acid-chloroform (1 : 1), acetonitrile-water (3 : 1) and chloroform alone, respectively, and the resulting extracts were analyzed by an enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA) based on monoclonal antibody specific to ochratoxin A. The detection limit of ochratoxin A in these samples was 1 ng/g in the present simplified ELISA.
  • 法月 廣子, 南沢 正敏, 山本 公一, 杉本 貞三
    1987 年 1987 巻 26 号 p. 50-51
    発行日: 1987/12/30
    公開日: 2009/08/04
    ジャーナル フリー
    Certain Egyptian polished rice examined on several toxic substances was found to be naturally contaminated with aflatoxins (AF). This rice was sent to Japan by a Japanese resident in Cairo, who suspected the rice bought there was a cause of his illness. The rice was mingled with pale yellow grain, and apparently not suitable to eat according to the inspection guideline for agricultural products in Japan. As residual pesticides, phenitrothion and BHC were found from the rice, although their concentrations were lower than their standard requirements. We determined aflatoxins, deoxy-nivalenol and nivalenol on the rice and found AF B1 (8 ppb), AF B2 (2 ppb), which were confirmed by GC/MS. Twelve strains of A. flavus were isolated from the rice, and 1 strain produced AF B1 and B2 at the concentrations of 43 ppm and 3 ppm respectively.
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