マイコトキシン
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50 巻, 2 号
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  • 杉山 晶規, 石倉 信之, 幅野 渉, 根本 清光, 上野 芳夫, 田代 文夫
    2000 年 50 巻 2 号 p. 83-91
    発行日: 2000/07/31
    公開日: 2010/02/04
    ジャーナル フリー
    我々は,アフラトキシンB1(AFB11)誘導ラット肝癌細胞株であるK1およびK2細胞においてc-mycと同様に14-3-3β 遺伝子が正常の肝臓組織に比べて著しく発現亢進していることを報告してきた.14-3-3β タンパク質はシグナル伝達因子に結合し,細胞増殖や分化を調節していることが報告されている.今回,ウェスタンブロッティングにより本遺伝子のタンパク質レベルで発現を調べたところ,mRNAレベルと同じく発現が著しく促進されていることが明らかとなった.発現亢進の原因を明らかにするために14-3-3β 遺伝子のサザンハイブリダイゼーションを行ったところ,Eco RI,Bam HI,Pst I,で処理した場合,K1およびK1細胞では正常肝臓組織に比べて切断パターンに明らかな相違が認められたことから,14-3-3β 遺伝子領域には点突然変異を含む変異が起きていることが考えられた.さらに,K2細胞を14-3-3β 遺伝子のアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)で処理したところ,プラスチックプレート上での増殖が約30%阻害された.また,点突然変異による活性化が報告されているrasファミリー遺伝子について,PCR,SSCP法を用いて解析したところ,K-ras,H-ras,N-ras遺伝子のexon1,2領域における変異は認められなかった.これらの結果は,AFB1による肝発癌過程においてはrasファミリー遺伝子の点突然変異による活性化ではなく,14-3-3β 遺伝子領域の変異による発現亢進が脱制御されたc-myc遺伝子発現と共に重要な役割を果たしていることを示唆している.
  • 藤本 治宏, 藤巻 利之, 奥山 恵美, 山崎 幹夫
    2000 年 50 巻 2 号 p. 93-99
    発行日: 2000/07/31
    公開日: 2009/08/04
    ジャーナル フリー
    免疫調節活性を指標とした子嚢菌Sordaria gondaensisの酢酸エチル抽出エキスの分画において,3種のジオキソピペラジン系成分が,本菌の免疫抑制活性本体として単離された.それらは,2種の既知菌類代謝産物,トリプロスタチンBとフミトレモルジンB,並びに1種の新代謝産物,13-オキソフミトレモルジンB,であることを,それらの物性とスペクトルデータおよび化学的関連付けから明らかにした.トリプロスタチンBとフミトレモルジンBが本菌から単離されたのは.今回が初めてである.
  • 中村 伸
    2000 年 50 巻 2 号 p. 101-104
    発行日: 2000/07/31
    公開日: 2009/08/04
    ジャーナル フリー
    スギ花粉症などの即時型アレルギー反応は,抗原(スギ花粉症では,スギ花粉中に含まれる塩基性蛋白質のCryj.IならびにCryj.IIが抗原となる)に対する特異的IgE抗体の産生が原因となる免疫異常で,近年こうしたアレルギー疾患が急増し,全人口の約20%が何らかのアレルギー症に悩まされている.アレルギー疾患は,欧米や日本等の"先進国"で多い事から"文明病"的位置づけにあるが,野生動物のサル類でもスギ花粉症が見られる.我々は準野性状態で飼育されているニホンザルの中に,ヒトと同様なスギ花粉症を見い出し,それを契機にサルモデル系でのIgE産生応答やアレルギー反応に関する研究を進めている.その過程で,ヒトの場合,過去数十年間の衛生環境の変化(原虫や寄生虫感染の低下など)が細胞性免疫応答(Th1)/液性免疫応答(Th2)のインバランス(Th2亢進)を惹起し,抗原特異的IgE抗体の産生亢進→花粉症・アレルギー疾患の増大要因となっていることを明らかにした.
  • 田代 文夫
    2000 年 50 巻 2 号 p. 105-110
    発行日: 2000/07/31
    公開日: 2010/02/04
    ジャーナル フリー
    フザリウム属のカビによって産生されるゼアラレノン(ZEN)はステロイド骨格をもたないが,家畜特にブタに過エストゲン症を引き起こし,環境中のエストロゲン物質の一つと考えられている.私共は,今までにZENの作用機構を明らかにするために,エストロゲンレセプター(ER)との相互作用,ラット子宮のRNAポリメラーゼおよびタンパク質合成に対する作用を解析してきた.その結果,ZENおよびその誘導体は,17β-estradiol(E2)に比べて弱いがin vivoおよびin vitroにおいてERと結合することが明らかになった.結合能力は,α-zearalanol(α-ZAL)>α-zearalenol(α-ZEL)>β-ZAL>ZEN>β-ZELの順であった.ラット子宮のRNAポリメラーゼ活性に対しては,著しい促進効果が認められた.さらに,ZENおよびその誘導体であるα-ZALとα-ZELはin vivoとin vitroにおいて52 kDaの子宮特異的タンパク質を誘導することが明らかとなった.一方、本タンパク質の誘導は,RNAポリメラーゼの阻害剤であるα-amanitinやactinomycinDの存在下では完全に抑制された.これらの結果より,ZENおよびその誘導体とER複合体は,標的臓器において転写活性化因子として機能し得ることを示している.また,ZENが血液-脳関門を介して脳内に移行し,脳内ERと結合することより,エストロゲンのフィードバックに作用して卵巣や精巣の委縮を引き起こすと共に行動異常などにも関与している可能性がある.
  • 上村 尚
    2000 年 50 巻 2 号 p. 111-117
    発行日: 2000/07/31
    公開日: 2009/08/04
    ジャーナル フリー
    ゼアラレノンは,子宮を主とする生殖臓器に作用して,流産,子宮肥大などを引き起こすエストロジェン様物質である.今回,ゼアラレノンについて細胞毒性試験,染色体異常誘発試験および催奇形性試験の毒性スクリーニングを行ったところ,すべての試験項目において活性が認められた.細胞毒性試験では,ゼアラレノンの処理によりCHO-K1細胞のほとんどが多核細胞を形成することが認められた.染色体異常誘発試験では,4倍体を高率で発生させることから数的異常がゼアラレノンにより誘発されることが分かった.また,催奇形性試験では,胎児の早期死亡,生児の体重減少および脊椎の椎弓ならびに椎体の癒着,さらに肋骨の癒着など骨格奇形が対照群と比較して有意な差がみられた.
  • 伊藤 美武
    2000 年 50 巻 2 号 p. 119-124
    発行日: 2000/07/31
    公開日: 2009/08/04
    ジャーナル フリー
    エストロゲン様マイコトキシンとして知られているゼアラレノンは過エストロゲン症を特徴とする中毒症を引き起こし,家畜とくにブタにおいては多数の事故例が報告されてきた。しかしゼアラレノンの毒性は一過性で致死性も低いところから,現在は家畜の生育増進剤として市販,使用されており,中毒症よりむしろその効用に注目が集まっている。ここでは,ゼアラレノンを新生子マウスに投与することにより成熟後に内因性エストロゲン非依存性で無排卵性の持続発情を誘発し,不可逆的な不妊症となることを明らかとした我々の成績を紹介し,従来の可逆的な中毒症とは異なるゼアラレノンの毒性から内分泌攪乱性物質の1つであるとして問題提起した。
  • 杉浦 義紹
    2000 年 50 巻 2 号 p. 125-128
    発行日: 2000/07/31
    公開日: 2009/08/04
    ジャーナル フリー
    ゼアラレノンはエストロジェン作用を有するマイコトキシンで,フザリウム属真菌によって産生されることが知られている.その中でも,F.gyaminearum, F.culmorum, F.cyookwellenseの3種がわが国における主要なゼアラレノン産生菌で,小麦や大麦のゼアラレノン汚染を引き起こしている.しかしながら,ゼアラレノン産生の生物学的意味に関する研究は少なく,天然由来の環境ホルモンとしてゼアラレノンの生理的作用機序を詳細に研究することが今後求められる課題である.
  • 寺田 久屋
    2000 年 50 巻 2 号 p. 129-135
    発行日: 2000/07/31
    公開日: 2010/02/04
    ジャーナル フリー
    畜産食品中に含まれるゼアラレノン及びその関連化合物(ZENs)の微量分析法を検討した。その結果,イムノアフィニティーカラム処理と電気化学検出―高速液体クロマトグラフィーを組み合わせることにより,動物組織中に含まれる6種類のZENsをpptレベルで同時定量できる分析方法を確立した。牛,豚,鶏の筋肉及び肝臓中に各1ppbの標準品を添加した回収実験では,回収率71.2~97.0%(変動係数1.4~7.7%)という結果を得た。検出限界は各0.02ppbであった。
  • 2000 年 50 巻 2 号 p. 137
    発行日: 2000年
    公開日: 2010/02/04
    ジャーナル フリー
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