マイコトキシン
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53 巻, 2 号
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原著
  • ユンベ・ ブランカ, 芳澤 宅實
    原稿種別: 原著
    2003 年 53 巻 2 号 p. 87-93
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/10/07
    ジャーナル フリー
    焙煎による自然汚染大麦中のデオキシニバレノール(DON)及びニバレノール(NIV)の分解について,GC-MS またはモノクローナル抗体を用いた ELISA で検討した.DON と NIV が加熱温度と加熱時間に依存して分解されることが GC-MS で確認された.しかし,150℃で5 分あるいは 30 分の加熱条件下では,GC-MS 分析では僅かな減少にもかかわらず,ELISA では増加することが認められた.この現象は両トキシンの標準品を 150℃ で加熱した際にも確認され,トキシンの加熱生成物がモノクローナル抗体に対して高い交差反応性を示すことが示唆された.
  • スウィウェク・ リピゴルゴソン, ノルハヤティ・ アリ, 芳澤 宅實
    原稿種別: 原著
    2003 年 53 巻 2 号 p. 95-101
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/10/07
    ジャーナル フリー
    タイ,パキスタン,バングラデッシュからわが国に輸入された白米を汚染するアフラトキシン(AF)の分析を,モノクローナル抗体を用いた直接競合ELISA 法ならびにイムノアフィニティーカラムとHPLC(IAC-HPLC)法により行なった.ELISA(検出限界2.8 μg/kg)では,分析した20 検体からアフラトキシンB1(AFB1)は検出されなかった.しかし,IAC-HPLC(検出限界0.1 μg/kg)においては,20 検体中5 検体(タイ3検体,パキスタン2検体)から0.1 - 0.3 μg/kg のAFB1 が検出され,またAFB1 0.3 μg/kg で汚染したパキスタン米からはAFB2(0.1 μg/kg)も認められた.輸入米のAF 汚染レベルはわが国の基準値(10 μg/kg)に比べきわめて低いレベルであったが,アジア地域の主食としてのコメのAF 汚染はヒトのAF 暴露を精確に評価する上で重要な課題である.
第54回学術講演会要約
学術賞受賞講演
シンポジウム
  • 芳澤 宅實
    原稿種別: 第54回学術講演会要約
    専門分野: シンポジウム
    2003 年 53 巻 2 号 p. 113-118
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/10/07
    ジャーナル フリー
    トリコテセン系マイコトキシンが原因と考えられるヒトと家畜の中毒事例については多くの総説などで解説されているが,ここでは国際機関等において評価されてきた事例を中心に,関連情報について紹介する.
  • 田中 敏嗣, 杉浦 義紹
    原稿種別: 第54回学術講演会要約
    専門分野: シンポジウム
    2003 年 53 巻 2 号 p. 119-121
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/10/07
    ジャーナル フリー
    2001 年FAO/WHO 合同食品添加物専門家会議(JECFA)はデオキシニバレノール(DON)の暫定最大1日耐容量(PMTDI)を1 μg/kg(体重)に評定した.厚生労働省は食品衛生法第7 条に基づく規格基準設定に向けた小麦に含有するDON の暫定的な基準値を1.1 mg/kg に定め,行政上の指導指針とした.昨年度に実施した麦類の汚染調査の結果,国内産小麦36 試料中33(92%)にDON の汚染が認められ,その平均濃度は388 μg/kg(濃度範囲0 ~ 2,248 μg/kg)で,4 試料が暫定基準を超えていた.輸入小麦では75%に汚染が認められ,平均濃度は100 μg/kg(濃度範囲0 ~ 740 μg/kg)であった.日本人の小麦の平均摂取量89.8 g,加工によるDON の減衰率を50%と仮定した場合,TDI 比率は国産,輸入小麦でそれぞれ34.8%,9%となる.なお,供試試料の多くはニバレノールとの複合汚染が認められた.今後継続した汚染実態の究明と圃場での汚染防止対策,人の健康への影響評価が講じられる必要がある.
  • 日ノ下 文彦
    原稿種別: 第54回学術講演会要約
    専門分野: シンポジウム
    2003 年 53 巻 2 号 p. 123-127
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/10/07
    ジャーナル フリー
    マイコトキシンの一部は腎臓にも障害を及ぼすことが知られているが,最も有名なものがオクラトキシンである.これは,1950 年代にバルカン諸国からの報告が相次いだ腎・尿路系を侵す風土病で,65 年にWHOが正式に認定した Balkan endemic nephropathy(BEN)の原因物質と考えられている1,2).BEN の病態は主として尿細管の変性・機能障害,間質の繊維化,糸球体の硝子化であり,やがて腎機能障害が進行して腎不全に陥るものである.しかも,BEN に陥った症例では腎盂や尿管に腫瘍が発生しやすいことも知られており,多発地域では無視できない大きな問題となっている.オクラトキシン以外ではチトリニンやルブラトキシン,フモニシン等が腎臓毒性を有するマイコトキシンとして報告されている.ヒトにおけるトリコテセンの腎毒性はまだ報告されてないものの,ニバレノール(nivalenol, 以下 NIV)やデオキシニバレノール(deoxynivalenol, 以下 DON)が腎障害を惹起することが動物実験で確認されているので,これまで得られた知見を中心に報告する.
  • 篠塚 淳子, 土井 邦雄
    原稿種別: 第54回学術講演会要約
    専門分野: シンポジウム
    2003 年 53 巻 2 号 p. 129-140
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/10/07
    ジャーナル フリー
    T-2 トキシン投与マウスのリンパ系および造血系組織の検索を行い,その病変発現にアポトーシスの関与が示された.T-2 トキシンはリンパ球や造血細胞のような細胞増殖活性の高い細胞に,アポトーシスを誘発し,造血系組織の変化はリンパ系組織に先行した.T-2 トキシン投与マウスの胸腺ではc-fos mRNAが持続的に増加し,アポトーシス誘発は蛋白合成阻害薬の前処置により抑制された.マウス胸腺初代培養系のT-2 トキシン添加においてもアポトーシスは誘発され,c-fos mRNA の増加が認められた.これらの変化は細胞内カルシウムイオンキレーターやPKC インヒビター前処置により抑制され,T-2 トキシンによるアポトーシス誘発に細胞内カルシウムイオン濃度の上昇とc-fos の発現が重要な役割を果たすことが示された.
  • 小西 良子
    原稿種別: 第54回学術講演会要約
    専門分野: シンポジウム
    2003 年 53 巻 2 号 p. 141-147
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/10/07
    ジャーナル フリー
    トリコテセンマイコトキシンの特異的および非特異的宿主抵抗性に対する影響を検討した.比較的低濃度のデオキシニバレノールはサルモネラ感染に対しての感染抵抗性を低下させた.デオキシニバレノールはin vivo での感染実験においてTNF-αで代表される前炎症性サイトカインの産生を乱した.ヒトマクロファージ培養細胞系を用いた実験においてはデオキシニバレノールおよび8- ケトトリコテセンも前炎症性サイトカインの産生を乱すことが見い出された.ヒトマクロファージ培養細胞をリポポリサッカライドとデオキシニバレノールまたは8- ケトトリコテセンと同時処理した場合,TNF-α,IL-8 と IL-6 は異常に産生されることがわかった.これらのことからデオキシニバレノールおよび8- ケトトリコテセンは細菌が有するリポポリサッカライドが共に存在する場合に前炎症性サイトカイン産生を亢進することが示唆された.
  • 熊谷 進
    原稿種別: 第54回学術講演会要約
    専門分野: シンポジウム
    2003 年 53 巻 2 号 p. 149-150
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/10/07
    ジャーナル フリー
    Deoxynivalenol, T2-toxin and HT-2 toxin were evaluated in the 56th JECFA (Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives) held in February, 2001. The Committee proposed a PMTDI (provisional maximum tolerable daily intake) of 1 μg/kg bw/day for deoxynivalenol, based on the NOEL of 100 μg/kg bw/day in a 2-year feeding study using mice. It proposed a PMTDI of 60 ng/kg bw/day for T-2 toxin and HT-2 toxin, alone or in combination, based on the LOEL of 29 μg/kg bw/day in a 3-week dietary study in pigs. Carcinogenicity was not recognized for these trichothecens.
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