マイコトキシン
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57 巻, 2 号
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原著
  • 小西(杉田) 良子, 新見 伸吾, 杉山 圭一
    2007 年 57 巻 2 号 p. 75-80
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    ジャーナル フリー
    トウモロコシ中のアフラトキシンB1 を簡易迅速に測定できる市販のキットに関して,その妥当性を複数試験機関により評価した.市販のキットから,3 種類の定量用キット,2 種類の定性用キットを選定し妥当性試験に供した.対象試料としては,ブランクのトウモロコシおよび自然汚染トウモロコシを用いた.ブランクのトウモロコシは,添加回収試験(5 ng/g および10 ng/g)に供した.定量性キットとして,ELISA 法とラテラルフロー法を試験対象として行った.これらの RSDr は23.3 %以下,RSDR は35.7 %以下であった.定性用キットにおいては,5 ng/g のアフラトキシンB1 を添加したトウモロコシ,自然汚染のトウモロコシから擬陰性反応は見られず,ブランク試料から擬陽性は認められなかった.同一キット中のロット間の変動性においては,ラテラルフロー定量法はELISA 定量法より比較的高い傾向があり,妥当性試験の結果と同様,擬陽性または擬陰性の反応は認められなかった.以上のことから,試験対象をトウモロコシに限れば,日本のアフラトキシンB1 の規制検査において,5 ng/g を限度とした初期段階に用いるスクリーニング法として,これらの5 種類のキットは,妥当であることが評価された.
  • 後藤 哲久, 大槻 香林, 梅田 未希, 中村 祥子, 板東 誠治
    2007 年 57 巻 2 号 p. 81-86
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    ジャーナル フリー
    オクラトキシンA(OA)はアスペルギルス属とペニシリウム属の一部の菌が作るマイコトキシンで,穀類,コーヒー,ワイン,乾燥果実や肉製品など多くの食品を汚染する.しかしアジアの人にとっての主食である米のオクラトキシン汚染はあまりわかっていない.ここでは,ジャポニカタイプの白米と玄米,餅米,インディカタイプの玄米とソバの5 種類の試料を用いて,コメとソバ中のオクラトキシンAの分析法を検討した.試料に0.1 - 10.0 μg/kg のOA を添加しての直線性試験と,0.5 と5.0 μg/kg のOA を添加しての日内と日間の再現性試験を行った.OA はアセトニトリル/ 水で抽出,イムノアフィニティーカラムで精製後,蛍光検出HPLC で分析をした.0.5 μg/kg 濃度での回収率とその相対標準偏差は,日内が64.5 - 110.2 %で5.7 - 16.7 %,日間が55.8 - 99.6 %で4.3 - 15.0 %であった.0.2 - 10.0 μg/kg の範囲での回収率の平均は89.6 - 118.1 %の範囲であった.これらの結果から,この方法によって,0.2 - 10.0 μg/kg の範囲でコメ(白米,玄米)とソバ中のオクラトキシンA を分析できることが確認された.
  • 川崎 靖, 安達 尚美, 山崎 富生, 轟 理沙, 後藤 良隆, 古宮 裕子, 倉部 誠也, 根本 清光, 出川 雅邦, 三浦 成敏, 田代 ...
    2007 年 57 巻 2 号 p. 87-93
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    ジャーナル フリー
    今回,我々はアフラトキシンB1 誘発ラット肝癌K2 細胞に幹様細胞(癌幹細胞)が存在することを明らかにするために,side population(SP)細胞およびstemness 遺伝子発現の解析を試みた.ローダミンを用いたフローサイトメーター解析により,K2 細胞は癌幹細胞であるSP 細胞を約89%と高い割合で含んでいることが明らかとなった.さらに,胚性幹細胞の特徴である多分化能と自己複製能の維持に関与するstemness遺伝子であるsox2, nanog, klf4, Ras ファミリーE-ras およびポリコームファミリー bmi1 遺伝子のK2 細胞での発現レベルを解析したところ,これらの遺伝子は強く発現されていた.一方,成熟肝細胞の特異的マーカー遺伝子であるアルブミンおよびチロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)の発現は非常に低レベルであった.これらの結果より,K2 細胞はstemness 遺伝子の発現を獲得することにより,典型的な癌幹細胞としての性質を有していると考えられる.
  • 久城 真代, 鄭 雅志, 佐合 由紀, 田中 健治, 永田 忠博
    2007 年 57 巻 2 号 p. 95-104
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    ジャーナル フリー
    コメに付着するイネ馬鹿苗病菌Gibberella fujikuroiは, フモニシンの主な産生菌であるトウモロコシ赤カビ病菌Fusarium verticillioidesの近縁であるため, コメでフモニシン汚染が懸念されている. しかしながら, フモニシン分析法のほとんどは, トウモロコシ, コムギを対象としており, コメを対象とした分析法はこれまでに無かった. そこで今回, フモニシン汚染された人工カビ米を作成し, コメ中フモニシン(フモニシンB1, フモニシンB2, フモニシンB3)の効率的な抽出法とHPLCによる定量法を開発した. 浸漬抽出により, 種々のコメ試料での添加回収試験において, 安定して高い回収率が得られた. 定量には, プレカラム誘導体化機能付き液体クロマトグラフィー-蛍光検出法(HPLC-FL)もしくは液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法(LC-MS/MS)を用いた. フモニシンB1について, LC-MS/MSでHPLC-FLの十分の一の検出限界が得られた. 
特別講演
  • 後藤 哲久
    2007 年 57 巻 2 号 p. 105-113
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    ジャーナル フリー
    分析法の妥当性確認は、分析の精度を保証するための第一歩となる基本事項である。分析法の妥当性確認方法としては、国際ハーモナイズドプロトコールに基づいたフルコラボスタディー(HCV)があるが、これのみを分析法の妥当性確認法と考える必要はなく、分析法にその目的適合性があるように、その分析法の試料目的に合わせた妥当性確認法を選択してMethod Validationを行う必要がある。Method Validationの世界ではAOACインターナショナルが大きな役割を果たしてきたが、近年はその妥当性確認に関して多様な新しい要求が出てきている。しかし妥当性確認された分析法を適切な適用性確認を経て使用することは分析の品質保証の第一歩であり重要なことである。
シンポジウム
  • 法月 廣子, 堤 徹, 勝部 和義, 南澤 正敏
    2007 年 57 巻 2 号 p. 115-121
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    ジャーナル フリー
    全国各地から送付された麦類について、デオキシニバレノールの汚染状況を調査した。対象とした試料は2002年から2006年産の5年間で、合計7933点である。これらの試料のうち調査点数の多かった小麦7883点について汚染状況を調査したところ、およそ50 %の試料に検出限界の0.05 mg/kg以上のデオキシニバレノールが検出され、厚生労働省の暫定基準の1.1 mg/kgを超えるものが、2002年(7.8 %)、2003年(4.0 %)、2004年(2.5 %)、2005年(0.2 %)、2006年(2.8 %)の各年次に認められた
  • 石黒 瑛一
    2007 年 57 巻 2 号 p. 123-127
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    ジャーナル フリー
    日本の飼料分野のカビ毒は、アフラトキシンB1、ゼアラレノン及びデオキシニバレノールで基準値が設定されている。飼料中のカビ毒の分析は、日本の公定分析法である“飼料分析基準”により実施されている。トウモロコシ及び配合飼料のアフラトキシンBの汚染率は毎年変動している。飼料原料中のアフラトキシンは、主に東南アジアから輸入される原料から検出される。更に、飼料原料中のオクラトキシンA、デオキシニバレノール、ニバレノール、ゼアラレノン及びフモニシンB1等の他のマイコトキシンについても汚染調査を行った。
  • 中島  隆
    2007 年 57 巻 2 号 p. 129-134
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    ジャーナル フリー
    コムギ赤かび病を抑制するには適切な農薬の使用が最も効果的で信頼性が高い手段である.このため,かび毒汚染量をエンドポイントとした登録農薬と新規農薬の再評価を行った.その結果,7種の薬剤(メトコナゾール,テブコナゾール,キャプタン,チオファネートメチル,有機銅,無機銅,亜りん酸)にDONおよびNIVの高い抑制効果が認められた.アゾキシストロビンは発病は減少させるがDONおよびNIVの蓄積量を増加させた.以上のことから,かび毒の抑制効果に基づく農薬の評価システムを導入するべきと考える.より効率的な防除戦略を立てるために、赤かび病菌に異なるステージで感染した小麦の経時的なかび毒蓄積特性を調査した.その結果,登熟期間後半に,既感染菌によるDON・NIV蓄積量の大幅な増加と新たな感染によるDON・NIVの蓄積が起こることが判明し,小麦では登熟後期の防除の重要性が示唆された.
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