マイコトキシン
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58 巻, 1 号
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原著
  • 若菜 大悟, 細江 智夫, 板橋 武史, 福島 和貴, 河合 賢一
    2008 年 58 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/01
    ジャーナル フリー
    深在性真菌症に対する新規抗真菌剤開発の一環として、重篤輸入真菌症の原因菌と同科のマルブランキア属菌15菌株について抗真菌活性を指標に検索した結果、マルブランキア・フィラメントサほか2種に抗菌活性が認められた。今回は、マルブランキア・フィラメントサに着目し、その成分として2種の新規フラノン配糖体マルブランキオシドA(1)、マルブランキオシドB(2)を単離することができた。化合物1および2の構造は各種スペクトルデータの解析および化学反応の利用により決定した。化合物1および2は菌類より得られたグルコサミンを糖部とするフラノン配糖体の例として珍しいものである。
  • 伊藤 綾子, 渡辺 康, 中島 正博
    2008 年 58 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/01
    ジャーナル フリー
    チョコレート中のアフラトキシン(アフラトキシンB1, B2, G1, G2;AFs)分析法を確立し、室内再現精度の確認を実施した。チョコレート中のAFsは、アセトニトリル-メタノール-水(60+10+40, v/v/v)で抽出し、イムノアフィニティカラムにより精製後、蛍光検出HPLCにて定量を行った。試料にAFs標準液を0.1および10.0 μg/kgの濃度となるように添加し、日内および日間における繰り返し試験を行った結果、全てのAFsにおける回収率は90-97 %、併行再現性の相対標準偏差は1.7-3.3 %、日間再現性の相対標準偏差は0-4.1 %、異日分析における室内再現性の相対標準偏差に対するHorRatは、全て0.2以内であった。以上の結果から、チョコレート中のAFsは本法により精度良く分析できる事が確認された。
会長講演
  • 熊谷 進
    2008 年 58 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/01
    ジャーナル フリー
    エルゴティズム、ATA症(alimentary toxic aleukemia)、七面鳥X病以外にも多数の人や動物の疾病が、かび毒を原因としたものであることが提唱されてきた。その例として、中国等におけるアフラトキシンによる人の肝臓がん、インドやケニヤで発生した人や動物の急性アフラトキシン中毒症、南アフリカ等におけるフモニシンによるウマの白質脳軟化症や人の食道がん、バルカン地方におけるオクラトキシンによる人の腎症などが挙げられる。最近では人の神経管欠損へのフモニシンの関与が提唱されている。しかし、こうした教科書的に語られるかび毒に起因する疾病は、必ずしも疫学的あるいは毒性学的証拠に十分に裏付けられているわけではなく、広く受け入れられているかび毒の毒性機序にも未解決の問題が残っているように考えられる。その例として、アフラトキシンの化学構造と急性毒性との関連、腎症と尿路系腫瘍におけるオクラトキシンAの関与、動物種によるフモニシン毒性の顕著な差異などが挙げられるであろう。
2007年学術賞受賞講演
  • 小西 良子
    2008 年 58 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/01
    ジャーナル フリー
    カビ毒は食品を汚染する自然毒の1つであるが、慢性毒性として発ガン性や免疫毒性を引き起こす。カビ毒の健康被害を防止するためには、食品からのカビ毒摂取量を最小限に抑えることが重要であるが、そのためには適切な基準値設定が求められる。我々のおこなった基準値設定に必要な科学的根拠に関する研究を、特にトリコテセン系カビ毒を中心にまとめた。毒性関係では、トリコテセン系カビ毒(DON, NIV, DAS, T-2トキシン, FX)の摂取の、サルモネラ等の感染性細菌および大腸菌等の非感染性細菌への感染抵抗性に対する影響を明らかにした。また、NIVの90日反復投与試験結果から、新たな毒性を明らかにした。2002年に小麦のDONの暫定基準値が設定されたが、その根拠とともに、分析法のバリデーションのための妥当性試験も行った。暴露評価で重要な位置を占める調理、食品加工中の減衰試験においては、従来の理化学分析法だけでなく、内在性の毒性を検知するバイオアッセイ法を確立し、総合的な暴露評価の方法を提示した。
  • -Heteroduplex panel analysis の確立とその応用-
    久米田 裕子
    2008 年 58 巻 1 号 p. 29-40
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/01
    ジャーナル フリー
    Aspergillus section Flaviの種は互いに類似した形態学的特徴を有するため、その鑑別は容易ではない。本研究の目的は、従来の形態学的な同定法に代わるAspergillus section Flaviの迅速簡便な遺伝学的同定法を確立することであった。標的遺伝子としてコピー数が多く比較的保存性が低いとされているrDNAのITS(internal transcribed spacer)領域を使用した。発癌遺伝子の点変異検出用に開発されたSSCP(single-stranded conformation polymorphism)法やHPA(heteroduplex panel analysis)法を、Aspergillus section Flaviの種の同定に応用することを検討し、開発した遺伝学的同定法を実際の野外調査に応用した。その結果、調査した全6島のサトウキビ畑の土壌には、アフラトキシンBとGを産生する新しい遺伝子タイプであるFP-1株が高頻度に分布することを発見した。FP-1株には、形態学的にA. flavusA. parasiticusに類似する株と、その中間の形態を有する株が混在したが、いずれもHPA法では同一の泳動パターンを示した。ITS領域の塩基配列に基づいて作成した系統樹で、FP-1株は両菌種の間に独立して分枝した。FP-1株はベトナムのサトウキビ畑からも分離された。1930年にエジプトのサトウキビに寄生した虫から分離された株(A. flavus var. flavusとしてCBSに登録されている)もHPA 法によりFP-1と同定された。保存菌株で、世界各国の種々の試料から分離されたA. parasiticusおよびA. flavusにはサトウキビ関連以外のFP-1株は存在しなかった。これらの事実は、FP-1株がサトウキビ畑の環境に高い適応性を持っていることを示唆している。また、沖縄県南西諸島のサトウキビ畑の土壌には、世界的にも分離例が少ないA. nomiusが高頻度に分布していることを発見した。これら両種の菌が、沖縄県産黒糖におけるアフラトキシン汚染の原因になっていると考えられた。
シンポジウム
  • -オーバービュー
    芳澤 宅實
    2008 年 58 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/01
    ジャーナル フリー
    室内空気汚染菌として注目されている Stachybotrys chartarumとそのマイコトキシンをめぐる以下の話題を概説した.1)米国で発生した特発性乳児肺出血(infant idiopathic pulmonary hemorrhage/hemosiderosis)と住環境のカビ汚染・マイコトキシンとの関連について、2)S. chartarumによる家畜中毒症(stachybotryotoxicosis)と原因物質satratoxinsの毒性について、3)毒キノコ「カエンタケ」(Podostroma cornu-damae)に含まれるsatratoxinsを原因とするヒト中毒の臨床症状について.
  • 亀井 克彦, 落合 恵理
    2008 年 58 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/01
    ジャーナル フリー
    屋内環境中には多種多様な真菌が生息している。これらの真菌の多くはマイコトキシンを産生するが、マイコトキシンとヒト疾患との関連性については未解明の点が多い。例外としては、近年、Aspergillus fumigatus によって産生されるグリオトキシンがアスペルギルス症の発症に関与していることが明らかにされた例がある。Stachybotrys chartarum は住環境内でも見受けられるほど広範に分布する真菌である。この真菌の吸入によって乳児特発性肺出血が惹起される可能性が報告されているが、その詳細は未だ明らかになってはいない。S. chartarum はトリコテセンのような種々の二次代謝産物を産生することから、我々は本菌の反復吸入がヒトの肺に何らかの影響を与えるものと考えた。S. chartarum を長期間吸入することによる影響を明らかにするために、我々は2週間に3回の頻度で本菌の胞子をマウスに経気管的に反復投与した。その結果、病理組織学的検討によってマウスで肺高血圧が惹起されることが明らかになった。これらのマウスでは肺動脈壁が肥厚し、内腔の狭窄や閉塞が生じていた。さらに、右室圧の上昇も確認された。トリコテセン産生の有無が異なるS. chartarum の株を用いた検討では、トリコテセン産生株を投与した場合で肺高血圧が惹起され、肺動脈病変の形成にはトリコテセンが関与する可能性が示唆された。このことについては今後更なる検討を行う必要がある。
  • Zahidul ISLAM, Jack R. HARKEMA, James J. PESTKA
    2008 年 58 巻 1 号 p. 53-60
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/01
    ジャーナル フリー
    Trichothecenes are a family of over 200 sesquiterpenoid mycotoxins produced by Fusarium, Stachybotrys, Myrothecium and other molds. Satratoxin G (SG) is a macrocyclic trichothecene mycotoxins produced by Stachybotrys chartarum, the "black mold" reported to illnesses associated with water-damaged buildings. We found that single instillation of macrocyclic trichothecenes SG or Roridin A (RA) exposure in C57Bl/6 female mice specifically targeted olfactory sensory neurons (OSNs) in the olfactory epithelium in the mouse nose. The OSN death was verified by imuunohistochemial staining of activated caspase-3, electronmicroscopic analysis, Real Time PCR method for the expression of pro-apoptotic genes. The results suggested that SG-induced OSN death was via apoptosis. The death of OSN caused the atrophy of the olfactory epithelium. The maximum atrophy of the epithelium was observed at 3 days after single instillation of SG (500 μg/kg bw). After 7 days postinstillation (PI), the thickness of the olfactory epithelium recovered partially with the recruitment of fresh OSNs in the epithelium. When the mice are instilled with lower doses of SG (100 μg/kg bw) for 5 consecutive days it also induces same degree of atrophy and apoptosis, suggesting that these effects are cumulative. SG also induced an influx of mucosubstances filled with neutrophils (neutrophilic rhinitis) in the airways at 24 hr PI. Proinflammatory cytokines and the chemokine genes were upregulated at 24 hr PI in both the ethmoid turbinates of the nasal airways and the adjacent olfactory bulb of the brain. Marked atrophy of the olfactory nerve and glomerular layers of the olfactory bulb was also detectable by 7 days PI along with mild neutrophilic encephalitis.
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