マイコトキシン
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60 巻, 1 号
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原著
第66回学術講演会要約
受賞講演
  • 熊谷  進
    原稿種別: 第66回学術講演会要約
    2010 年 60 巻 1 号 p. 7-16
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    ラットを用いたアフラトキシンB1(AFB1)の生体内挙動に関する研究によって,AFB1の主な吸収部位が小腸であること,とくに十二指腸から効率よく吸収され,腸間膜静脈へ移行することが明らかにされた.移行中にアフラトキシコール(AFL)に変換されるが,これは血球による代謝を反映したものであった.各種動物の肝臓ミクロゾームのAFB1-DNA結合活性(AFB1-エポキシド生成活性)を比較検討した結果,この活性は,AFB1の毒性に対する感受性の動物種差との間に一定の関係をもたなかった.肝臓サイトゾールのアルデヒドリダクターゼ活性の動物種差も,AFB1毒性に対する動物種差とは対応していなかった.しかし,肝臓サイトゾールのグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)活性が強いほど,AFB1毒性に対する感受性が低いという関係が認められたことから,このGST活性の相違がAFB1毒性に対する動物種差を招来することが示唆された.
特別講演
  • 徳増 征二
    原稿種別: 第66回学術講演会要約
    2010 年 60 巻 1 号 p. 17-25
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    腐生性の微小菌類の広域的な分布に地球温暖化が及ぼす影響について考察した.菌類の地理的分布の研究は微生物であることに加え菌類独特の障害によって大形生物に比べて大きく立ち遅れている.この状態を打破するための調査およびデータ解析法を提案した.その方法によりマツ落葉生息菌種の本邦のマツ林における地理的分布を調査し,年平均気温との関係を解析した結果,大形の動植物と同様,最適温度域を持ち正規分布あるいは釣鐘型の曲線で表せる分布パターンを示した.すなわち,温暖化の進行により最適温度域が北上するのに伴い菌類も北上することが分かった.この移動により生じると推定される生物群集の混乱についても考察した.
シンポジウム
  • 滝埜 昌彦
    原稿種別: 第66回学術講演会要約
    2010 年 60 巻 1 号 p. 27-36
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    Stachbotrys 属の大環状トリコテセン類を含む二次代謝産物の産生能を把握する目的でLC/MS-MS によるサトラトキシンG,サトラトキシンH,イソサトラトキシンF 及びロリジンL2 の分析法及びLC/TOF-MS によるStachbotrys 属が産生する二次代謝産物のスクリーニング手法を開発しStachbotrys 属の37 胞子及び9 菌糸の測定を行った.その結果,4 種類マイコトキシンに関しては胞子9 検体, 菌糸2 検体から検出され濃度は胞子中0.2 ~ 332.9ng/106,菌糸抽出液中3 ~ 784 ng/mL であった.LC/TOF-MS によるスクリーニングにおいては11 種の大環状トリコテセン類のマイコトキシン及びアトラノン類,ドラベラン類,スタキボトリラクタム類及びスタキボシン類の存在が推定された.また多変量解析手法を用いることで菌体の溶血性の有無に関して32 種類の特徴的な代謝物が抽出されその強度は溶血性を示す菌体で強度が非常に類似していた.
  • 清水 公徳
    原稿種別: 第66回学術講演会要約
    2010 年 60 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    酵母から人に至る真核生物では,DNA 二本鎖の損傷は非相同組換え(NHEJ)または相同組換え(HR)により修復される.遺伝子操作による外来遺伝子の導入は,これらの遺伝子修復機能を利用したものである.2004 年,アカパンカビNeurospora crassa において,NHEJを担当するタンパク質をコードする遺伝子を不活化することにより,高効率にHR を引き起こさせる技術が確立された.ヒト病原性酵母Cryptococcus neoformans では,NHEJ によるランダムな組み込みが頻発するため,HR による遺伝子操作が相対的に低頻度でしか起こらず,目的の遺伝子型を持つ組換え体を取得するために数多くの形質転換体をスクリーニングする必要があった.そこで,NHEJ によるDNA 修復の最終ステップに関与するDNA リガーゼIV,またはDNA 切断部分を認識するKU タンパク質をコードする遺伝子群を破壊した株を作出した.これらの破壊株では生育性状や病原性の変化は認められなかったが,いくつかの遺伝子座におけるHR 効率が上昇していることが認められた.
  • 山口 正視
    原稿種別: 第66回学術講演会要約
    2010 年 60 巻 1 号 p. 43-51
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    細胞の微細形態は,電子顕微鏡観察をはじめとした,これまでの多くの研究によって明らかにされ,すべてが解明されているかのような印象がもたれている.しかし,細胞あたりのリボソームの数や,小胞体の数や細胞内分布など,細胞構造の定量的,三次元的側面は未知の部分が多かった.私は,structure と-ome を組み合わせて,「ストラクトーム」という新語を造り,電子顕微鏡レベルにおける細胞の定量的,三次元的全構造情報を意味する新しい概念として提唱した.本稿では,酵母エキソフィアラ・デルマチチジスを材料として,凍結置換法と連続超薄切片法によりストラクトーム解析を行い,1個の細胞にリボソームは約20 万個存在すること,ミトコンドリアは17 ~ 52 個存在し,体積の10 パーセントを占めること,小胞体は5 ~ 10 個存在し,体積はわずか0.2 パーセントを占めるにすぎないことなどを明らかにした.
緊急セミナー
  • 小西 良子
    原稿種別: 第66回学術講演会要約
    2010 年 60 巻 1 号 p. 53-55
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    近年国際的にカビ毒のリスク評価が行われるようになり,昨年コーデックス委員会では木の実の総アフラトキシンを対象に新しい基準値が設定された.我が国でも平成21 年3 月に,食品安全委員会から「食品中の総アフラトキシンの食品健康影響評価」が出された.これを受けて我が国におけるカビ毒基準値への動向を紹介する.
  • 中島 正博
    原稿種別: 第66回学術講演会要約
    2010 年 60 巻 1 号 p. 57-60
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    我が国においては食品からアフラトキシンB1 が検出されてはならない(昭和46 年3 月16 日付環食128 号)とされているが,コーデックス委員会やEU 等の国際機関や諸外国では,落花生,木の実や種々の食品に対してトータルアフラトキシン(アフラトキシンB1,B2,G1,G2 の合計)の規制を行っている.これを受け我が国でも,落花生および木の実(ピスタチオ,ヘーゼルナッツ,アーモンド)におけるトータルアフラトキシン基準値策定についての取り組みが現在なされており,トータルアフラトキシン試験法の設定が必要となってきた.そこで,カビ毒試験法評価委員会では,トータルアフラトキシン試験法についての複数機関共同試験を行い,試験法の妥当性確認を行った.その結果,定量法として,アセトニトリル- 水抽出-多機能カラム精製/HPLC 蛍光検出法およびメタノール- 水抽出-イムノアフィニティーカラム精製/HPLC 蛍光検出法の試験法についての妥当性が確認された.カビ毒試験法評価委員会は,これら2 つの試験法を基にしたトータルアフラトキシン試験法(案)を作成したので報告する.
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