マイコトキシン
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68 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
Part I (Papers in English)
Award Review
  • 前田 一行
    2018 年 68 巻 2 号 p. 77-82
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2018/09/01
    [早期公開] 公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー

     トリコテセン系かび毒による穀類の汚染や検出漏れリスクの軽減を目指して,トリコテセン類に多様な側鎖修飾をもたらす遺伝的な背景を明らかにするとともに,トリコテセン生産を抑制する化合物の探索と作用機作の解明を試みた.トリコテセン生合成遺伝子の分子遺伝学的な解析により,Fusarium graminearumのトリコテセンC-4水酸化酵素をコードするFgTri13遺伝子はC-7/C-8水酸化酵素をコードするFgTri1と共進化してきたことが明らかになった.その結果,FgTRI13pの基質特異性はF. sporotrichioidesのFsTRI13pと比べて厳密になり,ニバレノール生合成の効率化に貢献していた.また理化学研究所天然化合物バンク所蔵の化合物ライブラリーの中から,トリコテセン生産を抑制する化合物としてグルタミンの類縁体であるアシビシンを選抜した.アシビシンはトリコテセン生産時の細胞内で栄養飢餓を引き起こすことで,トリコテセン主要制御因子をコードするFgTri6の発現を抑制していると考えられた.さらにトリコジエンシンターゼ(FgTRI5p)を標的タンパク質として用いた化合物アレイにより,NPD352を同定した.NPD352はFgTRI5pの混合型阻害剤であり,トリコテセン生産条件下において細胞内のFgTRI5pに直接的に結合することで機能を阻害していると考えられた.

Corrigendum
パート II(日本語論文)
プロシーディング
  • 萩原 大祐
    2018 年 68 巻 2 号 p. 89-92
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2018/09/01
    [早期公開] 公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー

     近年のゲノム解析の進展により,糸状菌は多数のそして多様な二次代謝関連遺伝子を保有することが明らかになった.これらの遺伝子のほとんどは未解析であり,創薬リード化合物の探索源として魅力的な資源として注目を集めている.ゲノム情報が提供されることにより,遺伝子ベースの化合物探索や構造多様性創出が,これまでの化合物ベースの探索にとって代わるパラダイムシフトを引き起こしている.筆者らの研究も,網羅的遺伝子発現解析を頼りにしたアクティブな二次代謝遺伝子クラスターの同定や,近縁種間の比較ゲノム解析から二次代謝遺伝子の普遍性と多様性を明らかにすることを目指している.

  • 須賀 晴久
    2018 年 68 巻 2 号 p. 93-97
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル フリー

     Fusarium fujikuroiはイネばか苗病の原因糸状菌である.本菌が産生する二次代謝産物には植物ホルモン作用を有するジベレリンやカビ毒のフモニシンが知られている.ばか苗病に罹病したイネだけでなく,様々な分離源から得られたF. fujikuroiについて分子系統解析及び,ジベレリンとフモニシンの産生能を調査したところ,F. fujikuroiに性質が異なる二つのグループが見出だされた.ここではそれらのグループ間のジベレリン産生能の違いとその要因を紹介する.

  • 島田 浩章
    2018 年 68 巻 2 号 p. 99-104
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2018/09/01
    [早期公開] 公開日: 2018/05/18
    ジャーナル フリー

     現在の農業で栽培されている作物はさまざまな品種改良を受けている.品種改良は,良さそうな形質をもつ植物を交配し,その子孫の中から求める形質を集積した個体を選ぶ交配育種や,放射線や薬剤を利用して人為的な突然変異を誘発し,生じた変異体から有用なものを選ぶ変異体育種が広く行われている.近年は,組換えDNA技術を用いて新たな形質を導入した作物が開発され,広く流通している.ゲノム編集は2010年頃に開発され,CRISPR/Cas9などの特定の配列を認識して切断する人工ヌクレアーゼを用いて特定の遺伝子に変異を導入する技術である.これにより狙った遺伝子の変異体が得られる.われわれは翻訳エンハンサーであるdMac3を利用した植物用に最適化したゲノム編集システムを開発した.ジャガイモは4倍体ゲノムを有する.塊茎のデンプン中のアミロースの産生に関わる顆粒結合型デンプン合成酵素遺伝子(GBSS)を標的とするCRISPR/Cas9遺伝子を利用することで,4つの対立遺伝子のすべてに変異が導入された変異体が得られた.変異体ジャガイモの塊茎に含まれるデンプンは低アミロースの形質を有することが分かった.

学会参加報告
  • 中川 博之
    2018 年 68 巻 2 号 p. 105-110
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル フリー

     2018年2月14日,15日の2日間,バンコク(タイ王国)・カセサート大学にてカビ毒国際会議International Conference of Mycotoxicology(ICM 2018)が「Driving Mycotoxin Research toward Global Food Security(グローバルな食品安全へ向けてのカビ毒研究の推進)」のテーマの下,開催された.主催者であるタイ王国カビ毒学会(Association of Mycotoxicology,Thailand(AMT))の会長(Amnart Poapolathep氏)より,筆者が招待講演を依頼され,「LC-MSによるフザリウム属菌産生カビ毒の分析」について講演を行った.本会議には世界各国のカビ毒研究者を含む約230人が参加し,18件の口頭発表と13件のポスター発表が行われた.その概要を報告する.

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