2021年9月8日~10日に,日本マイコトキシン学会(JSM)とタイ国マイコトキシン学会(AMT)は,かび毒に関する国際会議ISMYCO 2021 & ICM 2021を共同開催いたします.
この短い記事では,国際会議の共同開催に至るJSMとAMT間の連携について振り返ります.
本研究では,つくばの実験圃場中の菌を,改良ジクロルボス-アンモニア(DV-AM)法を用いてスクリーニングし,手法の適用性を検証することを目的とする.DV-AM法は,目視の赤(陽性)白(陰性)判定によるアフラトキシン(AF)産生菌コロニーの検出法であり,培地組成の改良により高感度の検出が可能となっている.7月(立毛の植物体が有る時期)に実験圃場土壌を採取し,本法によるスクリーニングを行った結果,20地点から採取した土壌のうち3点から計4株の陽性株が分離された.この4株についてTLCおよびHPLCを用いてAF産生性を分析したところ,4株すべてでAF産生が確認できた.そのうちの2株について,カルモジュリン遺伝子領域の配列解析および顕微鏡観察を行ったところ,どちらもAspergillus flavusとして同定されたが,培地上に形成されたコロニーの形態学的特徴が違ったほかAF産生能にも差が有り,異なる系統であると考えられた.以上より,改良DV-AM法はAF産生型のA. flavusの分離への適用性が確認され,また,同一圃場において系統の異なるA. flavusが存在しうることが示された.
赤かび病菌(Fusarium graminearum等)が,コムギやオオムギ等に感染すると,本菌が産生するトリコテセン系かび毒が穀物に混入し,ヒトや家畜に健康被害を及ぼす.赤かび病に強い抵抗性を示す栽培品種が開発されてないことから,開花期のムギの穂に殺菌性農薬を複数回散布することで防除している現状であり,残留農薬の問題に加えて,耐性菌の出現も報告されている.これらの状況を踏まえて,我々は天然物を活用して,赤かび病を防除し,かび毒汚染を低減化し得る防除技術の開発を進めている.オオムギの赤かび病抵抗性品種におけるメタボローム解析から,ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)の前駆体であるニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)が,抵抗性・低かび毒品種で有意に蓄積していることを明らかにした.NMNは抵抗性誘導剤として機能し,オオムギやコムギに投与すると,赤かび病による病徴とかび毒蓄積が共に有意に抑制されることを明らかにした.一方,赤かび病菌のかび毒産生機構の解析から,アミノ酸であるL-Thrが赤かび病菌におけるトリコテセン系かび毒の産生を抑制することを見出している.これらの天然物を活用した赤かび病防除及びかび毒低減化技術の開発に向けた取り組みについて紹介する.
農薬は農作物等の生産性向上と過重労働の低減などを目的に開発・使用される.菌類により発症する植物病害防除と併せ,マイコトキシンの低減効果が高い農薬の開発が進むなど,農薬はカビ毒汚染を抑制する有用な資材のひとつとなっている.
食品に残留した農薬は,食品衛生法に基づき残留基準が設けられて厳しく規制される.法に則り監視・指導され,違反品の廃棄,違反者への懲役または罰金が課せられる.本残留基準は昭和43年に設定されて以来順次拡大され,平成18年にはポジティブリスト制度が導入され,すべての食品に対してすべての農薬が規制対象となった.その後も,新規開発や適用拡大,インポートトレランス,安全性評価見直し等により,逐次,基準値の追加,改正,削除が進められている.