日本内科学会雑誌
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100 巻, 10 号
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内科学会NEWS
特集 膠原病・リウマチ性疾患の治療の現状と展望
Editorial
トピックス
I.ステロイド・非ステロイド抗炎症薬
II.免疫抑制薬・抗リウマチ薬
  • 鈴木 康夫, 知念 直史
    2011 年 100 巻 10 号 p. 2902-2909
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    メトトレキサート(MTX)は葉酸代謝を阻害することにより核酸・蛋白合成を抑制する免疫抑制薬である.関節リウマチ(RA)治療においては,第1選択薬でありanchor drugと位置付けられている.2011年2月に公知申請が承認され,週16mgまでの増量が可能となったことを契機に,日本リウマチ学会はMTX診療ガイドラインを策定し,MTXの適正な使用法を示した.RA以外でも全身性エリテマトーデス(SLE),炎症性筋疾患,血管炎症候群や成人Still病など様々なリウマチ性疾患の難治性病態の治療に適応外薬として使用されている.
  • 川合 眞一
    2011 年 100 巻 10 号 p. 2910-2917
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    関節リウマチ治療は生物学的製剤の登場などもあり,臨床的寛解のみならず機能的・構造的寛解をも目指すことが可能となった.しかし,その目標は生物学的製剤のみで達成できるものではなく,低分子抗リウマチ薬による治療が不可欠といえる.サラゾスルファピリジンは世界で広く使用され,わが国でもメトトレキサートに次いで使用されている.ここでは,本薬の作用機序,臨床的有用性をまとめ,本剤の位置付けについても考察したい.
  • 亀田 秀人
    2011 年 100 巻 10 号 p. 2918-2923
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    シクロホスファミドは,アルキル基ラジカルを核酸のグアニジン残基に転移することでDNAを架橋する細胞傷害性の免疫抑制薬であり,膠原病領域での主な作用はB細胞の抑制である.血管炎,ループス腎炎,間質性肺炎などの難治性病態の寛解導入に際して,期間限定的に用いられる.非経口・経口を問わずパルス療法が主体になりつつあるが,さらなる副作用対策の充実が,遅延なき投与開始の普及には欠かせない.
  • 松本 功
    2011 年 100 巻 10 号 p. 2924-2928
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    膠原病・リウマチ性疾患に対する免疫抑制薬において,アザチオプリン(azathioprine:AZA)は高い臨床効果が証明されている.アザチオプリンはどちらかというと寛解維持療法やsteroid-sparing effectを目的として使用されることが多く,2010年10月に医薬品部会での公知申請の事前評価が終了し,今後追加される予定の効能・効果及び用法・用量についての保険適応が可能になった.膠原病・リウマチ性疾患に対して長期にわたる使用経験がある薬剤であり,有効性と安全性も高い薬剤で,今後も免疫抑制薬として重要な1剤であると考えられる.
  • 沢田 哲治
    2011 年 100 巻 10 号 p. 2929-2935
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    レフルノミドはde novoピリミジン合成経路のdihydroorotate dehydrogenaseを分子標的とする抗リウマチ薬である.関節リウマチにおける有効性は確立しているが,薬剤性肺障害によりわが国での使用は限定的である.ミゾリビンはグアノシンヌクレオチドのde novo合成経路のinosine 5-monophosphate dehydrogenaseを特異的に阻害し,細胞内GTPプールを枯渇させることで免疫抑制効果を発揮する.通常の分割投与では有効性が十分でないことがあり,単回投与やパルス療法など最高血中濃度を高める試みがなされている.
  • 伊藤 聡
    2011 年 100 巻 10 号 p. 2936-2941
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    ブシラミン(BUC)は,わが国の治療ガイドラインでAランクに位置づけられ,RA治療の第一選択薬として有用である.メトトレキサート(MTX)の使用法の改定により今後の動向は変化するだろうが,BUCはMTXとの併用で優れた効果を示すため,抗リウマチ薬として依然重要な位置を占めるであろう.金製剤はガイドラインBランクの薬剤であるが,ヨーロッパではMTXが使用できない場合に,注射用金剤が推奨されている.
  • 山路 健
    2011 年 100 巻 10 号 p. 2942-2947
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    シクロスポリンはカルシニューリンの脱リン酸化酵素活性阻害を介してT細胞の抗原特異的活性化を抑制する薬品でありタクロリムスと同じカルシニューリン阻害薬に属する.膠原病・リウマチ性疾患の難治性病態に広く臨床応用されてきたが,本邦では保険適応となっている対象疾患は少ない.多くの免疫抑制薬が開発され臨床応用された今,この薬剤の特徴を理解することが適応拡大の可能性を広げる.
  • 川畑 仁人
    2011 年 100 巻 10 号 p. 2948-2953
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    タクロリムスは1984年にわが国で発見された強力な免疫抑制剤であり,移植領域にて長く使用されている薬剤だが,関節リウマチや重症筋無力症,ループス腎炎に対しても適応が拡大されている.タクロリムスは,関節リウマチに対してはメトトレキサートの効果不十分例や使用困難例,生物学的製剤の使用困難例における単剤もしくは併用薬として有用な薬剤と考えられるが,使用に際しては他剤との相互作用,感染症,腎機能障害,消化器症状,耐糖能異常などの副作用に注意が必要である.
  • 河野 通仁, 渥美 達也
    2011 年 100 巻 10 号 p. 2954-2959
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    ミコフェノール酸モフェチル(mycophenolate mofetil:MMF)は臓器移植後の拒絶反応に対し優れた治療効果を示してきた.そして近年,自己免疫疾患への治療応用が進んでいる.MMFはループス腎炎の寛解導入療法,寛解維持療法いずれにおいても複数のランダム化試験で有効性が報告されている.しかしMMFの長期的な有効性,安全性などは不明であり,今後更なる検討が必要である.
  • 横川 直人
    2011 年 100 巻 10 号 p. 2960-2965
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    ヒドロキシクロロキンは,半世紀以上前に初めて承認されて以降,日本を除く全世界70カ国以上で皮膚エリテマトーデス,全身性エリテマトーデス,関節リウマチの治療薬として承認され,世界的な標準的治療薬として,教科書や欧米のガイドラインには必ず記載されている.日本では過去に抗マラリア薬は存在したが,適切な使用方法が周知されなかったことによるクロロキン網膜症の懸念より昭和49年より一剤もなくなり,ヒドロキシクロロキンは開発されることはなかった.日本にSLEの標準的治療薬がないことに危惧した著者らは,2009年に日本ヒドロキシクロロキン研究会を結成し,未承認薬の開発要望書を提出した.その結果,2010年11月の未承認薬・適応外薬検討会議において,本剤の医療上の必要性が正式に認められ,製薬企業に対して開発要請が出された.2012年より,産官学の協力により全身性エリテマトーデスおよび皮膚エリテマトーデスの患者を対象に製薬企業による本薬の開発治験が行われる.稀だが重篤な副作用である網膜症を生じさせないためにも,本治験後の国内承認を待ち,本剤の個人輸入は控えることが肝要である.
III.生物学的製剤
  • 天野 宏一
    2011 年 100 巻 10 号 p. 2966-2971
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    RAの病態(炎症性病変形成,骨破壊)にTNFは重要な役割を演じている.現在TNF阻害薬として,インフリキシマブ,エタネルセプト,アダリムマブ,ゴリムマブおよびセルトリズマブの5剤が開発され,いずれも大規模試験でRAに対する臨床効果と骨破壊抑制効果のエビデンスが確立されている.さらにこれら薬剤中止後も寛解を維持できる可能性が指摘されており,RAの治癒に向けた最有力治療戦略として期待される.
  • 中島 亜矢子
    2011 年 100 巻 10 号 p. 2972-2978
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    わが国で開発され,世界に先駆けてIL-6阻害薬トシリズマブ(アクテムラ®)が実臨床で関節リウマチに使用されてから3年を経過した.7,900例近くが登録された市販後全例調査が解析中であるが,実臨床においてもトシリズマブの有効性や骨破壊の進行抑制効果を示した結果が集積されつつある.トシリズマブは関節リウマチ以外にCastleman病や若年性特発性関節炎治療にも光明をもたらした.今後は他疾患への有用性の検討や皮下注製剤などの利便性の向上により,膠原病・リウマチ性疾患の難治性病態における治療のあらたな発展が望まれる.
  • 上阪 等
    2011 年 100 巻 10 号 p. 2979-2984
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    T細胞上の補助刺激分子CD28と抗原提示細胞上のCD80,86との相互作用遮断を目的としたCTLA4-Igは,T細胞活性化を阻止する生物学的製剤である.マウス免疫学によれば,CTLA4-Igは一旦活性化したT細胞の制御には無効でるが,ヒトでは効果がある.実際,CTLA4-Igの市販薬であるアバタセプトは関節リウマチ治療に有効である.しかも,効果発現や副作用の面で他の製剤とは異なったプロファイルをもっている.
  • 山崎 聡士, 川上 純
    2011 年 100 巻 10 号 p. 2985-2990
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    インターロイキン-1(IL-1)は重要な炎症性サイトカインであり,その病態生理の解明に伴い,IL-1阻害薬のコンセプトが確立してきた.当初,関節リウマチでの応用が期待されたが,TNF阻害薬ほど劇的な効果は得られなかった.しかし,クリオピリン関連周期性発熱症候群をはじめとする他疾患におけるIL-1の重要性が次々に明らかとなり,IL-1阻害薬の可能性は新たな展開を見せている.
  • 齋藤 和義, 田中 良哉
    2011 年 100 巻 10 号 p. 2991-2997
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    膠原病リウマチ性疾患の自己免疫疾患病態形成におけるB細胞は,抗原提示のstimulator,並びに,自己抗体産生のresponderとして中心的な役割を担うことが解明され,B細胞表面抗原は,自己免疫制御の明確な標的となった.B細胞上のCD20,22抗原に対する抗体やT-B細胞間相互活性化に関与する表面分子に対する生物学的製剤が開発され,既存治療抵抗性症例に対する新たな治療戦略として期待されている.
座談会
MCQ
今月の症例
医学と医療の最前線
  • 住田 孝之
    2011 年 100 巻 10 号 p. 3055-3063
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    Sjögren症候群(シェーグレン症候群:SS)はドライアイ,ドライマウスを主症状とする全身疾患である.抗SS-A抗体,抗SS-B抗体,リウマトイド因子,抗核抗体などの自己抗体が血清中に検出されること,唾液腺・涙腺などの諸臓器に自己反応性T細胞浸潤が認められることから,病因として自己免疫応答が考えられている.最近,唾液分泌に重要な受容体であるムスカリン作働性アセチルコリン受容体(M3R)に対する自己抗体やT細胞の存在がSSにおいて明らかにされてきた.さらに,M3Rに対する免疫応答によりSS類似の自己免疫性唾液腺炎が発症することがマウスモデルで証明され,SS発症の分子機構の一部が解明されてきた.治療では,QOLを高めるM3Rアゴニスト薬などの進歩,生命予後を改善する生物学的製剤の登場,治験報告などがなされてきた.
  • 堀之内 秀仁, 関根 郁夫
    2011 年 100 巻 10 号 p. 3064-3071
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    肺がんの罹患率,死亡率には人種,性別による違いがあることが古くから指摘され,能動喫煙や受動喫煙を中心とした環境要因がその差異の大きな要因となっていることが明らかにされてきた.一方,近年,宿主である患者側の要因や,がんの生物学的特徴についての研究が成果を挙げ,注目を集めている.分子標的薬であるゲフィチニブやエルロチニブの有効性には人種差や性差があり,その背景にはEGFRの遺伝子変異頻度の違いが存在することが明らかにされた.イリノテカンの代謝に関わるUGT1A1の遺伝子多型,フッ化ピリミジン系抗がん剤の代謝に関わるDPDの遺伝子多型が明らかにされ,それぞれ人種により頻度が異なることも示されている.これらの知見により,人種差や性差による治療効果,副作用の違いについて理解が深まるだけでなく,適切な対象者を選んだ治療や,副作用の頻度を抑えた治療が可能となり,肺がんの新たな治療戦略が生み出されている.
  • 松本 哲哉
    2011 年 100 巻 10 号 p. 3072-3078
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    耐性菌をとりまく状況は時代とともに変化している.多剤耐性アシネトバクターによる院内感染例や,NDM-1産生菌およびKPC産生菌など国内初の報告例が注目を集めた.これらの多剤耐性菌はコリスチンやチゲサイクリンなどの抗菌薬のみが有効である.また耐性菌は国や地域によっても広がりに大きな差があり,MRSAを除く耐性菌は諸外国,特にアジア各国を中心に拡大傾向にあり深刻な状況となっている.さらに赤痢菌やコレラ菌など強毒菌においても多剤耐性菌が報告されており,今後の拡大が危惧される.多剤耐性菌は何の症状も示さない保菌者も存在し,細菌検査を実施しなければその存在は確認できない.また,耐性菌が院内で伝播すると,院内感染として医療機関は徹底した対策が求められ,大きな犠牲を払わなければならなくなる.耐性菌に対する対策として抗菌薬の適正使用や感染予防策の徹底が重要であり,地道に対策を継続していく必要がある.
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