日本内科学会雑誌
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100 巻, 6 号
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内科学会NEWS
特集 急性肺損傷/急性呼吸窮迫症候群(ALI/ARDS):診断と治療の進歩
Editorial
I.病因と病態
  • 長田 大雅, 森崎 浩, 武田 純三
    2011 年 100 巻 6 号 p. 1518-1521
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    急性肺損傷/急性呼吸窮迫症候群は,基礎疾患に伴う主に炎症を契機とした血管透過性亢進型肺水腫でび漫性肺胞傷害を特徴とする.1994年アメリカ・ヨーロッパ合同会議が提唱した急性発症,両側性,低酸素血症,非心原性の4項目からなる診断基準が,その簡便性と高い感度から現在でも広く用いられている.しかし,炎症の有無が基準にないうえ,類似病態との鑑別が困難などの問題点があり,再検討が求められている.
  • 石井 芳樹
    2011 年 100 巻 6 号 p. 1522-1528
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    ALI/ARDSの基礎疾患は,多彩であり,肺炎など肺の直接損傷による場合と敗血症など間接損傷による場合がある.原因によって予後は異なり,敗血症に伴う場合は,多臓器不全を呈しやすく,死亡率が高い.診断基準が明確でないため発症率を正確に把握しがたいが,決して稀な病態ではない.死亡率も依然として高く,診断および治療における更なる取り組みが必要である.
  • 田坂 定智
    2011 年 100 巻 6 号 p. 1529-1535
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    ALI/ARDSは,肺内に集積した好中球から放出される活性酸素や蛋白分解酵素などにより血管内皮の透過性が亢進することで生じる非心原性肺水腫である.ALI/ARDSの病態形成にはサイトカインや脂質メディエーター,凝固因子など数多くの分子が関与している.ALI/ARDSではシャント形成や拡散障害のため重篤な低酸素血症が生じるほか,肺コンプライアンスの低下,肺血管抵抗の上昇などの生理学的変化がみられる.
  • 福田 悠
    2011 年 100 巻 6 号 p. 1536-1540
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    ARDSの病態を示す肺の病理像の主体は,びまん性肺胞傷害(DAD)であるとされている.DADは,ある原因により一斉蜂起的に発症し,時間経過により浸出期,増殖期(器質化期),線維化期と進展する.浸出期の特徴はI型肺胞上皮細胞の傷害と硝子膜形成である.発症1週間以降の増殖期では,肺胞に筋線維芽細胞の増殖が起こる.3週間以降には,膠原線維の沈着が顕著となる線維化期に至る.ARDSに多臓器不全症候群(MODS)の合併が多い症例は感染症や熱傷によるものなどであり,肺血管内血栓形成も顕著である.合併の少ないのは薬剤性肺障害によるものなどである.この両群には,病態と病理形態像にも差があることが次第に明らかとなっている.
II.診断と検査
III.治療
  • 小谷 透
    2011 年 100 巻 6 号 p. 1568-1574
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    ALI/ARDSに対する人工呼吸では,低酸素血症への対応と同時に,人工呼吸器関連肺傷害(VALI)を発症させないよう留意する.VALIは過剰な換気設定により生じ,その防止においては,1回換気量,プラトー圧,PEEP管理が重要ではあるが,不均一性の高いARDS肺では,実際に肺内ガス分布を確認しなければ安全は保証されない.陽圧換気の基本と欠点を十分理解し,一元的管理のもとに施行すべきである.
  • 長谷川 直樹
    2011 年 100 巻 6 号 p. 1575-1581
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    ALI/ARDSは肺における過剰な炎症反応(免疫反応)と考えられ,抗炎症薬作用を有する薬剤が臨床試験されてきたが,死亡率の改善は得られていない.しかし失敗の積み重ねにより病態の解明が進み,症候群としての診断基準の限界が指摘されている.また,予後や重要度に関するバイオマーカーの利用や死亡率以外の評価項目の適用,観察研究に基づく解析,などを利用して薬物療法の効果を期待できる症例を前向き,後向きに選択する研究も注目されている.
  • 阪口 雅洋, 志馬 伸朗, 橋本 悟
    2011 年 100 巻 6 号 p. 1582-1589
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    ALI/ARDSは肺炎や敗血症などを原因もしくは随伴症として合併しあうことがあるため,それらに対する治療も必要となる.重症敗血症に対しては,早期目標指向療法(early goal directed therapy:EGDT)プロトコールに沿った輸液蘇生と広域抗菌薬による治療が中心となる.また人工呼吸管理中の緊張性気胸は致死的であり,画像診断前の迅速なドレナージが必要である.その他全身管理で予後に影響を及ぼしうるものとして,体液水分管理に加え,栄養管理や鎮静・鎮痛の管理などが重要である.
  • 小林 弘祐
    2011 年 100 巻 6 号 p. 1590-1598
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    ALI/ARDSの予後は改善してきており,その主因は肺保護的換気モードの周知による.現在,死因は呼吸不全ではなく,多臓器不全がほとんどである.ICU重症患者の予後予測法で普及しているのは,米国ではAPACHE IVであるが,本邦ではSOFAとAPACHE IIである.現在,ヨーロッパを中心にSAPS 3を用いた研究が進行中である.生物学的マーカーは複合した方が予後予測精度はよく,単独ではIL-8とSP-Dが比較的有用である.重症度スコアリングはベンチマークを通して医療の質向上に役立つ.
IV.最近の話題
座談会
MCQ
今月の症例
医学と医療の最前線
  • 川合 陽子
    2011 年 100 巻 6 号 p. 1660-1669
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    日本臨床検査医学会では,ガイドライン作成委員会が中心となり,包括医療の進む医療現場において,適正な臨床検査の使い方の指標となるようなガイドライン作成を目指して,「臨床検査のガイドライン~JSLM2009~」を2009年9月30日に刊行した.ここでは,皆様に幅広く,この臨床検査のガイドラインを知っていただくために,ガイドラインの趣旨と発刊の経緯とアンケート結果などを述べた.ご興味のある方は,日本臨床検査医学会ホームページを(http://www.jslm.org/)をご覧いただきたい.
  • 篁 俊成, 御簾 博文, 金子 周一
    2011 年 100 巻 6 号 p. 1670-1676
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    肝臓の脂肪化は肥満と独立してインスリン抵抗性と関連する.このことは日本人の糖尿病発症が肥満だけでは説明できず,軽度な肥満域から動脈硬化につながる代謝異常が増大することと関連する可能性がある.2型糖尿病に肥満症を伴った患者の肝臓では,解糖系,糖新生系,それらから派生するPentose phosphate cycle,中性脂肪合成系,脂肪酸合成・酸化系を構成する遺伝子群が協調的に発現亢進する.これらのプロファイルは糖・脂質由来の基質がミトコンドリアに流入することを示唆し,事実,ミトコンドリア酸化的リン酸化(OXPHOS)を構成する遺伝子群が活性酸素関連遺伝子群の発現とともに2型糖尿病患者,とりわけ肥満症を合併する患者の肝臓で,協調的に発現亢進する.2型糖尿病患者肝臓の包括的発現遺伝子解析から同定した新規ヘパトカイン「セレノプロテインP」は,抗酸化作用を有するにもかかわらず,一部にAMPキナーゼ活性の抑制を介して,全身のインスリン抵抗性を増大する.
  • 中神 啓徳, 森下 竜一
    2011 年 100 巻 6 号 p. 1677-1682
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    老化はかつては臓器別に進んできていると考えられてきたが,最近ではそれぞれが密接に関連しており,共通の老化基盤が存在するのではないかと考えられている.その有力な候補のひとつがレニン・アンジオテンシン(RA)系である.RA系阻害薬は骨粗鬆症あるいは認知症に対して予防・治療効果が期待できることが動物実験および臨床試験から明らかとなってきた.また,骨粗鬆症と血管石灰化の両方の病態に関与する分子基盤としてRANKL(receptor activator of nuclear factor kappa B(NFκB)ligand)システムが存在することも分かってきた.現代の高齢化社会において,加齢とともに急増する生活習慣病対策は大きな社会的課題であり,医療費の側面からも高血圧や糖尿病,それに加え骨粗鬆症や認知症に効果の期待できる薬剤はサクセスフルエイジングの観点からは第一選択と言えるであろう.
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