日本内科学会雑誌
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100 巻, 7 号
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内科学会NEWS
特集 リンパ系腫瘍:診断と治療の進歩
Editorial
トピックス
I.病因・病態―最新の知見―
  • 竹中 克斗, 赤司 浩一
    2011 年 100 巻 7 号 p. 1753-1764
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    急性リンパ性白血病(ALL)は,BまたはT/NK系統へ分化決定した段階のリンパ系前駆細胞での腫瘍化と考えられている.ALLでは,t(9;22),t(12;21),t(4;11),t(1;19)などの染色体異常が高頻度に認められ,特定の細胞系統や分化段階,予後と強い相関を示す.これらの染色体異常では,正常には存在しない融合遺伝子が形成され,白血化の最初のイベントと推測されている.近年のマルチカラーフローサイトメトリーによる細胞純化技術の進歩と,免疫不全マウスを用いたヒト腫瘍細胞アッセイシステムの開発により,多くのがんで少数の自己複製能をもったがん幹細胞の存在が証明されている.ALLにおいても,病型特異的にみられる染色体異常を指標として,免疫不全マウスを用いて白血病幹細胞の同定が試みられ,白血病の多様な細胞の構成モデルが解明されつつある.
  • 棟方 理, 飛内 賢正
    2011 年 100 巻 7 号 p. 1765-1772
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    悪性リンパ腫の病因として,ゲノム異常,ウイルス感染,慢性炎症と免疫不全の4つが重要である.近年,全ゲノム解析技術の進歩により新たなゲノム異常が次々と同定され,悪性リンパ腫の病態解明が進められつつある.分子病態の解明に伴い,それらを標的とした新たな分子標的治療薬の開発につながり,更なる治療成績の向上が期待されている.
  • 服部 豊
    2011 年 100 巻 7 号 p. 1773-1780
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    染色体やゲノムの解析により,多発性骨髄腫は多数の遺伝子異常の積み重ねにより発症し,それらの情報のいくつかは治療成績にも関連することが明らかとなってきた.さらに骨髄腫細胞は,骨髄内の微小環境において,骨髄腫瘍血管新生や,サイトカインや接着分子を介した間質細胞との相互作用により増殖や薬剤耐性能を獲得する.これら骨髄腫の病態に基づいた層別化は,治療法の選択にも重要と考えられる.
  • 塚崎 邦弘
    2011 年 100 巻 7 号 p. 1781-1786
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    いくつかのウイルスがリンパ腫の病因として同定されている.その病態にはウイルスによる細胞増殖機構に対する宿主の免疫応答のバランスの破綻が深くかかわっていることが多く,新たな治療法開発の標的となることが期待されている.いくつかのウイルスでは,発症予防法の開発が進んでいる.
II.リンパ系腫瘍の基本的事項
  • 中村 直哉
    2011 年 100 巻 7 号 p. 1787-1793
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    リンパ腫の分類は1994年のREAL分類から形態と免疫学的所見に遺伝子学的所見が加わり,2001年WHO第3版,2008年新WHO第4版と改訂を重ねた.第4版では90近い疾患単位の記載になった訳は,まれでも独立した疾患単位もしくは亜型として認知されたものと皮膚のリンパ腫が加わったためである.特定の遺伝子異常のほか,形態学的および免疫学的なマーカー,さらにその疾患に特有な臨床病理学的所見,病変の広がりと予後が重要視されている.
  • 伊豆津 宏二
    2011 年 100 巻 7 号 p. 1794-1800
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    悪性リンパ腫の発見,病期診断,治療効果判定,経過観察において画像検査は必要不可欠である.computed tomography(CT)が今でも最も頻用される画像検査であるが,18F-fluorodeoxyglucose(FDG)を核種として用いるpositron emission tomography(PET)の利用も一般的となってきた.PETは病期診断時に網羅的に病変を把握する際に有利であるだけでなく,治療終了時の残存腫瘤のviabilityの判断にも用いられている.
  • 谷脇 雅史
    2011 年 100 巻 7 号 p. 1801-1806
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    染色体・遺伝子異常は,リンパ系腫瘍の病型分類,予後推定,治療選択の指標となる.double-color FISHが臨床検査法として確立しており,とくに,悪性リンパ腫と多発性骨髄腫におけるBCL2-IGHCCND1-IGH再構成などの特異的IGH転座の検出に欠かせない.染色体分染法で病型特異的異常を単一細胞に検出した場合は,診断的意義を有しているのでクローン性を判定するために間期核FISH法で確認する.
  • 増田 亜希子
    2011 年 100 巻 7 号 p. 1807-1816
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    フローサイトメトリー(FCM)を用いた細胞表面抗原検査は,白血病やリンパ腫の診断に欠かせない検査の一つである.急性白血病初発時の診断・病型分類に必須であるだけでなく,寛解導入療法後は微小残存病変(MRD)の評価にも有用である.悪性リンパ腫の場合,FCMと病理組織所見を併用することで,より正確な診断が可能となる.FCMは胸・腹水等の体腔液にも応用できる.FCMを活用するには,代表的な抗原の種類,結果解釈のポイントを理解する必要がある.
III.診断と治療
  • 薄井 紀子
    2011 年 100 巻 7 号 p. 1817-1824
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    急性リンパ性白血病(ALL)はリンパ前駆細胞の,慢性リンパ性白血病(CLL)は成熟B細胞の腫瘍である.いずれの白血病でも,病因や予後に関わる染色体・遺伝子異常が認められ,病因分子を標的とする治療薬の導入(例えばPhiladelphia染色体陽性ALLに対するイマチニブ)で治療成績が大きく改善している.CLLは高齢者に多く緩徐な経過を取るが,根治的な治療は確立していない.種々の予後因子を吟味し,適切な治療法の開発が望まれる.
  • 岡本 昌隆
    2011 年 100 巻 7 号 p. 1825-1832
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    Hodgkinリンパ腫は進行期でも治癒が期待できる疾患であり,若年層での発症と相まって,治療は化学療法と放射線療法を効率的に組み合わせ,二次発がんほかの晩期有害事象の回避も考慮した過不足のない治療計画が必要である.放射線療法は可能な限り減量し,治療早期にFDG-PETを導入し,画一的ではなく初期の治療反応性の評価に基づいたその後の治療選択response adapted therapyの導入が進んでいる.
  • 永井 宏和
    2011 年 100 巻 7 号 p. 1833-1842
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    成熟B細胞性リンパ腫はB細胞の形質をもった腫瘍で前駆細胞性B細胞リンパ系腫瘍と形質細胞性腫瘍を除いたものである.病理診断名は多岐にわたるが,代表的なものとしてびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫や濾胞性リンパ腫などがある.化学療法が治療の中心となるが,放射線療法も病型により単独または併用にて用いられる.B細胞に特徴的なマーカーであるCD20を標的とした抗体治療薬rituximabの登場により近年治療効果が向上したことが前方向第III相臨床試験や後方視的研究により明らかになった.標準療法の確立とさらなる治療効果の改善に向け多くの臨床研究が進行中である.
  • 山口 素子
    2011 年 100 巻 7 号 p. 1843-1849
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    大規模な国際共同後方視的研究,およびわが国など東アジアにおける前向き臨床試験の遂行は,成熟TおよびNK(T/NK)細胞リンパ腫の疾患理解と至適治療の確立において,WHO分類(2008)の一部病型で大きな進歩をもたらした.その一方で,依然としてCHOP療法を超える効果を示す治療法が確立されていない病型も多く存在する.成熟T/NK細胞リンパ腫は東アジアに多発する特徴があり,継続的なエビデンスの発信がわが国に期待されている.
  • 三輪 哲義
    2011 年 100 巻 7 号 p. 1850-1874
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    多発性骨髄腫は,急性白血病とは異なり,腫瘍性血球が骨髄内にとどまることが多く,造血間質との多様な相互作用が知られている.又腫瘍細胞が最終分化段階の細胞である形質細胞の腫瘍であることから増殖性は乏しい反面,物質産生が盛んな機能性腫瘍(functioning tumor)の側面を示す.腫瘍細胞から免疫グロブリン関連蛋白以外にも骨障害を来す液性因子など多様な物質が産生される.実地臨床では,骨髄腫は決して均一な疾患ではなく,著明な多様性を特徴とする.細胞レベルの多様性は形態,染色体分析,表面マーカー,マイクロアレイなどで解析可能である.一方骨髄不全,骨障害,腎障害,内分泌障害,代謝障害,アミロイドーシスなど合併症も多様である.本稿では,診断のための諸検査,病期診断や病型診断を述べると共に,年齢により異なる原病の治療法と,年齢差が原則としてない合併症の治療法に関し概説した.本領域の国際会議はASHとIMWが主であるが,これら国際会議での最新情報を含め概説させて頂いた.
  • 神田 善伸
    2011 年 100 巻 7 号 p. 1875-1884
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    造血幹細胞移植は,治療に伴う有害事象,QOLの低下,あるいは治療関連死亡などの様々な可能性を覚悟した上で最終的な生存率を改善しようという治療であり,その適応は綿密な予後予測に基づいて慎重に判断しなければならない.本稿では主なリンパ系腫瘍について予後因子から考えた移植適応を羅列するが,いずれの疾患についても明確なエビデンスが得られている状況は限定されており,QOLについて考慮されたデータも乏しい.従って,実際の移植適応は個々の患者,家族の人生観などを重視し,充分な情報を共有して話し合いながら決定すべきである.
  • 小椋 美知則
    2011 年 100 巻 7 号 p. 1885-1897
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    初めて臨床導入に成功した抗腫瘍抗体薬であるrituximabは,B細胞非Hodgkinリンパ腫に画期的な治療進歩をもたらした.以後,分子標的薬を中心として多くの有望な新薬がリンパ系腫瘍に対して開発中である.本稿では,我が国で悪性リンパ腫を中心とするリンパ系腫瘍に対して開発が進められている新規の抗体薬,低分子化合物,抗がん化学療法薬などの新薬についてその開発動向と,今後の展望について述べる.
IV.予後と病診連携
座談会
MCQ
今月の症例
医学と医療の最前線
  • 田中 良哉
    2011 年 100 巻 7 号 p. 1978-1986
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    関節リウマチ(RA)は,関節炎を主座とする全身性自己免疫疾患である.発症早期から関節破壊が進行し,進行すると不可逆的な身体機能障害に伴う社会的損失や経済的問題等を生ずる.したがって,発症早期からの適正な治療が必要である.メトトレキサート(MTX)は免疫異常を是正して病態を改善することを目的とした標準的な抗リウマチ薬であるが,疾患活動性や関節破壊の制御は不十分であり,TNFやIL-6を標的とした生物学的製剤が導入された.その結果,臨床的寛解,構造的寛解,機能的寛解を目指すことが可能となった.治療の進歩は,診断基準の改訂にまで及んだ.2010年は,新分類基準,寛解基準が公表された診療革命の年であった.新分類基準は,将来的に関節破壊,遷延化する関節炎を分類する目的で策定された.また,関節破壊を生じないことを治療目標とした寛解基準が採用され,目標達成のための治療指針が提言された.さらに,適正治療により長期に亘って身体機能を維持し,心・脳血管障害を抑制し,他の内科疾患と同様に治療のエンドポイントを生命予後に置くことが可能となった.現在,より高い寛解導入率を得るためにも,免疫担当細胞を標的とした生物学的製剤,シグナル分子を標的とした低分子化合物の開発が期待されている.斯様な治療革命は多様な免疫難病にも臨床応用され,治療のブレークスルーを引き起こす勢いである.
  • 西城 卓也, 伴 信太郎
    2011 年 100 巻 7 号 p. 1987-1993
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    良き教育を提供する意義に疑いの余地はないが,その具体的改善策の理解は難しい.それらを裏付けする教育理論のうち,内科指導医に役立つと思われるものを抽出し概観した.成人である学習者の特性を理解できる"成人学習理論",学習者を動機付ける"TARGETモデル",経験が学習の基盤であることを示す"経験的学習モデル",人は如何にしてエキスパートに成長するかを説明する"熟達化理論",身の丈に合う練習の重要性を説く"Vygotskyの発達理論",人の知識がどのように構築されるかを示す"構成主義",競争的学習を脱却し,より成人らしい学習の在り方を提示する"協同的学習",先輩やロールモデルが存在する環境で学ぶことの重要性を説く"状況的学習",今後目指すべき新たな専門家像である"反省的実践家"について,これらのエッセンスを要約した.今後このような理論に基づき,内科臨床教育がより活発に推進されることが期待される.
  • 西村 純一, 金倉 譲
    2011 年 100 巻 7 号 p. 1994-1999
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    発作性夜間血色素尿症(paroxysmal nocturnal hemoglobinuria:PNH)は,造血幹細胞のphosphatidylinositol glycan class-A遺伝子に後天性の変異が起こり,glycosylphosphatidylinositol(GPI)アンカー型蛋白の合成障害を来たし,CD59やDAF(CD55)といったGPIアンカー型の補体制御因子を欠損するPNH血球が,補体の活性化に伴い血管内溶血を起こす疾患である.PNHの治療法は,唯一の根治療法として造血幹細胞移植があるものの,めぼしい対症療法もこれまで無かった.PNHの補体介在性血管内溶血に対する治療薬としてヒト化抗C5単クローン抗体エクリズマブが開発され,著明な溶血抑制効果が示された.溶血に伴う諸症状の緩和,血栓予防効果,腎臓病の改善なども認められ,画期的な治療薬として注目されている.今後はエクリズマブの登場により,治療戦略も大きく塗り替えられるものと思われる.
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