日本内科学会雑誌
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100 巻, 8 号
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内科学会NEWS
特集 認知症:診断と治療の進歩
Editorial
トピックス
I.認知症の概念・病態
  • 下濱 俊
    2011 年 100 巻 8 号 p. 2092-2098
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    1906年にAlois AlzheimerがAlzheimer型認知症患者を初めて報告した.肉眼的にびまん性脳萎縮,病理組織学的に大脳皮質の神経細胞の著明な脱落,多数の老人斑とAlzheimer型神経原線維変化という特異な病理変化を記載している.その後の病態研究により,コリン仮説に基づくAChE阻害薬,グルタミン酸神経毒仮説に基づくNMDA受容体拮抗薬が開発され,治療薬として使用されている.現在,アミロイドカスケード仮説に基づく抗アミロイド療法の開発が進められている.
  • 橋本 衛, 池田 学
    2011 年 100 巻 8 号 p. 2099-2108
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    非Alzheimer型認知症はAlzheimer病(AD)以外の全ての認知症を指す幅広い概念であるが,Lewy小体型認知症や前頭側頭葉変性症を代表とする変性性の認知症と,血管性認知症や正常圧水頭症などの非変性性の認知症に分けられる.前者は根本的治療が困難な疾患群であり,後者には予防や治療が可能な疾患が数多く含まれる.認知症の鑑別診断においてADか非ADかを鑑別することが一番の基本となるが,非ADを積極的に疑わせる所見として,「記憶障害が軽い」「神経所見の合併」があげられ,この2点に注目するだけで認知症診断は容易になろう.
II.診断
  • 羽生 春夫
    2011 年 100 巻 8 号 p. 2109-2115
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    正常老化と認知症の境界領域にある軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)の中から,Alzheimer病やその他の認知症へコンバートする一群を検出することが認知症の早期診断につながる.MCIの多くはエピソード記憶の障害を認めるが,病識の低下,学習効果の欠如,手段的日常生活動作の軽度の障害がみられ,さらにうつ傾向がみられた場合には,コンバートしやすい.語の流暢性課題である動物名を用いた"1分間スクリーニング法"は,MCIや初期認知症を捉える上で簡便な検査法といえる.
  • 石井 賢二
    2011 年 100 巻 8 号 p. 2116-2124
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    認知症の正確な診断を行う上で画像診断は欠かすことができない.初期評価の段階で治療可能な疾患を鑑別するために,まず頭部X線CTまたはMRIを必ず施行すべきである.MRIによる萎縮の分布,脳血流SPECTやFDG-PETによる神経機能障害の分布,アミロイドPETによるアミロイドβ沈着の有無の情報は早期診断や鑑別診断にきわめて有用である.新しいAlzheimer病診断基準における画像の位置づけについても紹介する.
III.治療
  • 中島 健二, 和田 健二
    2011 年 100 巻 8 号 p. 2125-2133
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    2010年10月に認知症疾患治療ガイドライン2010が発行された.本ガイドラインは,認知症診療に関連する6学会(日本神経学会,日本精神神経学会,日本認知症学会,日本老年精神医学会,日本老年医学会,日本神経治療学会)が合同で作成作業を進めた.診断から治療・ケアまでの臨床的な課題を取り上げて129のクリニカルクエスチョンを作成し,2008年までの文献を対象として文献検索が行われた.使用者としての対象は主として一般の医師を想定して作成された.認知症医療現場における診療支援に活用されることが期待される.
  • 長田 乾, 高野 大樹, 山崎 貴史, 前田 哲也, 佐藤 雄一, 中瀬 泰然
    2011 年 100 巻 8 号 p. 2134-2145
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    アミロイド仮説に基づいた認知症の根本治療薬は,開発中止が相次ぎ,未だ臨床に供するまでには至っていない.認知症の中核症状の治療は,我が国では長年にわたりドネペジルが唯一の治療薬であったが,ガランタミン,メマンチン,リバスチグミンが漸く承認され,治療の選択肢が拡大した.周辺症状(BPSD)の治療には,抗精神病薬には保険適応がなく副作用の面からも制約があり,抑肝散やバルプロ酸の臨床治験が行われている.
  • 山口 晴保, 牧 陽子
    2011 年 100 巻 8 号 p. 2146-2152
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    認知症という困難を抱えて生きる人に対する全人的な支援であり,根本的治療薬を持たない薬物療法よりも大きな役割を持つ認知症の非薬物療法を,病期別に解説した.リハビリテーションでは,認知機能向上を目指した介入よりも,快刺激・役割を演じ・褒められ・会話を楽しむ脳活性化リハビリテーションで残存機能を引き出す介入が望まれる.患者への診察態度,言葉遣い,告知,家族指導なども全て非薬物療法の意味合いを持つ.
IV.認知症の介護
  • 織茂 智之
    2011 年 100 巻 8 号 p. 2153-2161
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    世田谷区では区内の病院と医師会が協力し,認知症診断を行うための世田谷区認知症診断クリティカルパスを作成し,平成20年から運用を開始した.パス導入によりかかりつけ医との連携がスムーズになり,さらに認知症介護にかかわるスタッフとの連携も行えるようになった.今後は認知症患者を地域全体,すなわち患者と家族,かかりつけ医,地域の病院,行政,地域包括支援センターなどで支える体制を構築し,「ボケても安心して暮らせるまちづくり」を目指したい.
  • 森 敏
    2011 年 100 巻 8 号 p. 2162-2169
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    2000年に発足した介護保険は2006年に改正され,「予防重視型システム」に転換した.要介護1の一部が要支援2になり,要支援1・2を対象に「新予防給付」が創設された.介護予防は,非該当の特定(虚弱)高齢者にも拡げられ,地域支援事業として実施される.総合的なマネジメントを行う中核機関として「地域包括支援センター」が設立され,「地域密着型サービス」も新たに加わった.また,高齢者の権利擁護や虐待防止にも力が注がれる.認知症ケアには「パーソン・センタード・ケア」が取り入れられるようになった.
  • 藤本 直規, 奥村 典子
    2011 年 100 巻 8 号 p. 2170-2176
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    認知症の二人目の患者といわれる介護家族への支援は,専門医,かかりつけ医に関わらず,医療の重要な役割である.専門医は診断への受診の敷居を低くすること,診断後の治療とケアの道筋を示すこと,かかりつけ医は患者の身体疾患を見逃さず治療すること,必要な往診を行うことなどが求められる.また,介護量を減らすための支援である社会サービスの情報提供とともに重要な,心理面の負担を軽減するための情動サポートは,家族会などのピア・カウンセリングの場の紹介が必要である.しかし,何よりも重要なのは,医師や看護師が,介護者の介護負担の存在に気付き,声をかけたり,労ったりすることである.
V.トピックス
座談会
MCQ
今月の症例
医学と医療の最前線
  • 千葉 勉, 丸澤 宏之, 松本 裕子, 高井 淳
    2011 年 100 巻 8 号 p. 2269-2274
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    消化器癌の多くは,胃炎,肝炎,胆管炎,逆流性食道炎,炎症性腸疾患など,炎症組織を母地として発症する.発癌の最大の特徴は遺伝子変異,欠失,増幅,転座などの遺伝子異常が蓄積することであるが,最近私たちは,炎症がこうした遺伝子不安定性を誘発する機序を見出した.炎症の場では,H. pyloriやHCVなどの病原体,さらにそれによって誘導される様々なサイトカインが,本来B細胞のみに発現していて,免疫グロブリンの遺伝子変異(somatic hypermutation)やクラススイッチ(class switch recombination)に必須の遺伝子編集酵素であるAIDを上皮細胞で誘導する.AIDはその脱アミノ化作用によってDNAのシトシンを最終的にチミンへと変換する.その結果様々な遺伝子に,遺伝子変異やDNA二重鎖切断を誘発して,発癌を促進すると考えられる.
  • 桑原 聡
    2011 年 100 巻 8 号 p. 2275-2281
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    Crow-Fukase(POEMS)症候群は形質細胞の単クローン性増殖に伴い,多発ニューロパチー,浮腫・胸腹水,臓器腫大,内分泌障害,皮膚症状(色素沈着,血管腫),M蛋白血症などを呈する全身性疾患である.患者血清中には血管内皮増殖因子(VEGF)の著明高値がみられ,VEGFが有する強力な血管透過性亢進,血管新生作用により多彩な臓器病変をきたすことが想定されている.症状の多彩さから初診は循環器,呼吸器,消化器,腎臓,内分泌,神経,血液の内科系の各診療科の多岐にわたるが,この疾患の認知度は未だ高いとは言えず,早期診断に至らない患者が多数存在する.致死率の高い重篤な疾患であるが,従来型の副腎皮質ステロイドによる治療から,2000年以後に自己末梢血幹細胞移植を伴う大量化学療法,サリドマイド療法などの新規治療が導入されて以来,機能予後,生命予後は飛躍的に改善している.本症候群は治療可能な疾患であり,一般内科および各内科サブスペシャリティーにおいて見逃してはならない疾患として認識されるべきである.
  • 藤谷 与士夫, 綿田 裕孝
    2011 年 100 巻 8 号 p. 2282-2288
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    膵β細胞のインスリン分泌予備能は,糖尿病の発症を規定する因子として重要である.われわれのAtg7欠損マウスの解析から,大規模蛋白質分解系として知られるオートファジーが,膵β細胞の形態と機能維持に重要な役割をはたすことが示された.インスリン抵抗性が増大するような状況下でβ細胞のオートファジー活性は亢進するが,この現象はインスリン需要の高まりに対してβ細胞が代償的に数と機能を増大させる上で必要な生体応答であることが明らかとなった.糖尿病の新たな成因として,膵β細胞におけるオートファジー機能不全の存在が示唆される.
  • 福田 英克, 木村 玄次郎
    2011 年 100 巻 8 号 p. 2289-2294
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    治療抵抗性高血圧患者において,腎動脈を介したカテーテルによって腎交感神経を焼灼することにより,1年後まで十分な降圧効果が得られることが,最近の臨床治験で明らかになった.今後,この腎交感神経焼灼術の安全性と長期の降圧効果が確立されれば,軽症高血圧患者にも適応される可能性もある.さらに,標的臓器障害および心血管イベント予防効果も期待される.
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