日本内科学会雑誌
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102 巻, 10 号
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内科学会NEWS
目次
特集 リウマチ・膠原病における重要臓器障害と難治性病態―病態と治療の進歩
Editorial
トピックス
I.重要な臓器障害
  • 川畑 仁人
    2013 年102 巻10 号 p. 2532-2542
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2014/10/10
    ジャーナル フリー
    自己免疫応答は,甲状腺,膵臓,神経筋接合部など,種々の臓器,器官の疾患に,重要な役割を担っていることが明らかにされてきた.このことは,これまで免疫学的に隔離されている領域とされてきた中枢神経系においても例外ではない.多発性硬化症や急性散在性脳脊髄炎,腫瘍随伴性脳脊髄炎,primary angiitis of the central nervous systemなど,中枢神経系を主座とする自己免疫疾患が知られている.そして,全身性エリテマトーデス(SLE)や抗リン脂質抗体症候群,Behçet病,Sjögren症候群,サルコイドーシスなど,多臓器病変を特徴とする膠原病およびその類縁疾患においても,中枢神経系が主たる病変部位となることがある.本稿では,紙数の関係から幾つかの膠原病に絞り,その中枢神経病変について述べていきたい.
  • 波多野 将
    2013 年102 巻10 号 p. 2543-2548
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2014/10/10
    ジャーナル フリー
    膠原病は全身性慢性炎症性疾患であり,しばしば心臓病変も合併する.全身性強皮症や全身性エリテマトーデス,皮膚筋炎などは心筋障害の結果「特定心筋症」の病態を呈することがある.また,膠原病は心筋障害のみならず,心外膜炎や伝導障害,弁膜症など様々な心臓病変を呈する.ステロイドや免疫抑制薬が奏効するケースもあるが,循環器の専門的検査・治療を要するケースも多く,循環器・膠原病専門医の両者が協力して診療に当たることが重要である.
  • 川島 正裕, 大島 信治, 小林 信之
    2013 年102 巻10 号 p. 2549-2557
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2014/10/10
    ジャーナル フリー
    リウマチ・膠原病患者の呼吸器合併症を疑った場合,①原疾患に伴う呼吸器病変,②呼吸器感染症,③薬剤性肺障害,④偶発的合併症(腫瘍等)の4つの範疇を想起し診療にあたる必要がある.原疾患の活動性と治療内容,易感染性等を考慮し検査を進めるが,急速進行性間質性肺炎や肺胞出血,粟粒結核及びメトトレキサートによる肺障害等の迅速な対応が必要な疾患も含まれ,膠原病及び呼吸器専門医と連携し診療を行う事が重要である.
  • 廣村 桂樹
    2013 年102 巻10 号 p. 2558-2566
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2014/10/10
    ジャーナル フリー
    膠原病・リウマチ性疾患において,腎臓は主要な標的臓器となる.特に全身性エリテマトーデスやANCA関連血管炎では,高頻度に糸球体を中心に炎症が生じ,病態に応じた適切な治療が求められる.ループス腎炎に対しては,最近,海外で幾つかの診療ガイドラインが作成された.またANCA関連血管炎による急速進行性糸球体腎炎症候群に対しては,国内で治療指針が作成されている.本稿ではこれらの疾患を中心に,主な膠原病・リウマチ性疾患における腎障害について概説する.
  • 下田 慎治, 赤星 光輝, 塚本 浩
    2013 年102 巻10 号 p. 2567-2574
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2014/10/10
    ジャーナル フリー
    消化器疾患・症状は日常診療の中で最も普遍的なものの一つである.しかしリウマチ・膠原病における消化器疾患は複雑な病態を背景に出現することも多く,早期に鑑別しその病態にあわせた加療が必要とされる.的確な医療面接,身体診察や基本的臨床検査・画像検査の判断を踏まえた上での専門的対応が求められる.
  • 土橋 浩章, 亀田 智広
    2013 年102 巻10 号 p. 2575-2581
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2014/10/10
    ジャーナル フリー
    リウマチ・膠原病診療において,汎血球減少をはじめとする血液異常を認める機会は少なくない.血液異常を来す原因は多彩であり,疾患自体の一症状のほかに,感染症や悪性腫瘍の合併,治療薬剤によるadverse eventなど多方面からの集学的アプローチが必要となる.また,自己免疫疾患に伴う造血器障害の治療は,原因となる病態を特定し,その病態に即した治療を行うことが大原則である.本稿では,リウマチ・膠原病に伴う代表的な造血器疾患について概説する.
  • 岡崎 貴裕
    2013 年102 巻10 号 p. 2582-2590
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2014/10/10
    ジャーナル フリー
    膠原病において原発性および続発性に起こる血管炎症候群がもたらす血管障害は,その病因が推定の域をでないことや,血管が持つ栄養供給による臓器維持作用の破綻から,難治性であると同時にしばしば致命的要因となる.近年,この血管炎症候群についての命名および定義が改訂され,個々の血管炎の診療についてのガイドラインが整理されつつある.本稿ではこの血管炎症候群について診断・治療の側面から概説する.
  • 藤本 学
    2013 年102 巻10 号 p. 2591-2599
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2014/10/10
    ジャーナル フリー
    膠原病の皮膚症状は,診断において重要な役割をもつのみならず,全身的な疾患活動性の把握や出現する症状の予測にも有用である場合がある.膠原病の皮疹は,特異疹と非特異疹に大きく分けられる.特異疹の存在は診断に直結するが,非特異疹の方が頻度としては高いため,早期診断により役立つ場合が多い.膠原病の皮膚症状を診察する際には,顔と手に特に留意して観察する.典型疹は比較的わかりやすいが,非典型的な症状の解釈については皮膚科専門医にコンサルトすべきである.
  • 玉井 慎美, 川上 純
    2013 年102 巻10 号 p. 2600-2606
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2014/10/10
    ジャーナル フリー
    関節リウマチは原因不明の慢性多発性関節炎である.近年,自己抗体と遺伝要因や環境要因との関連性など病因解明が進んでいる.また新しい分類基準により早期診断・早期治療が可能となった.有効な抗リウマチ薬が次々と開発され,明確な目標を設定した厳格な治療が推進されている.治療の目標は臨床的寛解のみならず構造的寛解,機能的寛解の3つを達成することである.MRIや超音波は診断から寛解まで存在感を増している.
  • 川島 秀俊
    2013 年102 巻10 号 p. 2607-2612
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2014/10/10
    ジャーナル フリー
    リウマチ・膠原病疾患において,眼障害/病態が発生する場合があり,眼表面,強膜あるいは眼内における様々な病態を呈する.これらの代表的な病態について述べるとともに,最近の眼科治療の進歩について述べる.特に近年における,点眼,生物学的製剤,レーザー治療,手術治療の進歩についても述べる.
II.難治性の病態
  • 田中 住明
    2013 年102 巻10 号 p. 2613-2620
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2014/10/10
    ジャーナル フリー
    結合組織病(CTD)の難治性病態である肺高血圧症は,強力かつ有効な肺動脈性肺高血圧症(PAH)治療薬により「治療できる臓器病変」として注目されるようになった.肺高血圧症はPAH治療薬で改善されたが長期生存に関しては未だに不良である.この克服にはCTDに合併する肺高血圧症治療のさらに成熟が必要であり,ポイントは免疫抑制療法やPAH治療薬の適応,全身性強皮症合併PAHに対するアプローチなどである.
  • 保田 晋助
    2013 年102 巻10 号 p. 2621-2630
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2014/10/10
    ジャーナル フリー
    抗リン脂質抗体症候群は,リン脂質結合蛋白に対する自己抗体を有し,動静脈および微小血管における血栓症や流死産,重症妊娠高血圧症や胎盤機能不全による早産などの妊娠合併症をひきおこす自己免疫疾患である.抗リン脂質抗体は免疫学的手法と凝固学的検査を組み合わせて検出するが,手法が標準化されていないなど問題点が残る.治療の主眼は血栓症の再発予防であり抗血小板療法や抗凝固治療が行われるが再発が依然として高頻度である.習慣流産患者に対してはヘパリン・少量アスピリンの併用が行われる.新たな予後予測や治療の試みがなされつつある.
  • 住田 圭一, 乳原 善文
    2013 年102 巻10 号 p. 2631-2638
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2014/10/10
    ジャーナル フリー
    リウマチ・膠原病疾患の治療においては,ステロイドや免疫抑制薬に加え,近年,抗TNF-α抗体や抗IL-6受容体抗体などの生物学的製剤が積極的に導入されはじめ,飛躍的な治療効果が得られている一方,免疫不全状態を背景とした日和見感染症の発生頻度の増加が問題となっている.今後も,リウマチ・膠原病診療において新規薬剤による治療成績の向上が期待されるが,それと同時に各種病原体による日和見感染症へも注意する必要がある.
  • 駒形 嘉紀
    2013 年102 巻10 号 p. 2639-2644
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2014/10/10
    ジャーナル フリー
    血球貪食症候群は,骨髄などにおいて活性化された組織球が自己の血球を貪食する病態で,別名血球貪食性リンパ組織球症とも呼ばれる.うち自己免疫疾患に伴うものをマクロファージ活性化症候群と呼び,サイトカインストームと呼ばれる炎症性サイトカインの異常産生により,発熱・高フェリチン血症などの臨床症状を呈する.しばしば重症となり致死的な経過をたどるため,ステロイドなどによる強力な免疫抑制療法が必要である.
  • 村川 洋子
    2013 年102 巻10 号 p. 2645-2652
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2014/10/10
    ジャーナル フリー
    妊娠可能年齢の女性が多く罹患する関節リウマチ・膠原病では,妊娠は重要な問題である.今日の治療の進歩とコホート研究によって,治療薬の妊娠への安全性も示されている.妊娠・授乳期はなるべく薬を使わないことが望ましいが,疾患の悪化は母体ばかりでなく児にも影響する為,必要最小限の安全性の確立した薬物にて疾患をコントロールすることが重要である.本稿では関節リウマチ・膠原病の治療薬と妊娠について概説する.
座談会
MCQ
今月の症例
医学と医療の最前線
  • 石川 耕, 横手 幸太郎
    2013 年102 巻10 号 p. 2691-2698
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2014/10/10
    ジャーナル フリー
    肥満は持続した過栄養摂取により脂肪組織が肥大した状態である.肥大した脂肪組織機能の異常はインスリン抵抗性を惹起し,代償機構が破綻した時にメタボリックシンドロームのような代謝異常が顕在化する.脂肪細胞機能異常とインスリン抵抗性を引き起こす機序としては1.末梢での脂肪酸の影響,2.脂肪組織における小胞体ストレス,3.酸化ストレス,4.アディポカインとマクロファージ,5.脂肪組織における低酸素,6.脂肪組織の線維化であると考えられている.過栄養により血中脂肪酸が上昇し脂肪細胞以外にも脂肪蓄積を促進し,小胞体ストレス,酸化ストレスが出現し,インスリンシグナルが低下する.肥大化し,線維化した脂肪組織には低酸素状態を引き起こしマクロファージが浸潤し炎症性サイトカインが発現する.これらの要素が相互に影響することによって,インスリン抵抗性が促進される.
  • 張替 秀郎
    2013 年102 巻10 号 p. 2699-2704
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2014/10/10
    ジャーナル フリー
    近年,鉄代謝の分子メカニズムが急速に明らかになってきている.その一つが生体内の鉄量を調節するヘプシジン-フェロポーチンシステムである.フェロポーチンは腸上皮細胞やマクロファージから鉄を血液中に排出するたんぱく質であり,ヘプシジンはフェロポーチンの発現を低下させることで生体の鉄利用を抑制する.もう一つは,IRP(iron regulatory protein)-IRE(iron responsive element)システムである.IREはmRNAの非翻訳領域に存在する高次構造で,このIREにIRPが結合し,鉄関連遺伝子の翻訳を調節する.このシステムにより細胞内鉄濃度に応じて鉄の貯蔵,利用,排出,取り込みにかかわる遺伝子の発現が調節され,細胞内鉄量が最適化される.さらにミトコンドリアにおけるヘム・ヘム中間体・鉄のトランスポーターも続々と同定されてきており,今後鉄関連疾患の発症機序の解明や新たな創薬が期待される.
  • 渡辺 登喜子, 渡辺 真治, 河岡 義裕
    2013 年102 巻10 号 p. 2705-2713
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2014/10/10
    ジャーナル フリー
    H5N1高病原性鳥インフルエンザウイルス(以後,“H5N1ウイルス”と呼ぶ)が,世界各地に拡大している.それに伴い,ヒトにおける感染例も増えてきており,これまでに600人ほどの感染が確認され,60%近い致死率が報告されている.確認されている感染例が限られていることから,ヒトには比較的感染しづらく,感染したとしてもヒトからヒトへの伝播が起こりにくいと考えられている.しかし,ウイルス遺伝子の交雑やウイルス蛋白質のアミノ酸変異により,ひとたびH5N1ウイルスが,これまでよりヒトへ感染しやすくなり,さらにヒトからヒトへと効率よく伝播する能力を獲得すれば,致死率の高いH5N1ウイルスが世界的大流行(パンデミック)を起こす危険性がある.本稿では,最近の研究から得られた知見を元に,H5N1ウイルスがパンデミックを起こす可能性について議論したい.
  • 曽根 博仁, 赤沼 安夫, 山田 信博
    2013 年102 巻10 号 p. 2714-2722
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2014/10/10
    ジャーナル フリー
    2型糖尿病は遺伝背景や生活習慣・環境が深く関与することから,その臨床像に大きな人種・民族差(ethnic differences)が存在する.これは基礎的病態から各合併症のリスク因子に至るまで多岐にわたり,たとえばインスリン分泌能やインスリン抵抗性と関連する肥満度は,わが国の患者では欧米人患者より大幅に低い.さらにわが国に多い喫煙が腎症のリスク因子であったり,わが国で少ない果物摂取量と網膜症発症が有意に関連していたりなど,生活習慣との関連も見られる.したがって診療ガイドラインを作成したり,大規模臨床エビデンスを実地診療に適用したりする際には,これらの違いについて十分な配慮が必要である.日本人に最適化された糖尿病予防・治療対策の確立のためには,日本人における大規模臨床研究をさらに推進しデータを集積していく必要がある.
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2013年九州支部専門医部会教育セミナー
シリーズ:指導医のために:医学・医療の多様性を追求する
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