現在使用されている腫瘍マーカーは健常でも産生されており,腫瘍以外にも炎症などの良性疾患や生理的変動でも増加するため,利点と欠点(限界)を熟知した上で使用することが重要である.最近の新しいバイオマーカーは,disease based biomarkerとdrug based biomarkerに分類され,前者は癌の診断やタイプ分類,後者は治療法の選別や予後の推定,副作用予測に使用される.
症例は36歳,男性.意識障害と異常行動で発症し,髄液検査にて単核球優位の細胞数増多,頭部MRIで一過性の脳梁膨大部病変を認めた.アシクロビル,ステロイドパルス療法を行ったところ,臨床症状,画像所見の改善を認めた.本例は小児例を中心に報告されてきたclinically mild encephalitis/encephalopathy with a reversible splenial lesion(MERS)の臨床的特徴を有しており,MERSの稀な成人例と考え報告する.
HIV(human immunodeficiency virus)感染症は単なる「細胞性免疫不全を来す疾患」ではなく,慢性ウイルス血症による「全身性炎症性疾患」であり,それに伴い虚血性心疾患のリスク増加を含む,多様な病原性を示すことが明らかになってきている.治療開始時期は次第に早期化へ向かっており,米国では2011年にHIV感染者全員を治療の適応とする推奨がなされた.二次感染者を減少させるという予防戦略としての“treatment as prevention”という概念や,非HIV感染者に曝露前予防として抗HIV薬を用いることにより二次感染を予防しようとする試み(PrEP)も始まっている.かつては致死的疾患であったHIV感染症は,治療薬の進歩により患者の生命予後は著明に改善した.しかしながら,長期服薬に関連する既知および未知の副作用の懸念や,薬剤耐性ウイルスの蔓延リスクなどの懸念もあり,決して予断を許す状況ではない.一方,予後の改善に伴う患者の高年齢化により,これまでにはなかったさまざまな問題に対する対策の必要性も出てきている.