日本内科学会雑誌
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103 巻, 1 号
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内科学会NEWS
目次
特集 肝がん:診断と治療の進歩
Editorial
トピックス
I.疫学の動向
  • 谷合 麻紀子
    2014 年 103 巻 1 号 p. 4-10
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2015/01/10
    ジャーナル フリー
    わが国において,原発性肝がんのほとんどを占める肝細胞癌は,年齢調整死亡率が人口10万対男性19人,女性6人とされる.経時的動向では,年齢調整死亡率の低下と発癌年齢の高齢化を認める.肝がんの成因は,従来ウイルス性が約90%,特にC型肝炎感染を基盤とするものが約70%を占めた.近年の傾向では,ウイルス性が減少し,わが国における生活習慣病の急増を受け非アルコール性脂肪性肝障害など非ウイルス性肝疾患を基盤とする症例が増加し,全肝がんの約20%が非ウイルス性となった.
II.肝炎診療体制―肝炎対策基本法をうけて
III.病因と病態―最近の遺伝子解析を中心に
IV.診療ガイドラインの進歩
  • 建石 良介, 小池 和彦
    2014 年 103 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2015/01/10
    ジャーナル フリー
    多くの場合,肝細胞癌の診断プロセスの第一歩は,腹部超音波での腫瘍の検出から始まる.dynamic CT/MRIの所見のみで確定診断が可能であり,典型的所見を示す場合は,腫瘍生検を行わずに治療へと進んで良い.腫瘍マーカーの異常高値を認めた場合は,腹部超音波上腫瘍が検出されなくても,dynamic CT/MRIを考慮する.近年,肝特異的造影剤であるGd-EOB-DTPAが導入され,特に早期診断の分野での活用が期待されている.
  • 中山 壽之, 高山 忠利
    2014 年 103 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2015/01/10
    ジャーナル フリー
    本邦の肝癌治療においては2005年に策定された「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン」内の治療アルゴリズムが幅広く使われている.2013年に新しいエビデンスに基づいて改定が行われた.主な変更点は1)肝機能評価としてChild-Pugh分類の限定的使用可, 2)肝切除術とラジオ波焼灼療法の選択順位付け,3)全身化学療法の採用である.いずれも患者予後に基づくエビデンスを根拠とし実臨床に対応している.また,欧米の肝癌治療ガイドライン(BCLCシステム)と比較して,患者因子,治療環境,保険診療制度などを背景に推奨される治療指針が大きく異なっている.
  • 荒井 邦明, 山下 竜也, 金子 周一
    2014 年 103 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2015/01/10
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌サーベイランスを行う高危険群はB型慢性肝炎,C型慢性肝炎,肝硬変症例である.6カ月毎の超音波検査と複数の腫瘍マーカー(AFP/PIVKA-II/AFP-L3分画)測定にてサーベイランスを行うが,超高危険群であるB型肝硬変,C型肝硬変症例においては3~4カ月毎に間隔を短縮することや,危険因子の数,超音波検査での視認性に応じてCTやMRIの併用も考慮される.近年増加している脂肪肝など生活習慣病を背景とした肝発がんに対する効率的なサーベイランス方法の確立が今後求められる.
V.診断法の進歩
  • 沼田 和司, 田中 克明
    2014 年 103 巻 1 号 p. 44-54
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2015/01/10
    ジャーナル フリー
    超音波Bモードで「薄い辺縁低エコー帯」,「外側陰影」,「後方エコー増強」,「モザイクパターン」を呈する結節は肝細胞癌が強く疑われ,造影超音波動脈相で早期濃染(wash in)とその後の陰影欠損(wash out)所見で質的診断が可能である.造影CTもしくは造影MRIをリファレンスにした超音波Bモードとの融合画像は小さな境界不明瞭な結節の存在診断を可能とし,引き続きの造影超音波は小多血性肝細胞癌の質的診断が可能となる.一方,早期肝細胞癌では非典型的な濃染パターンが多く腫瘍生検が必要である.
  • 上田 和彦
    2014 年 103 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2015/01/10
    ジャーナル フリー
    本稿では1)単位時間あたり頭尾方向空間分解能向上の歴史,2)低管電圧(低kVp)撮影,3)Quantitative CTとDual-energy CT,4)MIP・MinIPの4技術をCTにおける診断法の進歩に選び,概説した.既に一段落しつつある技術1)については歴史と現状を,その有用性が未確定の技術2~3)と,Multi-detector row CTが可能にした非常に薄い断面を肝細胞癌の検出に有効活用する技術4)については概略を中心に述べた.
  • 赤羽 正章
    2014 年 103 巻 1 号 p. 61-69
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2015/01/10
    ジャーナル フリー
    肝細胞特異性造影剤の臨床導入と,撮像法の進歩による空間分解能・コントラスト・脂肪定量の向上とによって,肝がんの診断におけるMRIの役割は更に高まっている.肝細胞特異性造影剤は古典的肝細胞癌の診断能向上のみならず従来困難であった早期肝細胞癌検出を実現し,肝細胞癌患者や高危険群の診療体制を変革した.しかし検出感度は向上したものの,質的診断上の特異度については課題も残っており今後の検討が必要である.
VI.治療法の進歩
  • 長谷川 潔, 青木 琢, 山本 訓史, 竹村 信行, 阪本 良弘, 菅原 寧彦, 國土 典宏
    2014 年 103 巻 1 号 p. 70-77
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2015/01/10
    ジャーナル フリー
    肝細胞がんに対する肝切除は局所コントロールに優れており,肝機能が許す限り,治療の第一選択である.微小転移巣も系統的切除により除去可能であり,再発率を抑制しうる.脈管浸潤を伴う進行例でも肝切除により,予後改善が期待できる.ただし,術後の肝不全は致死的で,いったん発症すると回復困難なため,肝不全に至らないような厳密な術前評価と入念な準備,術中の工夫,綿密な術後管理が必須である.
  • 大久保 裕直
    2014 年 103 巻 1 号 p. 78-86
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2015/01/10
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌の局所治療は,低侵襲性,凝固域の広さからラジオ波熱凝固療法(RFA)が中心である.第2世代超音波造影剤,Real-time virtual sonographyの登場でRFA時の治療支援が容易になり,客観性のある,確実な治療が行えるようになった.また,エコー下の視認性を良好にするため,人工胸水・腹水を注入したり,また各種合併症の回避法も確立され,RFAの安全性は向上してきた.
  • 山門 亨一郎
    2014 年 103 巻 1 号 p. 87-92
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2015/01/10
    ジャーナル フリー
    1980年代に本邦で開発された肝癌に対する肝動脈塞栓術は,抗癌剤とリピオドールの懸濁液を加える肝動脈化学塞栓療法(Transarterial chemoembolization:以下TACE)へと進化した.2002年にはTACEを行うことで肝癌患者の予後を延長させることができるというエビデンスが示された.適応はいわゆる中程度進行肝癌で,約30%の肝癌患者がTACEを中心に治療がなされている.IVR学会修練施設でTACEが初回治療であった815人の1年,3年,5年,7年生存率は92.0%,62.9%,39.0%,26.7%であった.本邦ではゼラチンスポンジが塞栓物質の中心であるが,欧米では球状塞栓物質(ビーズ)が開発され,分子標的薬の登場も相まってTACEを巡る動きが活発化している.しかし,ビーズ塞栓が従来のTACEに優るというエビデンスは示されていない.
  • 池田 公史, 光永 修一, 清水 怜, 大野 泉, 高橋 秀明, 奥山 浩之, 桑原 明子, 奥坂 拓志
    2014 年 103 巻 1 号 p. 93-101
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2015/01/10
    ジャーナル フリー
    進行肝細胞癌に対して,ソラフェニブが標準治療として確立したことにより,積極的に全身化学療法が行われるようになった.現在,切除やラジオ波焼灼術後の補助療法,肝動脈化学塞栓術との併用療法,進行癌に対する一次化学療法,ソラフェニブ不応の二次化学療法として,様々な分子標的治療薬やソラフェニブとの併用療法の開発が進行中であり,今後,肝細胞癌患者の更なる延命効果が得られることが期待されている.
  • 山下 竜也, 荒井 邦明, 金子 周一
    2014 年 103 巻 1 号 p. 102-109
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2015/01/10
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌に対する化学療法(分子標的薬治療以外)として,全身化学療法と肝動注化学療法がある.肝動注化学療法は本邦で積極的に行われてきた肝細胞癌に特徴的な治療法である.標準的治療法は確立されていないものの約3割で腫瘍縮小がみられ,Conversion治療の可能性がある.その位置づけは海外と本邦で全く異なっており,ソラフェニブ治療との選択には,それぞれの治療法の特徴を理解して,症例毎に治療法を選択する必要がある.
  • 海道 利実, 上本 伸二
    2014 年 103 巻 1 号 p. 110-115
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2015/01/10
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌(以下肝癌)に対する肝移植は,癌のみならず,その発生母地である障害肝も同時に正常肝に置換することができる理想的な治療法である.肝癌ガイドライン上の移植適応は,肝障害度CのMilan基準内肝癌であり,保険適応となっている.京都大学では,腫瘍の生物学的悪性度を考慮した新基準により,低い再発率を保ちつつ移植適応の拡大が可能となった.他の肝癌治療は移植成績に影響を及ぼさないが,制御困難な場合は移植時機を逸しないことが重要である.
  • 福光 延吉, 奥村 敏之, 石川 仁, 大西 かよ子, 水本 斉志, 沼尻 晴子, 坪井 康次, 櫻井 英幸
    2014 年 103 巻 1 号 p. 116-122
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2015/01/10
    ジャーナル フリー
    肝がんの放射線治療は,近年,多くの技術的進歩を遂げてきた.その歴史は,いかに正常の肝組織への不必要な照射線量を抑えて,病巣への照射線量を高めるかといった課題に対しての挑戦であった.現在では,3次元原体照射や体幹部定位放射線治療に代表されるX線治療,陽子線や炭素線を使った粒子線治療の出現により,放射線治療は肝がんの局所治療の安全かつ有効な一つの選択肢としてあげられるようになってきた.
座談会
MCQ
今月の症例
  • 佐藤 洋志, 角 浩史, 佐藤 ルブナ, 田中 めぐみ, 西脇 農真, 鶴田 信慈, 原岡 ひとみ
    2014 年 103 巻 1 号 p. 149-151
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2015/01/10
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,女性.20歳頃月経時に発熱と腹痛が生じ,その後月経周期に一致して症状を繰り返すため近医で精査するも異常所見を認めなかった.症状は月経終了後無治療で自然軽快していた.父親にも同様の症状が出現していたことから,遺伝性自己炎症性疾患を疑い遺伝子検査を施行したところ,MEFV遺伝子変異を認めたため家族性地中海熱(Familial Mediterranean fever:FMF)と診断した.コルヒチン投与後症状は消失し,現在までアミロイドーシスの発症も認めていない.
  • 芝原 友也, 森脇 篤史, 園本 格士朗, 片平 雄之, 榎津 愛実, 加藤 香織, 下釜 達朗, 川上 覚, 今永 知俊
    2014 年 103 巻 1 号 p. 152-154
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2015/01/10
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,男性.感冒症状,関節痛に対してアセトアミノフェンを含む解熱鎮痛薬を内服後,関節痛の増悪と両下腿の紫斑が出現した.薬剤中止で紫斑は消退したが,残存する関節痛にアセトアミノフェンを投与したところ紫斑が再出現した.皮膚生検で白血球破砕性血管炎を認め,投与中止後に症状は改善した.本症例は偶然のチャレンジテストにより過敏性血管炎の診断に至り,安易な対症療法の危険性を示唆する貴重な症例であった.
医学と医療の最前線
  • デシュパンデ・ ゴータム, 大出 幸子
    2014 年 103 巻 1 号 p. 155-159
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2015/01/10
    ジャーナル フリー
    ホスピタリスト医療は,専門的な治療と在院日数にかかる医療費を効果的にコントロールし,米国ではホスピタリストによるケアを受ける内科・外科の入院患者数は増加している.2009年にホスピタリスト専門医試験が導入され,ホスピタリストは医療安全や診療の質向上活動のリーダーとなることが期待されている.日本でホスピタリスト医療がさほど急速な広がりを示さない理由として,医療コストへの関心が低いこと,総合診療医と専門医の役割分担が明確でないことが挙げられる.
  • 中田 紘介, 柳田 素子
    2014 年 103 巻 1 号 p. 160-165
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2015/01/10
    ジャーナル フリー
    造血に必須のホルモンであるエリスロポエチン(EPO)は腎機能の低下とともに産生量が不十分となり,腎性貧血を引き起こす.EPOを産生する細胞は腎臓の尿細管間質に分布している.このEPO産生細胞と尿細管間質の線維芽細胞はいずれも神経堤由来細胞であり,またいずれも線維化を起こすαSMA陽性myofibroblastに形質転換することがわかった.そしてmyofibroblastに形質転換しEPO産生能を一旦失ったEPO産生細胞でもEPO産生能回復の可能性を見出した.現在EPO産生能を刺激し回復させる方法として,HIF分解に関わるPHDを阻害する薬や,神経保護に関わる薬剤などがあり,線維化の改善も含め効果が期待されている.
  • 槇野 博史, 佐田 憲映
    2014 年 103 巻 1 号 p. 166-172
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2015/01/10
    ジャーナル フリー
    2011年にチャペルヒルで行われた会議で新たなチャペルヒル分類が発表された.その中でWegener's granulomatosisはGranulomatosis with Polyangiitis(Wegener's)(GPA),Churg-Strauss syndromeはEosinophilic Granulomatosis with Polyangiitis(Churg Strauss)(EGPA)にそれぞれ名称変更されている.これを受けて,GPAに対応する日本語病名として「多発血管炎性肉芽腫症(Wegener肉芽腫症)」を,EGPAに対応する日本語病名として「好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(Churg Strauss症候群)」とした.現在我が国で行っているANCA関連血管炎患者に関する前向きコホート研究の解析結果から欧米の分類基準の問題点,厚労省認定基準の位置づけが明らかとなってきた.またわが国特有の患者特性や治療実態も明らかとなってきており今後我が国の患者により適した診療指針の作成が望まれる.
専門医部会
シリーズ:日本発臨床研究の紹介と反省点を語る
シリーズ:指導医のために:医学・医療の多様性を追求する
専門医部会近畿支部教育セミナー
シリーズ:患者の言葉・身体所見を読み解く
シリーズ:内科医と災害医療
内科学会からのお知らせ
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