日本内科学会雑誌
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104 巻, 12 号
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内科学会NEWS
目次
特集 医学教育Up To Date
Editorial
トピックス
  • 石原 賢一
    2015 年 104 巻 12 号 p. 2490-2497
    発行日: 2015/12/10
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル フリー

    戦後,1949年の学制改革で新制大学が発足して以降,大学入試において常に医学部医学科(以下,「医学部」)は最難関であった.しかし,入試の中身をみると,教科試験中心だった入試から面接が重視されるようになり,共通一次試験導入で教科数が絞り込まれた個別(2次)試験は,近年は教科数が増加し,重視されるようになった.さらに,「地域枠」や「特定診療科枠」といった受験生の出身地を限定したり,入学時点で将来の進路の決定をせまったりする入試方式も生まれている.医学部入試の変遷を辿るとともに,今後予定されている大学入試改革で医学部入試が受ける影響についても言及したい.

  • 髙田 和生
    2015 年 104 巻 12 号 p. 2498-2508
    発行日: 2015/12/10
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル フリー

    アクティブラーニングとは,大人数講義と対照をなす教育アプローチであり,後者が教育者側の情報伝授効率を高めるのに対して,前者は学習者が新たに受領した情報について何らかの活動に従事することにより,それら情報の高次レベルでの修得を可能にする.大人数講義とは排他的ではなく相補的関係にあり,大人数講義を数分間中断して個人やペアで何らかの認知タスクに取り組ませるという小規模なものから始められる.その有効性は実証研究でも証明されつつあり,膨大な医学情報量と過密化するカリキュラムの中で学ぶ医学生の学習支援のために,今後導入拡大が求められている.

  • 前野 貴美
    2015 年 104 巻 12 号 p. 2509-2516
    発行日: 2015/12/10
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル フリー

    人口の高齢化など社会の変化に対応するために,専門職同士の連携Interprofessional work(IPW),その基盤となる専門職連携教育Interprofessional education(IPE)の重要性が高まっており,複数の領域の学生同士がともに学ぶIPEを卒前教育に取り入れる大学が増加している.IPEはセッティングにより様々な学習方法で実施されており,効果的な実施のためには教員に対するFaculty Development(FD)が重要である.今後,教育効果の検証や卒前教育を卒後教育につなげていくことが求められる.

  • 山脇 正永
    2015 年 104 巻 12 号 p. 2517-2522
    発行日: 2015/12/10
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル フリー

    スチューデント・ドクターとは,共用試験に合格し,参加型臨床実習を行うに足る十分な知識,技術,態度を身に着けていると認定された学生に対して付与する資格である.本稿では,我が国のスチューデント・ドクター制度の成立について,経緯と現状,意義,臨床実習への影響,今後の課題についてまとめた.

  • 奈良 信雄
    2015 年 104 巻 12 号 p. 2523-2526
    発行日: 2015/12/10
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル フリー

    国際基準に基づく医学教育の分野別認証評価制度が導入されつつある.その目的は,我が国の医学教育の質を保証し,国民の健康生活向上のために有能な医師を育成することにある.さらに,医学医療の国際化に対応する目的もある.医学教育質保証の観点から,学修成果基盤型教育の導入,診療参加型臨床実習の充実,統合型教育の実施,学生の自己学修促進などが課題となっている.

  • 井廻 道夫
    2015 年 104 巻 12 号 p. 2527-2532
    発行日: 2015/12/10
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル フリー

    医師国家試験は卒前教育・卒後臨床研修・新しい専門医制度を含めた一連の医師養成過程の中に位置づけられ,「指導医の下でその任務を果たすのに必要な基本的知識と技能」が試験対象である.共用試験CBT(computer-based testing)も標準化が進み,合格基準が統一される予定であることから,現在の500問の試験問題数は減じる方向で検討されている.多様な問題の出題を可能とするコンピュータ制の導入.医師国家試験としてのOSCE(objective structured clinical examination,客観的臨床能力試験)はさらに検討が必要である.

  • 北村 聖
    2015 年 104 巻 12 号 p. 2533-2538
    発行日: 2015/12/10
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル フリー

    約10年の議論を経て,平成16年から2年間の必修医師卒後臨床研修が始まった.それ以前のインターン制度や努力義務ストレート研修方式の臨床研修制度が内包していた種々の問題点を解決し,21世紀の超高齢化社会のニーズを反映した制度と考えられた.しかし,この大きな教育改革は日本の医療制度が持つ課題を顕在化させることにもなり,多くの議論が起こり,2度にわたる見直しを経て今に至っている.今後とも社会の要請に答える形で課題を乗り越えて,日本の医学教育における臨床教育の中心としてさらに充実することが望まれる.

  • 横山 彰仁
    2015 年 104 巻 12 号 p. 2539-2546
    発行日: 2015/12/10
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル フリー

    2017年から開始予定の新専門医制度は,内科領域に大きな影響を与え,認定内科医や総合内科専門医の新たな認定が廃止されるなど大きな改編が行われる.新専門医は第三者機関である日本専門医機構(以下,「機構」)によって認定されたプログラムに従って複数施設で研修を行い,学会ではなく機構によって認定される.新制度は医師ではなく国民のためのものであり,国民目線で作成され,実現可能性を勘案し定められたものであることを理解しておく必要がある.

MCQ
特別連載 新しい内科専門医制度の実施にあたって
今月の症例
  • 細尾 咲子, 森 伸晃, 松浦 友一, 森 直己, 山田 恵里奈, 平山 美和, 藤本 和志, 小山田 吉孝
    2015 年 104 巻 12 号 p. 2556-2562
    発行日: 2015/12/10
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル フリー

    40歳,女性.実子に続く感冒様症状を主訴に来院し,急性呼吸不全と血圧低下を伴う重症肺炎の診断で入院となった.血液培養および喀痰培養からA群溶血性レンサ球菌(group A streptococci:GAS)が分離され,劇症型溶血性レンサ球菌感染症(streptococcal toxic shock syndrome:STSS)と診断した.Benzyl penicillin G(PCG)とclindamycin(CLDM)による治療を開始後,薬剤性肺障害などの有害事象が生じたため,ceftriaxone(CTRX)とlevofloxacin(LVFX)に変更し,計24日間の抗菌療法により軽快した.経過中,急性腎不全を合併し,計6回の血液透析を必要とした.GASによる市中肺炎は頻度が低く,時にSTSSを合併し致死率が高い.健常人におけるSTSSの発症機序は明らかでなく,解明が待たれる.

  • 森 隆浩, 足立 太一, 田中 雅之, 小林 正樹, 千嶋 巌, 駒ヶ嶺 順平, 日比 朝子, 矢吹 拓, 加藤 徹, 上原 慶太
    2015 年 104 巻 12 号 p. 2563-2570
    発行日: 2015/12/10
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル フリー

    症例1は41歳,女性.非労作時に左前胸部と喉,左前腕に鈍痛を認め受診された.心電図変化は認めなかったが,硝酸剤点滴により症状が軽快し,急性冠症候群疑いで冠動脈造影を施行した.右冠動脈房室結節枝に90%狭窄を認め,特徴的な病変形態から特発性冠動脈解離と診断した.症例2は38歳,女性.非労作時の前頸部絞扼感を主訴に救急搬送された.心電図でST変化を認め,急性冠症候群の疑いで冠動脈造影を施行した.回旋枝後壁枝に75%狭窄を認め,病変形態から特発性冠動脈解離と診断した.

  • 川邊 万佑子, 保科 斉生, 酒井 梨紗, 内山 威人, 伊藤 秀之, 岡田 秀雄, 下条 正子, 長谷川 俊男, 川口 良人, 横尾 隆
    2015 年 104 巻 12 号 p. 2571-2575
    発行日: 2015/12/10
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル フリー

    肺結核は経気道的に散布し,一部は侵襲的に血行性,リンパ行性に播種するが,胸壁穿通することは稀である.さらに,その穿通先が結核菌抵抗性臓器の乳腺である報告は今までほとんどない.乳房腫瘤は乳癌として精査されることが多く,本症例も乳癌精査を契機に乳腺結核と診断された.

  • 佐々木 慧, 大谷 寛, 藤井 幹雄, 山田 秀樹, 大塚 信一郎, 田村 英俊, 布村 眞季
    2015 年 104 巻 12 号 p. 2576-2580
    発行日: 2015/12/10
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル フリー

    64歳,女性.3年前にリウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatic:PMR)の診断で治療開始されていた.ステロイド減量中に発熱と頭痛が出現し,精査入院.過去にPMRの指摘をされていたが,血清IgG4上昇と硬膜生検結果からIgG4関連肥厚性硬膜炎の診断とした.1 mg/kg/日のプレドニゾロンにて治療を行ったが寛解せず,パルス療法にて症状は著明に改善した.

  • 巽 恵美子, 紙谷 史夏, 吉本 清巳, 藤村 貴則, 藤本 隆, 早川 正樹, 松本 雅則, 赤井 靖宏, 西尾 健治
    2015 年 104 巻 12 号 p. 2581-2588
    発行日: 2015/12/10
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル フリー

    症例は26歳女性,顔面と下腿の浮腫を主訴に近医受診し,血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura:TTP)との診断のもと,血漿交換が施行され,ADAMTS13活性が上昇したにもかかわらず,血小板数が再低下し当科へ紹介となった.分析によりADAMTS13のインヒビターは存在せず,ADAMTS13の非中和抗体によるTTPであり,ループス腎炎によるネフローゼ症候群も合併していることが明らかとなった.その後も破砕赤血球の出現を伴う血小板低下が出現し,SLE(systemic lupus erythematosus)の血管内皮傷害による血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy:TMA)と診断した.ステロイドのパルス療法とエンドキサンパルス療法にてTMAの再燃を徐々に抑制することができ,軽快退院となった.TMAの原因を判断しながら加療することが重要と考えられた.

  • 杉浦 健太, 高橋 有紗, 久保 亨, 谷岡 克敏, 森田 ゆかり, 大崎 康史, 山崎 直仁, 古谷 博和, 北岡 裕章
    2015 年 104 巻 12 号 p. 2589-2594
    発行日: 2015/12/10
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル フリー

    難聴,低身長,糖尿病のある66歳,男性.心不全症状を自覚し,心エコー検査で両心室の軽度肥大と高度の左室収縮能低下が認められた.病歴からミトコンドリア病に伴う心筋障害を疑い,最終的には遺伝子検査にてミトコンドリア病と診断した.ミトコンドリア病は多臓器に症状を来たす疾患であり,本症の部分症状として心筋症が認められることがある.原因不明の心筋障害に加え,難聴や低身長など,心臓,神経,脳,骨格筋といった多臓器にわたり症状を認める場合には,高齢者であってもミトコンドリア病も鑑別に挙げるべきである.

医学と医療の最前線
  • 亀井 聡
    2015 年 104 巻 12 号 p. 2595-2601
    発行日: 2015/12/10
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル フリー

    脳炎は迅速・適切な治療が必要なneurological emergencyである.最近の単純ヘルペス脳炎(herpes simplex virus encephalitis:HSVE)の治療は,第一選択薬のアシクロビルの投与期間が2~3週間に延長している.一方,免疫能正常宿主でもアシクロビル耐性HSVEは存在し,その場合,thymidine kinaseを介さない抗ウイルス薬を要する.副腎皮質ステロイド薬併用の有用性は多施設無作為二重盲検が進行中である.若年成人女性に好発する脳炎で,卵巣奇形腫との関連が指摘されている抗N-methyl-D aspartate(NMDA)受容体脳炎が知られてきている.特徴的な臨床像を呈し,NMDA受容体のNR1 subunitに対する抗体により受容体がdown regulationを呈し,精神症状や多彩な認知機能障害を発症する.治療は,卵巣奇形腫など腫瘍がある場合,早期外科的切除を行い,併せてfirst lineの免疫療法(副腎皮質ステロイドパルス療法,免疫グロブリン大量療法,血漿交換療法)を開始する.改善が乏しい場合はsecond lineとしてcyclophosphamideやrituximabを開始する.

  • 葛谷 雅文
    2015 年 104 巻 12 号 p. 2602-2607
    発行日: 2015/12/10
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル フリー

    サルコペニア,フレイルは,超高齢社会の日本では要介護状態に至る重要な要因として位置づけられ,健康寿命の延伸を目指すうえでも大切な病態である.これらは地域高齢者の10~30%程度の有病(症)率と考えられており,身近に存在する老年症候群であり,高齢者診療にあたる場合は,この存在に注意を払い,基準に合わせて診断する必要がある.サルコペニア,フレイルは予防が可能であることと,早期に発見することにより介入効果が期待できることもあり,一般診療で早期に発見し適切に介入することが重要である.

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