日本内科学会雑誌
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104 巻, 6 号
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内科学会NEWS
目次
特集 COPD(慢性閉塞性肺疾患);内科医の診断と治療の向上を目指して
Editorial
トピックス
I.COPD の疫学と予防:健康日本 21(第2 次)を中心に
II.プライマリケア医におけるCOPD診断
III.COPD 病態・治療
  • 鈴木 雅, 西村 正治
    2015 年 104 巻 6 号 p. 1074-1081
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2016/06/10
    ジャーナル フリー
    慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)は,タバコ煙を主とする有害物質の吸入により気流閉塞を来たす疾患である.その病態は完全には解明されていないものの,多くの視点からの研究成果が近年報告されている.本稿では,病理形態学的研究(末梢気道病変と気腫性病変の関係),分子生物学的研究(COPDの分子メカニズム),臨床観察研究(phenotypeとバイオマーカー)の各観点から,COPDの病態に関する最近の話題を提供する.
  • 浅井 一久, 渡辺 徹也, 栩野 吉弘, 鴨井 博, 平田 一人
    2015 年 104 巻 6 号 p. 1082-1088
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2016/06/10
    ジャーナル フリー
    喘息―COPDオーバーラップ症候群(ACOS)の頻度は,慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の20~50%程度にみられる.ACOSの喘息がコントロール不良で喘息発作を繰り返す場合,呼吸機能の悪化が早く,予後不良となる.禁煙,気管支拡張剤を中心とする薬物治療に加えて,吸入ステロイド薬(inhaled corticosteroid:ICS)を基本薬として長時間作用性気管支拡張薬の併用が有用である.本稿では,ACOSの病態や治療方法につき述べる.
  • 金子 猛
    2015 年 104 巻 6 号 p. 1089-1097
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2016/06/10
    ジャーナル フリー
    慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)は,他疾患を併発することが多い.これらの疾患(併存症)はCOPDの重症度やQOL(quality of life),生命予後に影響を及ぼすため,併存症の予防と治療が極めて重要になる.生命予後に影響を及ぼし,死亡原因として特に重要な併存症は,心血管疾患(虚血性心疾患,心不全,心房細動)と肺癌である.軽症のCOPDにも併存症が存在している可能性があり,COPDを全身性疾患としてとらえ,常に併存症の存在を念頭に置いた診療を行うことが重要である.
  • 橋本 修
    2015 年 104 巻 6 号 p. 1098-1107
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2016/06/10
    ジャーナル フリー
    増悪は,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)の安定期の炎症に細菌・ウイルス感染あるいは大気汚染物質の気道内への侵入により生じた炎症が付加され,咳・痰および呼吸困難の出現,あるいは増強,呼吸機能の低下などを認め,COPDの病態に影響を及ぼす.増悪時の症状の出現は急激(急性)のみならず緩徐な出現もあり,注意を要する.増悪を的確に診断し,予防に主眼を置いた治療が重要である.
  • 一ノ瀬 正和
    2015 年 104 巻 6 号 p. 1108-1114
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2016/06/10
    ジャーナル フリー
    安定期の慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)患者に対する治療は,禁煙指導,インフルエンザワクチン接種,呼吸リハビリテーションといった非薬物療法と,長時間作用性気管支拡張薬を中心とした薬物療法である.患者重症度を呼吸機能(1秒量)に,労作時呼吸困難に代表される症状の強さ,運動能力,身体活動性,さらには増悪頻度といった患者の特性を加味して判定し,治療を加算していく.特に薬物療法は,患者症状やQOL(quality of life)の改善といった現在の状態の改善のみならず,COPD増悪減少,疾患進行抑制,あるいは死亡率低下といった患者の将来的なリスクも抑制する.治療効果はより早期で顕著であるため,早期診断,さらには薬物療法に呼吸リハビリテーションも加え,COPD患者の身体活動性を上げるような早期医療介入が望ましい.
  • 三嶋 理晃
    2015 年 104 巻 6 号 p. 1115-1121
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2016/06/10
    ジャーナル フリー
    我が国のCOPDの死亡数は増加の一途をたどっているが,高齢化の影響が大きい.生命予後を左右する因子として,気流閉塞の程度,身体活動性,気腫病変の程度,増悪の頻度などが挙げられる.また,循環器疾患,糖尿病,骨粗しょう症などの併存症の存在も予後因子として重要である.予後を改善する治療法として,ワクチン,気管支拡張薬などの薬物療法,在宅酸素療法,非侵襲的陽圧換気,肺移植,包括的リハビリテーションなどが挙げられる.
IV.高齢者の気道閉塞性疾患の病態と治療
座談会
MCQ
特別連載 新しい内科専門医制度の実施にあたって
今月の症例
  • 寺田 真, 中馬越 清隆, 玉岡 晃
    2015 年 104 巻 6 号 p. 1160-1166
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2016/06/10
    ジャーナル フリー
    片麻痺,意識障害,痙攣を来たした17歳,男性.頭部MRI T2WIで両側前頭葉皮質,大脳基底核に多発する高信号域,脳血管造影で両側ACA近位部に分節性の血管狭窄がみられた.RCVSとの鑑別に苦慮したが,髄液異常があり,発症3カ月後でも血管狭窄が残存したことからPACNSと診断した.両側性,複数の血管支配域におよぶ若年性脳梗塞ではPACNSを鑑別に挙げ,髄液検査と脳血管造影を施行する必要がある.
  • 小泉 忠史, 古家 乾, 馬場 英, 定岡 邦昌, 関谷 千尋, 服部 淳夫
    2015 年 104 巻 6 号 p. 1167-1174
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2016/06/10
    ジャーナル フリー
    症例は60歳代,インド国籍の男性.2カ月前からの水様性下痢で12 kgの体重減少を認めたため,当科を初診した.初診5日後には脱水による腎機能の悪化を認め,入院となった.血液検査,検便検査,大腸内視鏡検査では特記すべき所見はなく,CT検査では膵の軽度の萎縮を認めた.薬剤等によるcollagenous colitisやceliac spurue,膵外分泌機能不全による下痢を考え加療するも,症状の改善を認めなかった.下痢が出現する約1年半前にオルメサルタンの内服が開始となっていたため,同剤によるenteropathyを疑い,同剤を休薬したところ,水様性下痢は速やかな改善を認めた.重症の下痢症の原因の1つとして記銘すべき疾患と思われた.
  • 伊勢 孝之, 高木 恵理, 岩瀬 俊, 楠瀬 賢也, 山口 浩司, 八木 秀介, 山田 博胤, 添木 武, 若槻 哲三, 佐田 政隆
    2015 年 104 巻 6 号 p. 1175-1179
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2016/06/10
    ジャーナル フリー
    心臓サルコイドーシスの標準的治療はステロイドであるが,ステロイドを投与中であっても再燃を認めることも多く,またステロイドの多岐にわたる副作用も問題となることが多い.症例は70歳代,女性.心臓サルコイドーシスの診断でプレドニンを維持量5 mg/日で加療されていた.定期検査で施行した心電図で陰性T波,前壁心尖部に新規の左室壁運動異常を認めた.FDG-PET,Gaシンチグラフィーで壁運動異常部位に一致して集積を認め,心臓サルコイドーシスの再燃と判断した.本症例では,ステロイドの副作用として糖尿病,肥満,白内障などを認めており,ステロイド増量が躊躇され,メトトレキサートの併用を開始した.メトトレキサート開始後,特に副作用を認めず,心電図ならびに左室壁運動異常の改善が認められた.ステロイド投与で再燃を認める心臓サルコイドーシス症例にはメトトレキサート併用も考慮すべきであると考えられた.
医学と医療の最前線
  • 清井 仁
    2015 年 104 巻 6 号 p. 1180-1188
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2016/06/10
    ジャーナル フリー
    急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)の発症・進展には,細胞増殖の促進に関与する遺伝子変異と細胞分化を阻害する遺伝子変異が蓄積することが必要とされてきた.次世代シークエンサーによるゲノム解析技術により,DNAやヒストンのメチル化状態などのエピジェネティック制御に関与する遺伝子,RNAスプライスに関与する遺伝子,娘染色体の安定化に関与するcohesin複合体遺伝子など,新たな機能分子をコードする遺伝子の変異が明らかにされ,より複雑な分子機構がAMLの発症・進展に関与していることが示唆されている.しかし,それら同定された変異遺伝子個々の生物学的意義はほとんど明らかにされていない状況であり,さらなる研究と複数の遺伝子変異の協調的意義に対する解明が待たれている.一方,分子病態に基づく診断基準,予後層別化,標的治療薬をはじめとする個別化治療への実用化も進んでいる.本稿では,AMLにおける遺伝子異常と予後層別化システムへの応用について概説する.
  • 阿南 英明
    2015 年 104 巻 6 号 p. 1189-1196
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2016/06/10
    ジャーナル フリー
    自然災害多発国である我が国の内科医にとって,災害医療ヘの参加は避けて通ることはできない.大規模震災の発生によって,日常対応している慢性病を患う患者は大きな医療需要としてのしかかるのである.急性期には医療機関に入院している患者,外来受診中の患者の安全確保から始まって,在宅酸素療法・人工呼吸器装着患者への対応は緊急を要する.亜急性期に向けて,途絶を避けなくてはならないインスリン療法など多くの病態や薬物療法に対応しなくてはならない.また,避難所での公衆衛生学的観点からの避難者健康管理も求められる.長期化する避難生活の中で,仮設住宅での生活不活発病を念頭に置いて,新たな疾患発生に対する予防医学的介入が重要である.慢性期には平時と同様のきめ細かい専門診療科対応を含めた調整を行う必要性も高まる.適切な時・場所・人・ものを明確化する適切な情報をもとに,適切な調整ができるように「6つのR」を意識したコーディネート体制の中で支援活動が継続されるのである.
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シリーズ:患者中心のメディカルホームとは何か?~ヘルスケア供給システム再構築への示唆~
第10回東北支部専門医部会教育セミナーまとめ
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