喘息と鼻副鼻腔炎は密接な関係があり,“one airway, one disease”という概念が提唱されている.喘息患者の多くがアレルギー性鼻炎や花粉症,慢性副鼻腔炎を合併していることが報告されているが,その病態には,上気道の閉塞や,上気道と下気道の免疫応答の相同性が関係している.実臨床においては,長引く咳嗽の診断には,耳鼻咽喉科領域の知識も必要である.また,重症喘息の治療では,鼻副鼻腔炎の治療が喘息症状の改善にも寄与することが知られている.内科医には,耳鼻咽喉科と連携して,包括的アレルギー診療を実践することが求められている.
One airway one diseaseの基本概念によると,耳鼻咽喉科領域におけるアレルギー性鼻炎は,下気道の喘息と臨床的,病態論的に相互に関連して総合的に扱われることが一般的となっている.アレルギー性鼻炎に対する早期治療は,喘息などのアトピー疾患全般によい影響をもたらす.近年,難治性好酸球性である好酸球性副鼻腔炎とアスピリン喘息などの非アトピー型喘息との合併もこの概念に含める傾向がある.
アレルギーの関与する皮膚疾患でも原因抗原の回避と症状の制御が必要であるが,特定の外来抗原によるアレルギー性の蕁麻疹,接触皮膚炎,ラテックスアレルギーでは原因抗原の同定と回避が,アトピー性皮膚炎,特発性の蕁麻疹では薬物治療による症状の制御がより重症である.また,具体的な治療目標は疾患ないし病型によって異なり,個々の症例と場面ごとの課題と専門医に送るタイミングを正しく理解しておくことが必要である.
小児のアレルギー疾患は,アレルギーマーチといわれるように,時期を異にして多臓器に発症する.喘息は乳幼児ではウイルス性喘鳴との鑑別が容易ではないが,学童期以降になると成人と同様に診断できる.ただ,吸入ステロイド薬の使用量やコントロール状態の基準が小児と成人で異なる点に留意する.思春期の患者が内科に移行した際には,小児期の経過を把握し,改めて患者・医師関係を構築することが大切である.
アレルギー性結膜炎を中心に,診断・治療のポイントについて述べた.主症状は目のかゆみであり,眼局所のアレルギーの診断には,涙液IgE検査が有用である.治療の第一選択は抗アレルギー点眼薬で,症状が治まらないときにステロイド点眼薬を併用する.ステロイド点眼薬には眼圧上昇という副作用があり,使用中には眼圧チェックが必要である.花粉症のセルフケアには,外出時の眼鏡装用,人工涙液による洗眼を勧めている.
食物アレルギーは,特定の食物摂取時に症状が誘発されることと,それが特異的IgEなどによる免疫学的機序を介する可能性の確認によって診断される.食物アレルギーの最も確実な診断法は,食物経口負荷試験である.一般内科医が遭遇する可能性のある症例において専門医にコンサルトするタイミングは,①小児期発症の食物アレルギーの診断の見直しが必要な場合,②耐性獲得確認のための食物経口負荷試験が必要な場合,③患者,家族が経口免疫療法を希望する場合,④原因不明のアナフィラキシーを繰り返す場合などである.
アレルギー疾患には,気管支喘息発作やアナフィラキシーショックのように救急対応を必要とする疾患がある.その対応は,直ちに症状などから重症度を把握し,それに応じた治療を適切に素早く行うことであり,普段からガイドラインを理解し,治療手順に習熟しておく.喘息死は近年,急激に減少したが,依然,年間約1,500人死亡している.その防止には,発作時の適切な対処とともに,普段から良好なコントロール状態に保つことが重要である.
アレルゲン免疫療法(allergen immunotherapy)(減感作療法)の話題を挙げると,注射薬としては標準化ダニアレルゲン製品が2015年に登場,また,舌下薬としてはスギおよびダニアレルゲンがアレルギー性鼻炎に対して使用可能となっている.分子標的薬については,すでに臨床に導入されている抗IgE抗体に加えて,抗IL(interleukin)-5抗体も重症喘息に対して使用可能となったところである.本稿では,これらの新しい製剤の意義を示しつつ,アレルギー疾患の免疫療法と分子標的薬について概説したい.
70代,男性.肝機能異常にて当科を受診した.自己免疫性膵炎と診断したが,腹部CTで終末回腸の壁肥厚も指摘された.CFを施行し,同部の生検組織で多数のIgG4陽性形質細胞浸潤を認めた.小腸病変を合併した自己免疫性膵炎と診断し,治療にて画像所見,病理組織所見ともに改善した.自己免疫性膵炎の膵外病変が指摘されるにつれ,IgG4関連疾患の概念が提唱されているが,小腸病変の報告は少ない.膵外病変にも留意し,精査することが重要である.
74歳,女性.健康診断の胸部単純CTで両側多発肺囊胞を指摘され,当科を受診.13年前に気胸の既往歴があり,問診で気胸・肺囊胞の家族歴があることが判明したため,Birt-Hogg-Dubé症候群(Birt-Hogg-Dubé syndrome:BHDS)を疑いFolliculin(FLCN)遺伝子の検索を行い,診断が確定した.また,初診時より呼吸機能低下を認め,抗コリン薬による治療を開始したところ,呼吸機能の改善がみられた.
後天性凝固因子欠乏症は凝固因子に対する自己抗体(インヒビター)の出現により,当該因子の活性が著明に低下する後天性出血性疾患である.大部分の症例は第VIII因子に対するインヒビターであり,第V因子インヒビターは極めて稀である.我々はIgG4関連疾患に後天性凝固第V因子欠乏症を合併した症例を経験し,IgG4と第V因子インヒビターとの関連性について考察を加えた.
39歳,女性.血尿を主訴に来院.来院1年前に高血圧を指摘され,腹部造影CTで膀胱および左腎門部に腫瘤性病変を指摘された.第3子に膀胱パラガングリオーマ(paraganglioma:PG)の既往あり,第3子と本患者でSDHB変異を認めていたことからPGを疑った.精査の結果,膀胱および左腎門部PGと診断し,手術療法を施行した.術後,再燃兆候認めず.SDHB変異陽性PGは,悪性化,再発リスクが高く,慎重な経過観察を要する.
循環器領域におけるMRIやCTなどの非侵襲画像診断法は近年著しく進歩している.シネMRIは,左室だけでなく右室の壁運動や容積を,心エコーよりも高い再現性をもって評価できる.また,心筋の遅延造影MRIは心筋線維化などの組織性状の診断に優れており,複数のMRI撮影法を組み合わせることにより,各種心筋疾患の病態を総合的に診断することが可能となる.心臓MRIによる予後予測における有効性も多くの研究で示されており,心臓MRIは心不全患者や各種心筋症が疑われる患者において欠くことのできない検査法となっている.遅延造影MRIの弱点はびまん性の心筋線維化を検出できないことである.最近では,心筋線維化の程度を定量的に評価できるT1 mapping法が開発され,心筋疾患の有無と重症度を客観的に評価することが可能となっている.
・2025年,日本は超高齢社会を迎え,医療から介護への転換,病院完結型から地域完結型への転換が図られる.「地域包括ケアシステム」,「地域医療構想(ビジョン)」では機能分化と同時に医療連携の推進が重要である.ソーシャルワーカーは重要な役割を担うことから,人材の確保と教育,研修システムの構築が必要である.・退院支援は超高齢社会において重要性が高まり,施設間移動時における退院医療の意図的な取り組みが望まれる.・病院内の支援業務である退院支援・紹介受診・外来逆紹介・外来療養支援は相互に関連し,病院運営に欠かせない重要な役割を有している.・医療情報の共有にICTは有益なツールとなる.医療と介護の情報共有には必要な情報に差があることから障壁となっており,その対策が必要である.・国際医療連携では,言葉の壁や医療費,感染対策への対応が重要である.
筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)は選択的な運動ニューロン変性を来たし,神経疾患の中でも最も過酷な疾患とされる.現在,認可されている治療薬は2剤のみであり,いずれを用いてもその進行を止めることはできない.早期に病因の解明と有効な治療法の確立が求められている.ALS発症者の約5%は家族内で発症がみられ,家族性ALSと呼ばれるが,1993年にその一部の原因遺伝子がCu/Zn superoxide dismutase(SOD1)であることが報告された.その後,TAR DNA-binding protein(TDP-43)やfused in sarcoma/translated in liposarcoma(FUS),C9ORF72など多くの原因遺伝子が報告されたが,この遺伝子変異を導入したiPSあるいは動物による疾患モデルの病態解析および治療法の開発が進んでいる.東北大学では肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor:HGF)を用いた治療法の開発を行っている.