51歳,男性.腰痛後に両下肢麻痺を自覚し,CTやMRIで脊椎への浸潤を伴う左上葉の空洞影を認めた.CTガイド下生検,気管支鏡検査を行うも確定診断を得られず,除圧・生検目的に手術を行い,真菌による硬膜内髄外膿瘍と診断した.Liposomal amphotericin B(L-AMB)アムホテリシンBを投与したが,薬剤性腎障害を発症し,fosfluconazoleに変更し,その後は悪化を認めなかった.肺から脊椎への直接浸潤を来たす疾患として真菌症も鑑別に挙げる必要がある.
22歳,日本人男性.18日前からの発熱,皮疹および肝機能障害で当院へ紹介入院となった.38℃台の発熱,顔面を含む全身の紅色皮疹,表在リンパ節腫脹,肝機能障害,異型リンパ球を伴う白血球増多があり,経過中,ヒトヘルペスウイルス6(human herpes virus 6:HHV-6)の再活性化が確認されたため,薬剤過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome:DIHS)と診断した.症状出現5週間前からのトリクロロエチレン(trichloroethylene:TCE)曝露が判明し,TCEによるDIHSと判断した.パルス療法を含むステロイド投与で治癒した.
厚生労働省は,今後さらなる国民の健康増進を図るため,公衆衛生学的観点から健康診査等について検討することを目的として,平成27(2015年)年9月14日に健康診査等専門委員会を設置した.同委員会は,種々の検討を経て健康診査等の満たすべき要件を取りまとめた.これは4カテゴリー・14項目で構成され,「健康診査の導入前にすべての要件を満たすことが望ましい」とした.カテゴリー「健康事象」ではその疾病・リスクが公衆衛生上重要であることなど,同「検査」では検査の精度と有効性が明らかでカットオフ基準が合意されていることなど,同「事後措置(治療・介入)」では,精密検査や事後措置の対象者選定や方法が確立していることなど,同「健診・検診プログラム」では臨床的・社会的・倫理的に許容されること,起こり得る身体的・精神的不利益よりも利益が上回ることなどを要件とした.
日本ではここ数年で膵神経内分泌腫瘍の診断治療に関して多くの新たな展開があった.まず,診断および治療効果判定のバイオマーカーとして,クロモグラニンAの有用性が日本でも示された.一方,膵神経内分泌腫瘍に対する診断および治療においては,WHO(World Health Organization)分類2010によるgradingおよび正確な組織診断が重要であり,腫瘍の機能性の有無,進達度,転移の有無を正確に評価して治療戦略を立てることが重要である.組織診断において超音波内視鏡下穿刺吸引法(endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration:EUS-FNA)が普及し,正確な病理診断および組織に見合った治療が可能となった.さらには,遺伝子変異の有無の評価もできるようになった.一方,Ki-67指数が20%を超える高分化型NET(neuroendocrine tumor)症例も確認され,治療反応性も低分化型NEC(neuroendocrine carcinoma)と異なるため,新たにNET G3という概念が提唱された.多くの神経内分泌腫瘍にはソマトスタチン受容体2が発現しているが,それを利用したソマトスタチン受容体シンチグラフィが承認され,局在診断,遠隔転移の検索,治療効果判定などに貢献し始めた.最後に,治療戦略においては肝転移をいかに制御できるかである.新規分子標的薬の登場により,進行性膵神経内分泌腫瘍の予後が飛躍的に向上している.