特発性炎症性ミオパチーに関する病態が明らかになりつつあり,筋炎の分類の再整理がなされている.免疫介在性壊死性ミオパチーは自己免疫性筋炎(または特発性炎症性ミオパチー)の一種であり,病理学的には活動性の筋線維の壊死・再生を特徴とし,血清学的には抗SRP抗体および抗HMGCR抗体が特異性の高い自己抗体として知られている疾患である.成人発症が多いが,小児例も存在する.特に若年発症例では,筋ジストロフィーと誤診され,治療開始が大幅に遅れてしまう例がしばしば存在することに注意が必要である.現在はグルココルチコイドを中心とした免疫抑制剤の多剤併用療法が中心であるが,病態に基づいた治療も考案されており,新たな治療の登場が期待される.
封入体筋炎は,中高年者に発症する特発性炎症性筋疾患であるが,他の筋炎とは異なる臨床病理学的特徴を示す.本疾患は,非対称性の手指屈曲筋と膝伸展筋にアクセントのある筋力低下の分布と,炎症と変性が混在する筋病理学的変化が特徴的である.超高齢社会において患者数の増加が予測されるが,現時点では治療法は確立されていない.早期診断法の確立および包括的な病態理解に基づいた効果的な治療法の開発が必要である.
免疫関連有害事象の筋炎は免疫チェックポイント阻害薬の開始早期に発症する.体幹・四肢近位筋優位の筋力低下と筋痛に加えて,眼瞼下垂や複視など重症筋無力症を疑う症状を呈する.血清クレアチンキナーゼは著明な上昇を認める.ステロイドが有効であり軽症例では直後から効果が出現するが,中等症以上では筋力回復に数カ月かかる場合がある.重症筋無力症や心筋炎の合併例は極めて重篤であり,適切な管理が必要である.
Duchenne型/Becker型筋ジストロフィー(DMD/BMD)は,DMD遺伝子の変異によりジストロフィンが欠損するために骨格筋が進行性に障害されるが,呼吸筋,心筋,そして中枢神経系にも障害を生ずる致死性の神経難病である.原因遺伝子が同定されてから30年以上を経過した現在,ジストロフィンタンパク質の発現回復やジストロフィン欠損に伴う病態機序にもとづく治療薬の開発が進み,薬事承認が得られている.
筋強直性ジストロフィーは多臓器疾患で,医療のコンプライアンスも不良なため生命予後の改善が乏しかった.しかし,治療開発が進む中で,患者登録や市民公開講座を通じた患者・医療者・研究者とのコミュニケーションやピアサポート環境の発展,診療ガイドラインによる標準的医療の普及などで環境が変わりつつある.ドラッグ・ロスを防ぐためには,全ての関係者が協力して治験を確実に遂行して行くことが重要である.
筋ジストロフィーや多発筋炎といった多くの筋原性疾患(ミオパチー)は一般的には躯幹やそれに近い近位筋に優位な障害を認める.それに対して前腕や下腿といった四肢の遠位筋が優位に障害を受けるミオパチーを,遠位型ミオパチーと呼ぶ.本稿では代表的な遠位型ミオパチーの診断及び最近,我が国で開発され承認となった縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーに対するアセノイラミン酸治療の開発経緯について取り上げる.
脳卒中様発作を特徴とするミトコンドリア病MELASの原因変異m.3243A>GはミトコンドリアのロイシンtRNA遺伝子領域に生じ,正確なコドンの解読に必須なアンチコドンにおけるタウリン修飾の欠損をもたらす.その結果呼吸鎖複合体の合成が障害され,ミトコンドリアのエネルギー産生不全を来す.分子病態が解明されたことからタウリン補充療法の医師主導治験が実施され,初の保険適用薬として承認された.
オートファジーでは細胞内のリソソームが中心的な役割を担う.オートファジー関連筋疾患はリソソーム異常に起因し多数の自己貪食空胞が出現する.本稿では,原発性リソソーム機能障害であるPompe病とDanon病を概説する.いずれもミオパチーとともに重症心筋症をきたすことから,臨床的に重要な疾患である.Pompe病は酵素補充療法で画期的な改善が見込まれる.Danon病は心臓移植が根治療法であるが,近年臨床試験が開始された.
70歳,男性,来院8日前からの腹痛と嘔吐で受診した.CTで胃の拡張と十二指腸水平部の狭窄を認め,MRIで十二指腸水平部の壁外の漿膜下層が肥厚していた.病変は後腹膜に限局するため組織採取は困難であり,十二指腸狭窄を来した特発性後腹膜線維症と考えた.診断的治療としてステロイド0.6 mg/kgで開始し,狭窄は改善した.特発性後腹膜線維症に対するステロイド治療は,組織診断がつかないデメリットがあるが有効な選択肢であると考える.
29歳,女性.潰瘍性大腸炎に対して青黛投与中に肺高血圧症を発症した.薬剤性の肺高血圧症を疑い,被疑薬の中止と,肺血管拡張薬の投与を行った.長期の青黛投与期間のためか,肺血管拡張薬への反応性は良好とはいえない.青黛内服中の潰瘍性大腸炎患者では肺動脈性肺高血圧症の可能性を常に考慮し,症状聴取や定期的な心電図検査や心臓超音波検査などを行うことが重要である.肺高血圧症が疑われる場合には,右心カテーテル検査を施行し確定診断を得ることが肝要である.
さまざまな医薬品の安定供給が危機に瀕している.抗菌薬に関しては2019年にセファゾリンの供給停止が起こり,その後,供給は改善してはいるものの,他の抗菌薬にも問題が波及している.抗菌薬に限らず全般的に薬価が低く抑えられ,コストの低い海外生産への依存度が高まったことも,その要因のひとつとなっている.それに対して日本化学療法学会などは安定供給に関する要望書を提出し,厚生労働省は関係者会議を発足させ,安定確保医薬品を選定した.さらに国は特定重要物資として抗微生物薬を指定し,2025年にはβ―ラクタム系抗菌薬の原薬の国産化が実現する見込みである.医薬品の安定供給問題は複合的な要因で起こっているため,その解決は簡単ではないが,人の生命にも関わる重要な事項であり,さらに積極的な問題解決への取り組みが必要である.
ミトコンドリア腎症とは,ミトコンドリアDNAもしくは核DNA上の遺伝子の病的バリアントにより,腎臓を構成する細胞におけるミトコンドリア呼吸鎖複合体の酸化的リン酸化が異常を来すことにより発症する遺伝性腎疾患である.ミトコンドリア腎症においては,巣状分節性糸球体硬化症となり蛋白尿(時にネフローゼ)を呈する症例だけでなく,尿細管機能障害による電解質異常や尿細管間質組織障害による腎機能低下を呈する症例も報告されており,臨床像は多彩である.一方,腎構成細胞における酸化的リン酸化が遺伝的に障害されていなくても,2次的な腎症がミトコンドリア病において起きる場合もあることには注意を要する.近年,ミトコンドリア腎症の診断プロセスは確立されてきており,新たな原因遺伝子の報告も増えている.治療法は確立されたものは現時点ではないが,有効性が期待されるものが報告されてきている.本疾患に関する知見の普及が,早期診断に繋がり,新規治療法の開発に繋がると確信する.