日本内科学会雑誌
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49 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 桜井 真
    1960 年 49 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 1960/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    脳動脈硬化症の臨床的診断は現状においてまだ困難であるが,脳循環測定による診断方法が最も確実であるという観点に立ち,高血圧を伴なう脳動脈硬化症の自覚症状を検討するとともに,年代別に自覚症状と脳循環の関係を比較し各症状の成因について検討を加えた.その結果,脳動脈硬化症と最も関係の深い自覚症状は,めまいおよび記銘力障害であり,不眠,肩こり,頭重感も関係することを明らかにした.頭痛は年代によりそれぞれ異なつた特異の脳循環動態を示した.また高血圧症における自覚症状の成因を年令別に検討すると,若年群では脳血管の機能的攣縮が,老年群では脳動脈硬化による脳代謝の低下が最も関連していることが認められた.
  • 榎本 新市
    1960 年 49 巻 1 号 p. 14-21
    発行日: 1960/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    感染症の抗生剤治療に及ぼす副腎ステロイドの影響をみる目的で, Goodnerの方法に倣い家兎皮内に肺炎球菌I型を接種した.これにペニシリン(以下Pc)およびコーチゾン(以下CS)の単独あるいは併用治療を実施した.(1)菌接種2時間後に少量のPcと大量のCSとの併用では,局所所見に若干の効果をみるが,菌血症は助長される.(2)同様,大量のPc単独治療では,菌血症はみられず,局所所見も軽度ではあるが,なお滲出性変化が明らかにみられる.(3)同様, PcとCSともに大量の併用では,菌血症の助長をみず,しかも局所所見に対し著しい効果を示し滲出性変化は全く認められない.(4)菌接種後24時間では, Pc, CSともに大量の併用を行なつても好影響は得られなかつた.結論的には, Pc, CSの併用は感染早期に,しかもPc, CSともに大量使用した場合にのみ好影響を得ることができる.
  • 平敷 安正
    1960 年 49 巻 1 号 p. 22-29
    発行日: 1960/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    ヒト及びウサギを対象にストレプトマイシン1回大量経口投与を行なつて,投与前後における,血中アドレナリン増感物質の検出,アドレナリン皮内反応,同皮下注射試験及び血小板の変動観察等を行なつた結果,生体にストレプトマイシンを経口投与する時には,大腸菌等の腸管内細菌が死滅崩壊して,その菌体内成分が腸管より吸収されて生体に一聯の影響を与え,特にその際血管内皮細胞を障害し,又生体はアドレナリンに対する感受性を高めるという事実を確認した.
  • 家兎空洞および胸部諸臓器よりのI131甲状線摂取率について
    川俣 宗夫
    1960 年 49 巻 1 号 p. 30-41
    発行日: 1960/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    空洞壁の透過性について,当教室では種々の見地よりこれ(ガス体・固体)を実証しつゝあるが,著者は山村法によつて生成した実験家兎空洞内に注入したI131 (5μc/Aq. dest. 0.5cc)の甲状腺摂取率をScintillation CounterおよびRatemeterで24時間連続測定し,これより間接に空洞壁の液体透過性を実証しようとした.同様の方法で気管支壁・肺実質ならびに肋膜腔の胸部諸臓器およびその他よりの摂取率と比較対照した.その結果,明らかに空洞壁には液体透過性があり,その吸収能は気管支壁・肋膜腔および肺実質には劣るが,大体胃壁のそれと同程度であることを知つた.また,その透過性は被検家兎の体重とは無関係で,主として空洞が新しい場合はその古いのに比して,大きいことなどの事実を明らかにした.
  • 池 芳彦
    1960 年 49 巻 1 号 p. 42-49
    発行日: 1960/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    実験的肺水腫は実に多数の研究者達により研究されているが今だその発生因子或いは治療その他について充分明らかでない.著者は第1編において簡単にしかも確実に発生させ,あたかもヒトにおける急性肺水腫の如き症候を示す白鼠Adrenaline肺水腫を発生させ,肺体係数,死亡率及び肺病理組織標本より観察して,最低致死量が静注にて0.5mg per kgであることを決定した. Adrenaline静注量が増えれば増える程肺病理標本では肺出血の像がつよくなり,このAdrenaline肺水腫が血行動態的に成立することを推定した. なお各種麻酔剤のAdrenaline肺水腫に対する態度よりこの肺水腫は中枢神経性にも変容される事を知つた.
  • 池 芳彦
    1960 年 49 巻 1 号 p. 50-55
    発行日: 1960/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    第1編においてAdrenaline肺水腫(以下ア肺水腫と略す)は血行動態的に成立し,その極点の形態においては肺出血となる事を明らかにしたが,其の血行動態の変化が如何なるものであるかに関しては未解決のまゝ残しておいた.しかし第1編でも既に述べたように,肺水腫を起こしている肺の一つの大きな特徴は肺重量が著明に増加している事であり,この事が成立する為には少なくとも肺に入る血流量の方が肺より出る血流量よりも大でなければならない.ところで肺に出入する血量の不均衡は肺血管自体の変化-例えば透過性の亢進-に従属して起こるか,或は逆に肺血管の変化が肺に出入する血量の不均衡の結果であるかの何れかでなければならない.Paine5)がア肺水腫において肺動脈圧,肺毛細管圧,肺静脈圧の上昇を観察しているが,これはこの二者択一の後者を支持するように思われる.そこでア肺水腫は静脈還流の相対的増加(肺からの血液の流出阻止に比して静脈還流が過大になる)の結果起こるのであり,従つて逆に静脈還流を阻止する事によつてア肺水腫を防止出来るのではないかと云う一つの仮説が生れる.本編において論じようとするのはこの仮説の吟味である.
  • 池 芳彦
    1960 年 49 巻 1 号 p. 56-63
    発行日: 1960/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Adrenaline肺水腫は血行動態的に成立し特に静脈還流の相対的増加が関係することはすでにのべたが,第3編においては特に肺のoutflowの面よりも考察し,各実験群における血圧,心拍数よりAdrenaline肺水腫を分析した.そして頚動脈洞破壊, Adrenaline反復注射がAdrenaline肺水腫を阻止し,又股動脈結紮がAdrenaline肺水腫を促進することより調圧神経反射が過大なAdrenalineによる危機的状況においては肺水腫に対して促進的に働くことを結論した.又Adrenaline静注時の心拍数曲線を第1徐拍期,及び第2徐拍期に分かち,第1徐拍期は従来より云われている如く調圧神経反射に基づぐものである事を確認した.
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