正常家兎の血清鉄,肝・脾・骨髄・胃粘膜・小腸・大腸・腎皮質の非ヘミン鉄,骨髄全鉄,血球鉄の代謝を追究し,生体内鉄代謝の一端を解明した.靜脈内に投與された放射性鉄は鉄貯蔵臓器,造血臓器へ速かに移行する.組織非ヘミン鉄は單位濃度では脾が最も多く,骨髄,肝,腎皮質がこれに次ぐが,臓器全量についてみれば肝に次いで小腸,大腸などに多く存在する.各臓器ともヘモジデリンが最も多く,肝,脾ではフェリチンがこれに次ぐが,骨髄,消化器粘膜,腎皮質では核蛋白などに結合した鉄やいわゆる遊離鉄も相当存在し,從来考えられているほど,フェリチン,ヘモジデリン以外の非ヘミン鉄が少なくないことを知つた。非ヘミン鉄代謝は肝が最も活発で,放射性鉄は肝のフェリチンに最も多く導入される.骨髄は肝に次いで活発な代謝を營み,これらに比べると脾の交替率は低い値を示した.從来まで等閑に附されていた消化器粘膜の貯蔵鉄代謝は小腸が比較的高い交替率を示し,質的にも量的にも重要であると思われたが,胃粘膜,大腸は腎皮質とともに交替率が低値であつた.骨髄ではヘミン鉄の代謝がきわめて活発で,放射性鉄は靜脈内投與後3時間で流血中の赤血球に認められた.
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