日本内科学会雑誌
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52 巻, 1 号
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  • 吉田 豊, 千葉 陽一
    1963 年 52 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 1963/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    血液凝固学においてthromboplastin generation test (TGT)の占める役割は大きく,研究面では,ほとんど不可欠の検査法である。しかし,操作が複雑であり,常に一定の値を得るには相当の熟練を要する.ことに,一定活性度の血小板液を得ることは,今日の方法では極めて困難である.われわれはConner等の報告にヒントを得て,大豆燐脂質であるSoya-lecithin (0.1%懸濁液)を血小板液の代用としてTGTを試み好成績を得た.本法によるTGTの成績は,正常群ではincubation時間9~12分において,凝固時間が全て10~13秒であり, Owenの正常範囲と一致した.異常群では,おのおのその疾患を極めて典型的に表現した値を得た.すなわち, Warfarin使用患者では血清系の異常が見られ, PTC因子欠乏が考えられた.また, Warfarin投与の量・期間の程度も反映された.出血傾向のあるpolygenopathyの患者では,血漿・血清両者に異常を示し, PTA因子欠乏が考えられた.また,既往歴,家族歴に典型的な血友病の患者では,血漿系に著明な凝固延長が見られ,血友病Aの診断を確定した.以上の結果よりみて,血小板の代りにSoyalecithinを用いてもTGTは充分に施行できることがわかる.しかも従来の血小板を使用する方法に比べ,操作が簡易であり.一定活性度を有する懸濁液の作成が可能である点等,明らかに優れており,その利用を提唱するものである.
  • 柳沢 洋一
    1963 年 52 巻 1 号 p. 5-17
    発行日: 1963/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    副腎皮質機能,および,該ホルモンにおよぼすvitamin Cの影響について検討するため,軽症精神病患者,慢性腎炎患者, Addison氏病患者,副腎皮質ホルモン長期投与患者に, ACTH,あるいはprednisoloneを投与し,さらに, vitamin Cを負荷した場合について,血漿17-OHCS,尿中17-KS,血中vitamin Cの定量を行ない,好酸球数の変動を測定して検討した.一般に, ACTH投与後の好酸球数減少率は,予め大量のvitamin C投与を行なうことにより,その減少率の増加,および,回復時間の遅延を認め, prednisolone投与においても,その傾向を見た. ACTH, prednisolone投与後,血漿17-OHCS濃度の上昇を見るが, vitamin C処置は17-OHCS濃度を長く維持する傾向があり, 17-OHCSの血漿濃度維持は好酸球数減少率の回復遅延と,ある程度相関関係があつた.以上の結果から, vitamin Cは副腎皮質機能と関連して, 17-OHCS血漿濃度を高く維持することを知つた.
  • インスリン分泌における前頭葉眼窩面後部の意義について
    福地 創太郎
    1963 年 52 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 1963/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    膵内分泌の中枢性調節にかんする研究の一環として,前頭葉眼窩面後部とインスリン分泌との関係について検討し,本領域がインスリン追加分泌にたいして,抑制的調節を行なう可能性を示唆する成績を得た.すなわち,塩酸モルヒネ麻酔犬に,ブドウ糖を負荷して, 3時間後,膵静脈血中インスリン濃度が最高に達したと思われる時期に,該部を電気刺激すると,膵静脈血中インスリン濃度は有意の減少を呈し,刺激後, 10分には上昇の傾向を示した.他方,ブドウ糖を負荷せず,直接,本領域を刺激したさいには,膵静脈血中インスリン濃度の変動は認められず,また両側の本領域を破壊したさいにも,ほゞ正常犬同様の糖負荷後のインスリン追加分泌を示した。
  • 佐藤 竜雄, 加藤 広三, 田辺 福徳, 工藤 守, 橋本 英名, 坂本 三哉, 岩本 光存欣
    1963 年 52 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 1963/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    22才の女で,胸部(下行)大動脈縮窄症と診断し,手術に成功した症例を報告する.患者は約2年前より両側の耳鳴り,心悸亢進及びめまいを自覚し始め,某医にて高血圧症として治療を受けたが効果なく, 36年5月北大第二内科にて大動脈縮窄症と診断された,上肢の高血圧,下肢の比較的の低血圧,左右の血圧差,心基部,頚動脈部及び背部の心血管雑音,心電図にて左室肥大,眼底KW II a度,腎血流量の減少,血管心臓造影にて胸部大動脈の狭窄を認め,北大第二外科にて狭窄部の切断,代用血管移植術を施行し,血圧の正常化,自覚症の消失をみるに至つた.諸種検査成績並びに組織像,特に内膜の肥厚,中膜の弾性線維の断裂及び走向の乱れ,肉芽組織の形成の有無,外膜及び血管の変化などの所見と臨床的経過及び文献的考察を合せて,本症の成因を後天性の血管炎と推定した.
  • 島野 毅八郎, 内藤 寛, 北 周二
    1963 年 52 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 1963/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    前縦隔に原発した男子絨毛上皮癌の剖検例を報告した. 18才の高校生で,昭和36年頃から女性様乳房に気づき, 3月に咳が始まり, X線検査などで異常を認めなかつたが,半年後には,右胸部を占有し,左側に転移を伴なう腫瘍陰影が発見されたものである.抗癌剤, X線深部治療,抗生剤,女性様乳房に対するエナルモン治療などを施したが奏効せず, 10月6日死亡した.剖検では,前縦隔のほゞ全域を占め,右各肺葉,心嚢壁上部にわたる小児頭大の種瘍で,左肺,肝,膵,脾,腎にも結節性転移を認めた.組織学的には絨毛上皮癌(choriocarcinoma)で,転移巣も同様の組織像を示していた.睾丸はとくに精細に検索したが,原発巣と見なすべき変化は発見されなかつた.胸腺原発の可能性は大きいが,遣残胸腺がみいだされないので,前縦隔原発とみなされた.縦隔腫瘍には奇形腫が多く,その原因は腫瘍学上の一つの課題であるが,前縦隔に原発した絨毛上皮癌は文献上稀有というのみにとゞまらず,縦隔奇形腫発生機序を考究する上に貴重な資料を提供するものであることについて述べた.
  • 坂口 大吾
    1963 年 52 巻 1 号 p. 36-43
    発行日: 1963/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Prinzmetalら(1954)が心筋硬塞後に起こつた完全房室ブロックにACTHを注射して洞調律に戻つた症例を報告して以来, ACTHや副腎皮質steroidを,種々な原因の心臓ブロックに使用した経験はこれまでに54例に達する.このうち,わが国での報告は2例で,いずれも不完全ブロックである。著者の経験した症例は60才の女で,高血圧性心疾患に起因すると思われる完全ブロックである.心房拍動数は53~70整,心室拍動数は31~33整であつた.paramethasone 1日量3mgを投与し, 12日目に至つて,突然,洞性全調律に復した.この時のPQ時間は正常で心室拍動数は平均50であつた. paramethasoneはこの後漸減して中止した(総量47.5mg)が,洞調律は36日間保たれた. 37日目に不完全房室ブロックが出現したが, paramethasone 2mg 1回の投与で,洞調律がえられた.この後不完全ブロックがときどき出現するので, paramethasoneの投与を続けたが20日目ごろからは安定した洞調律となり投薬を中止した(総量49mg).投与終了後の副腎皮質機能検査で,軽度の機能低下を見たほかは,順調な経過をとつている.本治療法は,これまでの報告では54例中37例(69%)に有効で,なお,投薬後早いものでは1時間後,遅いものでも8日目までに洞調律がえられている.その点, 12日目に至つて洞調律に復した本例は特記すべきことと思われ,さらに,その後に起こつた不完全ブロックは,投与後1時間で解消した点も興味がある.
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