日本内科学会雑誌
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53 巻, 12 号
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  • 粟野亥 佐武, 津田 福視, 伊藤 倉雄, 安部 淑子, 国分 一彦, 児王 良三, 亘理 比呂志
    1965 年 53 巻 12 号 p. 1519-1532
    発行日: 1965/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    最近染色体の分析にかんする実験方法の進歩に伴ない,人類の悪性腫瘍に就いても染色体の数や構成に関する知見が多数報告されている.しかし乍らこれらの知見が悪性腫瘍の原因と本質的に結び付くものか,或いは悪性化の結果として二次的に起こつた変化であるのかなお不明である.本研究は6例の人間の急性骨髄性白血病に就いて核型分析を行ないその所見を比較検討し,これらの重要な問題について考察を加えた.その結果を要約すれば人間の急性白血病では多くの場合,染色体の数や形態或いは構成において正常と異なる種族細胞が存在する.しかしその核型の異常は急性白血病の個々の例で必ずしも一定していない処から,急性白血病に於ける核型の変化は白血病の発生に伴なつて起こる二次的の変化と解した方が妥当かも知れない.しかし急性白血病細胞は多くの場合高数体(2倍域)であり又しばしばC. trisomieの見られた事が注目される.
  • 癌血清および癌性滲出液の赤血球易動度に及ぼす影響
    小松 正裕
    1965 年 53 巻 12 号 p. 1533-1539
    発行日: 1965/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    滲出液の性質を鑑別することは各種の検査方法を用いても必ずしも容易でない.胸水あるいは腹水に健康人O型赤血球を浮遊沈降させると,結核性液では赤血球が大きな集塊を作つて速やかに沈降するが,癌性液その他の原因による貯留液では集塊を作ることなく緩やかに沈降するという事実に基づき,赤血球の凝集と赤血球表面荷電は密接に関係すると思われるので,表面荷電を直接反映する赤血球電気泳動速度を測定した.結核性胸水では赤血球易動度が低下し,癌性胸水では赤血球易動度が上昇し,結核性胸水と癌性胸水は泳動速度に相反する影響を及ぼすことを知つた.また,癌血清は赤血球泳動速度を著明に低下せしめ,なかんずく,肺癌患者血清ではばらつきが少ないことが認められた.
  • 上田 英雄, 池田 隆夫, 海老原 昭夫, 高瀬 修, 坂本 由之
    1965 年 53 巻 12 号 p. 1552-1556
    発行日: 1965/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Renal tubular acidosisの1症例を報告する.症例は, 32才,主婦.クル病を疑われた妹がある.生来健康であつたが,昭和38年1月,全身筋肉痛・発熱(39℃)・口内炎あり,某病院に入院.尿濃縮力低下,低K血症を指摘された.経過中一度弛緩性四肢麻痺発作があつた.昭和39年4月,口渇・多尿・全身筋肉痛・四肢脱力感を主訴として当内科に入院上尿は常にアルカリ性(pH7.2~8.0)で,代謝性アシドーシスが認められ,低K血症(2.6mEq/l),高Cl血症(227mEq/1),低Ca血症(8.6mg/dl),低P血症(2.1mg/dl)があり,尿濃縮力低下が認められた。尿培養陰性,腎生検は尿細管の拡張と尿細管細胞の扁平化示すのみで,糸球体は正常であつた.NH4Cl負荷試験によつて,尿酸性化障害を有することが確かめられ, renal tubular acidosisと診断された. renal tubu-lar acidosisに高頻度に認められるといわれる,骨軟化症,腎石灰化症,腎結石などは認められなかつた.なお,本症例には,このほかに赤沈促進(1時間値70mm),高γ-g1obulin血症(30.5%)およびrheumatoid foctor陽性の所見がある.治療として,アルカリ薬の経口投与を行ない,自覚症状の消失,血清電解質,アシドーシスなどの改善をみた.
  • 板倉 弘重, 千葉 省三, 西川 敬二, 中村 真巳, 井林 博, 中尾 喜久
    1965 年 53 巻 12 号 p. 1557-1563
    発行日: 1965/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    家族性高コレステロール血症を伴なつたStein-Leventhal症候群の1例.肥満,多毛,月経異常を主訴とする未婚女子で,内分泌機能検査の結果17-OHCS, 17-KS, Estrogen, Pregnanetriol, 11-Oxy-17KGSは正常, 11-beoxy-17KGSが増加, Pregnanediolは低値を示し, Cortisolのdaily secretion rateは正常, DHEA production rateが上昇していること,およびdexamethasone投与時FSH, LH投与によるステロイド分析により,本症と臨床診断し,開腹手術により典型的Polycystic ovaryを確認した.術中採取したサンプルをGas chronlatographyにより分析し, Estrone, Estradiol, Testosteroneは証明されず,嚢胞内容液中にのみDHEAとΔ4-androstene-dioneの存在することから,本症の卵巣内ステロイド生合成の障害として3β-ol-dehgdrogenaseおよびaromatizing enzyme failureの併存が推定された.
  • 矢永 尚士, 久間 文雄, 平野 順造, 大宅 善衛, 伊東 盛夫, 佐伯 和之, 有田 真, 加地 正郎, 森博 愛
    1965 年 53 巻 12 号 p. 1564-1570
    発行日: 1965/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Adams-Stokes症候群の心電図には種々あるが,従来その分析は普通心電図の立場から行なわれたものが多い.われわれは洞房ブロックによると思われるAdams-Stokes症候群の1例について,普通心電図のみでは行ないえない詳しい観察が高利得心電図を用いて可能であることを示した.高利得心電計による同時誘導によりP波の開始および終了時点の正確な測定, P波の形態の詳細な観察が可能であり,心房内興奮異常を明確に推測することができる,本例では原因となる器質的疾患は証明きれなかつたが,おそらくは迷走神経異常緊張によるものと考えられた.発作時にはコハク酸ナトリウム(アリトール)あるいは1-(3,5一ジヒドロキシフェニル)-2-イソプロピルアミノエタノール硫酸塩(Alotec)を使用して,その緩解にいずれも有効であつた.さらに本例における発作の原因となつた洞房ブロックのメカニズムについて細胞内電位の立場から考察を加えた.
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