脂質の消化吸収機序に関しては,なお,未開拓の分野が多く,特に,消化管ホルモンとの関連性を追求した報告は少ない.著者はガスクロマトグラフィーを応用し,ヤシ油投与犬にcholecystokinin, pancreozymin, secretinを使用し,胸管リンパ,門脈血血漿,末梢血血漿,十二指腸粘膜,十二指腸粘膜下層,空腸粘膜および空腸粘膜下層の総脂酸のスペクトル変動を分析した.胸管リンパ総脂酸の経時的変動は, pancreozymin投与時に最も大で,ついでsecretin, cholecystokininである.胆汁は膵リパーゼより,脂酸吸収に及ぼす影響が大である.門脈血および末梢血における脂酸のスペクトルの変動は著明ではない.腸管壁では,一般に,粘膜下層より粘膜上皮に脂酸スペクトルの変動が著明で,部位的には,ヤシ油単独投与, pancreozymin併用,膵液体外誘導後cholecystokinin併用例の十二指腸粘膜に脂酸吸収が多く, cholecystokinin投与例, secretin投与例では,逆に空腸粘膜に脂酸の吸収が多くみられた.結局,小腸上部が脂質吸収の主要な場と考えられた.
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