Renal tubular acidosisの1症例を報告する.症例は, 32才,主婦.クル病を疑われた妹がある.生来健康であつたが,昭和38年1月,全身筋肉痛・発熱(39℃)・口内炎あり,某病院に入院.尿濃縮力低下,低K血症を指摘された.経過中一度弛緩性四肢麻痺発作があつた.昭和39年4月,口渇・多尿・全身筋肉痛・四肢脱力感を主訴として当内科に入院上尿は常にアルカリ性(pH7.2~8.0)で,代謝性アシドーシスが認められ,低K血症(2.6mEq/l),高Cl血症(227mEq/1),低Ca血症(8.6mg/dl),低P血症(2.1mg/dl)があり,尿濃縮力低下が認められた。尿培養陰性,腎生検は尿細管の拡張と尿細管細胞の扁平化示すのみで,糸球体は正常であつた.NH
4Cl負荷試験によつて,尿酸性化障害を有することが確かめられ, renal tubular acidosisと診断された. renal tubu-lar acidosisに高頻度に認められるといわれる,骨軟化症,腎石灰化症,腎結石などは認められなかつた.なお,本症例には,このほかに赤沈促進(1時間値70mm),高γ-g1obulin血症(30.5%)およびrheumatoid foctor陽性の所見がある.治療として,アルカリ薬の経口投与を行ない,自覚症状の消失,血清電解質,アシドーシスなどの改善をみた.
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