筋肥大と硬直, 筋収縮後の弛緩困難等のミオトニー症状を伴なう粘液水腫 (Hoffmann症候群) の1例を経験した. 本邦ではまだその報告をみていない. 症例は38才の農夫で, 顔面の浮腫, 四肢の脱力感, 首および四肢筋の肥大, 硬直, 痙攣性疼痛により農耕作業不能となり, 当科に入院. 甲状腺腫は触れず, 発語障害があり, 握つた手指が容易に開けず, mounding phenomenon およびアキレス腱反射で弛緩相の遅延を認めた. 検査成績では甲状腺の機能低下, TSH test陰性, 慢性甲状腺炎の組織所見を, 筋電図では一部unitの脱落, low voltageを, 筋組織像では変性所見を, 血清GOT, GPT, LDH, aldolase, creatine phosphokinaseおよびcholesterolの上昇を認めた. これらの所見より, 非特異性慢性甲状腺炎によるHoffmann症候群と診断し, 甲状腺末を投与したところ, 上記自覚症状の著明な改善をみ, ふたゝび農業に従事できるようになつた. 血清酵素活性も正常となり, 筋電図, 筋組織像も好転した.
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