日本内科学会雑誌
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56 巻, 1 号
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  • 三船 慎一
    1967 年 56 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 1967/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    本態性高血圧症の塩類代謝にかんしては,なお未解決の点が多い著者は岩手県住民が味噌汁から摂取する食塩量を定量し,当該地域住民は明らかに食塩摂取過剰状態にあることを認めた.つぎに,高血圧症患者,正常血圧者を対象として,1日量として正確にNa: 150mEq, K: 100mEqを含む食餌を15日間与え,中間の5日間には,さらにthiazideを投与し,尿中のNa,K排泄量を測定しbalance studyを実施した.thiazide投与前,高血圧症患者は正常血圧者よりNa貯留が少なく,投与中は反対に著明なNa利尿を来たし,投与を中止すると,かえつてNa貯留が顕著になつた.その結果,高血圧症患者は正常血圧者に比し,体内に常にNaが貯留していることが推測された.この期間中, catecholamine, aldosterone排泄量をも測定してその結果について考察した.また,体内に貯留するNaの臓器分布を高食塩食で飼育したシロネズミを用いて検索し,大動脈壁のNa貯留が最も著明であることを知つた.
  • 実験的サイアザイド糖尿病およびカリウム欠乏性糖尿病について
    門田 一郎, 石上 隆一, 塩谷 茂, 河田 利延
    1967 年 56 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 1967/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    臨床的にサイアザイド薬による糖質代謝異常の発生機転に低カリウム症が重要な因子と認められる.両者の関係をさらに実験的に明らかにするため,われわれは家兎を用い,サイアザイド薬長期投与実験を行ない,4カ月以後血清カリウム値の低下とともに耐糖能の低下の発生を認めた.同様の変化は陽イオン交換樹脂amberlite IR 120の長期投与によるカリウム欠乏動物においても認められた,またサイアザイド薬とamberlite IR 120の併用投与実験によつて低カリウム血症と耐糖能の低下が単独投与の場合より早期にみられた.この際カリウム薬の投与によつて血清カリウム値は正常化するが,耐糖能の低下の回復はみられなかつた.病理組織学的にサイアザイド薬の長期投与動物において膵ラ島β細胞顆粒の減少,副腎肥大,同皮質糸球層脂肪の減少,腎集合管上皮細胞の変性を認めた. amberlite IR 120投与動物においても軽度であるが同様の病変を認めた,したがつてサイアザイド糖尿病の発生要因としてカリウム欠乏が重要な因子であり,サイアザイド糖尿病はカリウム欠乏性糖尿病に類似するものと考えられる.
  • 松崎 稔
    1967 年 56 巻 1 号 p. 21-36
    発行日: 1967/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    イヌの心筋を電子顕微鏡で観察し,冠状動脈を結紮し虚血心筋の形態的変化をみた.結紮後60分以内の早期変化は,グリコーゲン顆粒の減少,細胞全体の腫脹,小胞体の拡大,ミトコンドリアの膨化,崩壊が主なものであつた.結紮24時間後には,各小器管の崩壊が著しく,ミトコンドリア内封入体を認めた.つぎに,15分から60分までの一時的結紮を行ない,24~72時間後の心筋をみると,30分以内のものでは,グリコーゲン顆粒も再び増加し回復するようにみられたが,60分の例では崩壊の著しいものがあつた.一度虚血をうけた心筋組織の毛細管には,拡大した小胞の増加が著しかつた.血清GOT活性値は回復の像のみられた30分の例でも異常な高値を示すものがあつた.以上の所見について若干考察した.
  • 矢島 久紀
    1967 年 56 巻 1 号 p. 37-48
    発行日: 1967/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    アルドラーゼ(ALD)のアイソザイムを電気泳動法,イオン交換クロマトグラフィー,fructo-se-1, 6-diphosphate (FDP)およびfructose-1-phosphate (FIP)両基質を使用しての同時測定の結果より臓器,血清などについて検索した,電気泳動法による家兎,ラットでは臓器間に易動度の差を認めたが,ヒトではかかる差は認められなかつた. DEAE-sephadexカラムクロマトグラフィーでは,ヒト肝と心の間に相違が認められ,癌組織は心に類似のパターンを示した.急性肝炎,心筋硬塞,癌患者血清のバッチ法による分画でも,それぞれ組織のそれに対応するパターンを捉ええた.また諸臓器酵素液のFDP-ALD, FIP-ALD活性およびその比はそれぞれ異なり,かつ癌では発生母地に関係なく骨格筋のそれに類似していた.諸種疾患患者血清もその罹患臓器に相当した特微ある活性比を示し,とくに癌ならびに肝疾患では従来のFDPのみを基質とした測定法よりその診断精度を著しく向上せしめうることを確かめた.
  • 里吉 営二郎, 角田 美穂, 相馬 紀夫, 秋間 道夫
    1967 年 56 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 1967/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍は時に転移や直接の浸潤なしに,種々の中枢または末梢神経系障害を起こし,癌性ニユーロパチーとよばれている.54才の細網肉腫症の末期に頭痛,項部強直,錯乱,傾眠,眼球振盪,手指の振顫などの多彩な神経症状を呈した症例を経験した.剖検の結果,両側中心灰白質および脳橋に斑状変性巣を認め,網内系腫瘍に時にみられる進行性多巣性白質脳症の初期と考えられる所見を確かめた.
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