患者は66才,男子.本症発症2~3年前より腰痛を感じていたが,昭和39年11月より排尿障害が現われ,昭和40年8月に泌尿器科で腰椎麻酔で前立腺切除術を施行,術後より両下肢の弛緩性麻痺,屎尿失禁, D
10以下の知覚異常,その後解離性知覚麻痺をきたし,ついにD
10以下の温痛覚脱失,触覚鈍麻, L
1以下の全知覚脱失となり,褥瘡,膀胱炎を併発し,尿毒症で41年5月15日死亡した.髄液では圧の上昇, xanthochromia,蛋白量は増加し,ワ反応ならびにQueckenstedtは陰性であつた.病理学的所見では腎膿瘍,腎孟腎炎,第1・第2腰椎椎間板の線維性肥厚と椎体の崩壊,肝・胃・腎の血管,とくに静脈壁の硝子化・細胞性肥厚が認められたが,主要所見は胸髄下部以下の後脊髄静脈の蛇行,瘤形成,静脈内膜の細胞性および線維性増生,後索とその附近の脊髄壊死がみられ,本症例の組織学的所見より,本症の成因には後天的要素も否定できないことが示唆された.
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