鉄の組織障害性の有無,特に肝障害と肝鉄沈着の関係は, hemochromatosisの成因などに関連した興味ある問題である.鉄が単独で肝障害を惹起させる可能性は,現在まで否定的であるが,ある種の肝障害が,鉄によつて助長されることは実験的に確認されている事実である.著者らは,四塩化炭素肝障害に鉄経口負荷を行なつたラットの肝組織学的検索から,肝線維化の進展が増強される成績をえ,さらに,鉄吸収吸収鉄の赤血球今の利用,肝貯蔵鉄の検索から,肝線維化の過程で,肝にhemosiderinとしての鉄量の増加することが観察された.これらの結果から,肝障害に肝に多量に沈着してくるhemosiderinも,肝線維化促進の一因子として関与しているものと考えられる.
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