18才,男子で,起立または精神的,肉体的stress時の動悸と不安を主訴とする.理学所見では頻脈,収縮期性高血圧,心尖部に軽度の収縮期雑音を聴く以外異常を認めず.一般検査所見にても著変はない.腎機能,甲状腺機能,血•尿中カテコールアミン値も正常である.心血管機能検査では,安静時心拍出量,前腕筋血流量は正常者に比し,明らかに高値を示す,また臥位より立位への体位変換時,心拍数は正常者に比し著明に増加,心拍出量は正常者では減少するに反し,本例では増加した. isoproterenol 0.02μg/kg/min静注暗,心拍数,心拍出量,前腕筋血流量の増加もきわめて著しい.また以上の特異なる循環動態はproprano1ol 10mg静注でほゞ玄正常化し,本薬1日30mg経口投与にて症状および循環異常の消失を見た.以上より本例は交感神経のβ受容体機能亢進に基づく病態を示し, Frohlichらのhyperdynamic beta-adrenergic circulatory state, Bollingerらのhyperkinetische Herzsyndromと軌を一にする症候群と考えられ,その心血管機能異常は彼らの症例よりも,より詳細かつ総合的に検索されたものである.なお本症例患者の母親は,同じ愁訴と,機能異常を有したので,これについても言及し,また本症候群の成因にかんし若干の考察を行なつた.
抄録全体を表示