日本内科学会雑誌
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58 巻, 3 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 中島 隆
    1969 年 58 巻 3 号 p. 189-196
    発行日: 1969/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    悪性貧血患者流血中に内因子抗体,壁細胞抗体などの自己抗体が高率に証明されるが,悪性貧血を伴なわない萎縮性胃炎にも壁細胞抗体の出現頻度は高い.これらの抗体の存在意義について,悪性貧血および壁細胞抗体の出現頻度の高い疾患を対象に,胃液分泌能および胃粘膜像を検討した.壁細胞抗体は悪性貧血をはじめ萎縮性胃炎の発現しやすい疾患に高頻度に証明され,胃液酸度の低下,内因子分泌能の低下と一見関連性を示すものもあるが,本抗体の存在および抗体価と胃液分泌能および胃粘膜病変との間に,有意な相関は証明し得ず,むしろ,胃病変に伴なつた病的意義に乏しい自己免疫現象と考察された.一方,内因子抗体の陽性例はいずれも内因子分泌能の低下を伴なつており,本抗体と内因子分泌能ないし内因子活性の低下の間には,密接な関連性のあることが推測された。
  • 田中 義丈
    1969 年 58 巻 3 号 p. 197-208
    発行日: 1969/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    癌,白血病など悪性腫瘍細胞の増殖機構を解明する目的で実験的緑色腫を材料に放射性化合物を用い,オートラジオグラフィー,生化学的諸方法を応用し,腫瘍細胞の核酸,蛋白代謝について研究した.実験的緑色腫は全てgenerative cellで構成され,そのDNA合成時間は6~8時間,世代時間は31~42時間であり,実験的緑色腫細胞のRNA,蛋白合成系は核,細胞質いずれにも存在し,核で合成されたRNAは細胞質ミクロゾームに移行することを明らかにした.本腫瘍細胞は, DNA, RNA,蛋白代謝上の差異より4種類(実験的緑色腫I, II, III, IV)に分類でき,腫瘍細胞にも軽度ながら分化,成熟の段階が存在することを証明し,かつ実験的緑色腫の腫瘍形成(腫瘍細胞の集積)は本腫瘍細胞の異常増殖性によるものではなく,細胞分化の抑制にもとづく,細胞除去率の低下によるものであることを解明した.
  • 小笠原 寿
    1969 年 58 巻 3 号 p. 209-218
    発行日: 1969/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    高血圧の成因解明の目的で食塩の高血圧発現におよぼす影響について研究した.その結果,高食塩飼料(10%NaCl含有)を幼若白鼡に投与後約16週目で持続性高血圧が78%発生したが,生後19週目の成熟白鼡に高食塩飼料を投与開始した際には持続性高血圧の発生はなかつた.食塩投与による高血圧白鼡は多飲で多尿であつた.また後肢標本による潅流実験の結果,高血圧白鼡においては正常血圧白鼡に比較してnoradrena1ineに対する血管反応性の亢進が認められた.さらに,食塩投与による高血圧白鼡の心臓,大動脈および腎臓を組織学的に検索すると,腎の動脈および細動脈の肥厚と硝子様化ならびに冠状動脈の肥厚を多数例に認めたが,大動脈は特異的変化を示さなかつた.したがつて,長期間にわたる食塩過剰投与によつて発生した白鼡の高血圧は,腎の血管障害と, noradrenalineに対する末梢血管の反応性の亢進によるものと思惟された.
  • 中尾 喜久, 斉藤 寿一, 吉田 尚, 菊池 方利, 倉持 衛夫, 宇尾野 公義, 森田 豊彦, 高梨 利一郎
    1969 年 58 巻 3 号 p. 219-224
    発行日: 1969/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    従来の報告によれば,持続性高Na血症は,そのほとんどが中枢神経系に何らかの病変を有するが,その発現機序は必ずしも明瞭でない.われわれは66才女性, 37才女性の持続性高Na血症2例を経験した.いずれも,多飲,多尿の尿崩症症状は明らかでなかつたが,水制限試験時血中ADH測定値,低Na液投与に抗する高Na血症の持続と尿量の増加,第1例においてはPitressin投与による改善の経過より見て尿崩症と診断された.剖検上,第1例においては下垂体後葉慢性炎症性変化を,また第2例においては腫大せる下垂体前葉嫌色素細胞腫と同腫瘍による視床下部圧迫性変化をみとめ臨床診断に符合する所見であつた.多尿,多飲が著明でない中枢神経系疾患における高Na血症の成因には,潜在性尿崩症が重要であることを示唆している.
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