癌,白血病など悪性腫瘍細胞の増殖機構を解明する目的で実験的緑色腫を材料に放射性化合物を用い,オートラジオグラフィー,生化学的諸方法を応用し,腫瘍細胞の核酸,蛋白代謝について研究した.実験的緑色腫は全てgenerative cellで構成され,そのDNA合成時間は6~8時間,世代時間は31~42時間であり,実験的緑色腫細胞のRNA,蛋白合成系は核,細胞質いずれにも存在し,核で合成されたRNAは細胞質ミクロゾームに移行することを明らかにした.本腫瘍細胞は, DNA, RNA,蛋白代謝上の差異より4種類(実験的緑色腫I, II, III, IV)に分類でき,腫瘍細胞にも軽度ながら分化,成熟の段階が存在することを証明し,かつ実験的緑色腫の腫瘍形成(腫瘍細胞の集積)は本腫瘍細胞の異常増殖性によるものではなく,細胞分化の抑制にもとづく,細胞除去率の低下によるものであることを解明した.
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