日本内科学会雑誌
Online ISSN : 1883-2083
Print ISSN : 0021-5384
ISSN-L : 0021-5384
58 巻, 5 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 長沢 俊彦, 柴田 整一, 中尾 喜久
    1969 年 58 巻 5 号 p. 371-378
    発行日: 1969/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    膠原病諸疾患145例,その他の内科諸疾患263例の血清中抗核因子陽性率,およびSLEと強皮症のtiterの長期変動について蛍光抗体間接法を用いて検索し,1)膠原病諸疾患の抗核因子は先の報告と同じようにSLEと強皮症の2疾患で高率に陽性を示す.2)その他の内科諸疾患の中では重症筋無力症の陽性率が高い,3)蛋白尿を欠くか,もしくは軽度の蛋白尿を呈すSLE症例のtiterの変動は3型にわけられるが,いずれの型もtiterは32倍以上にとどまる,4)これに対してnephrotic syndromeを呈するほど高度の蛋白尿を呈すSLEではtiterは速やかに32倍以下に低下する例が多く,2~3年の経過中に陰性化する例が少なくない.5)強皮症では長期間一定のtiterを示す例が多い,などの諸事実を見出した.また抗核因子陰転化の機転について抗核因子の尿中排泄,蛍光抗体法も含めた腎生検所見の特徴などの面から検討したので,その成績についても合わせて報告した.
  • 以倉 友治
    1969 年 58 巻 5 号 p. 379-390
    発行日: 1969/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    筋糖原病は,他のmyopathyと類似の症状を訴えるが故に,その型別診断はmyopathyの鑑別,治療,予後判定上意義が大きい,著者は現在知られている筋糖源病であるphosphofructokinaseおよびphosphorylaseの低下した病態につき,主として検討を加え,今後発見されるであろう新しい型の診断も可能な筋糖原病の系統的診断法を確立した.すなわち,筋解糖系のいずれかに障害があればischemic forearm exercise testに際して肘静脈血乳酸値の上昇がみられず,本試験が筋糖原病のスクリーニングに最適の検査法であり,さらに,筋homogenateを用いるanaerobic glycolysisおよび筋glycogen, glycolytic intermediateの定量,さらに蓄積glycogenの構造決定の併用は,酵素欠損部位確定に有用であることを明らかにした.また筋phosphofructokinase欠損症患者に施行したブドウ糖負荷試験の成績から,糖尿病発症に筋phosphofructokinaseの阻害が大きな意義ありとするRandleらの仮説に批判を加えた.
  • 布川 藤夫
    1969 年 58 巻 5 号 p. 391-399
    発行日: 1969/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    概要正常例,鉄欠乏性貧血,心筋硬塞,再生不良性貧血の赤血球に対する酸素親和性の相異を,酸素解離曲線およびP60O2をもつて,比較研究し,いくつかの興味ある成績を得た.鉄欠乏性貧血と心筋硬塞とでは,酸素分圧の比較的低い部分では,正常例に比べて,酸素親和性の低下がみられ,酸素解離曲線は正常曲線の右方へ転移し,再生不良性貧血では,酸素分圧の範囲にかかわらず,ほとんどの例で酸素親和性の増加すること,すなわち,解離曲線の左方へ移動することを確かめた,さらに,これらの成績について,その臨床的意義と変化の本質について,検討を加えた.すなわち,鉄欠乏性貧血と心筋硬塞に見られた変化は,貧血状態の生体にとつて有利な変化であることを知り,また,再生不良性貧血においては,胎児ヘモグロビンの増加を証明し,その酸素親和性の変化の一因と推定した.
  • 小林 毅, 小野 功一, 本間 威, 小野寺 壮吉
    1969 年 58 巻 5 号 p. 400-404
    発行日: 1969/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は15才の男子.生まれてすぐに,泣くと口唇にチアノーゼが出るのに気づかれ,生後2週間目に先天性心疾患の診断を受けたが,とくに治療を受けていない.チアノーゼと動悸は続いていたが,急ぎ足に歩いたりすると増強する程度であつた.入院時,やもり指・チアノーゼ・赤血球増多があり,Erb領域および肺動脈弁口部で収縮期雑音と,第II肺動脈音の亢進があり,胸部X線上左1~2弓の鈍な凸出と2重陰影が認められ,心電図・心血管造影法によつて, ASD, VSD, PSを伴うbulboventricular inversionの型の修正大血管転位と診断し, 北大杉江外科で開心術を行なつたが,冠動脈も正常走行の鏡像を呈し,右側房室弁は三尖弁ではなく,二尖弁となつており,解剖学的に左室と考えられ,肺動脈弁のvalvular stenosis with bicuspidationと高位後方のVSDなどを合併した修正大血管転位を確認した.
  • 七条 小次郎, 近藤 忠徳, 山田 衛, 青木 三重子, 下山 洌, 田谷 禎増
    1969 年 58 巻 5 号 p. 405-409
    発行日: 1969/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    近年しいたけの需要の急増に伴ないその栽培が全国的に行なわれている.平地ではフレームを作り,その中で栽培を行なつている.症例は39才の男で,6年前よりしいたけ栽培を始めたが,3年前よりフレームの中に入ると咳嗽,喀痰を生じ,半年前からはフレームに入ると夜間喘鳴を伴なう呼吸困難を来たすようになつた.胞子の抽出液による皮内反応, Prausnitz-Küstner反応,吸入誘発試験はすべて陽性であり,胞子を用いた眼反応も陽性であつた.以上の所見から,本例はフレーム内に充満しているしいたけ胞子の吸入によるアレルギー性喘息であることは明らかであり,先に職業性喘息の1種として報告したしいたけ胞子喘息と診断した.また本例は他の例と異なり乾しいたけ抽出液による皮内反応およびPrausnitz-Küstner反応にもともに陽性を示した.なお,しいたけ胞子喘息はいわゆるmushroom worker's lung (Sakula, 1967)とは全く別の疾患である.
feedback
Top