日本内科学会雑誌
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59 巻, 12 号
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  • 奥原 種臣
    1970 年 59 巻 12 号 p. 1310-1317
    発行日: 1970/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    ヒト胆汁中におけるインスリンの存在を証明し,また,糖尿病および肝胆道系疾患における胆汁内インスリンの量的変化を調べるために,正常人および上記疾患患者に十二指腸ゾンデ法を行ない, A, B, C胆汁を採取し,透析後その中に含まれるインスリンを免疫学的測定法(二重抗体法)にて測定した.その結果正常人のA, B, C胆汁はインスリンを含有し,その平均濃度はいずれも血清インスリンの10倍以上で,かつ, A, B, C胆汁の間に有意の差がないこと,ならびに糖尿病,肝硬変症および胆嚢症の患者のA, B, C胆汁もインスリンを含有し,その濃度は正常人のA, B, C胆汁との間に有意の差がないことが判明した.以上の成績から胆汁中のインスリンのかなり大きな部分は胆嚢壁から再吸収される可能性があり,胆道は過剰または不要となつたインスリンの排泄経路の一つであると考えられる.
  • 松井 比呂美
    1970 年 59 巻 12 号 p. 1318-1326
    発行日: 1970/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    肝硬変などにみられる電解質代謝異常にaldosteroneが重要な役割を果していることはいうまでもないが,それめみでは解釈しがたい多くの現象が知られている. 1967年以来前沢らは肝内にNa排泄抑制物質の存在を証明しその解析を行なつているが,著者は本物質がaldosteroneとはみなしがたい成績をえたので,これらについて報告したい.すなわち, (1)本物質はラットのNa排泄を抑制し,この効果は投与量と有意の直線関係を示したがK排泄には有意の影響を与えなかつた. (2)両側副腎摘出8日後のラットの肝エキスについても偽手術ラット肝におけると同様なNa排泄抑制効果が認められた. (3)肝単位重量当りのNa排泄抑制効果は化学的に定量された肝内aldosterone量の約800倍に匹敵した. (4)副腎摘出7日後のラット肝ホモジェネートをアセトン処理したところアセトン不溶性分画にのみ有意のNa排泄抑制効果がみられた.なお0.25M蔗糖液を用いた分画遠心(Schneider法)により本物質が8500×G, 10分遠心上清中に存在することが示された.
  • 持永 俊一, 矢野 右人, 小野 彰夫, 橋場 邦武, 木下 勝
    1970 年 59 巻 12 号 p. 1327-1333
    発行日: 1970/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    大動脈瘤が胸腔内に直接破裂しながら34日間も生存したまれな例を経験したので,報告した. 51才,男.高血圧,狭心症の既往あり.講演後,突然左胸部の激痛後ショック状態に陥つたが,約10時間後に回復.以後増悪軽快をくり返しながら,発作後26日目に当科へ担送入院.左全血胸を呈し,縦隔を右方へ圧排す.血管造影で左肺血管系は造影されず,胸部大動賑は拡大蛇行し,壁の著明な不整を認めた.対症治療中,第34病日に死亡す.剖検で胸腹部大動脈にアテローム硬化性真性大動脈瘤があり,胸部大動脈瘤の一つが左側胸腔内へ直接破裂し,左胸腔は5000ml以上の血液および血塊で満たされていた.
  • 藤城 昇, 太田 秀哉, 川島 司郎, 河出 芳助, 町田 元実, 上田 宏
    1970 年 59 巻 12 号 p. 1334-1338
    発行日: 1970/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    30才,女子.母親,祖父,叔父,妹がRecklinghausen病に罹患,本人数年前より関節痛,微熱,蛋白尿,血尿を訴えた.全身皮膚に十数コのcafe au lait色素沈着を有し,血沈亢進,血清γグロブリン上昇,収縮期性高血圧,左右の橈骨動脈脈拍不同,左右上肢の血圧不同あり.心基部より両側頚部に収縮期雑音,〓上部にも低調収縮雑音を認めた.神経線維腫症と大動脈炎症候群の合併を疑い,大動脈撮影により総頚,鎖骨下,下行大動脈に広範な病変を認めた.腎生検では,糸球体にメサンギウム増加,細胞増多が認められた.以上からわれわれは本症例を神経線維腫症と大動脈炎症候群の合併と診断し,大動脈炎の原因として神経線維腫の大動脈への侵襲が考えるられることを文献的に考察した.
  • 安東 良博, 花園 直人
    1970 年 59 巻 12 号 p. 1339-1345
    発行日: 1970/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    著着らは,血清カリウム値が正常範囲にあるのにもかかわらず,心電図に著明なU波を示し, 11年間も一過性心室細動発作をくり返していた症例を経験した.この発作は,精神的因子で誘発されやすい傾向があり,また内分泌因子とも何らかの関係がありそうに思えた.しかし明らかな,器質的心疾患は証明できなかつた. 2人の姉たちにも,心電図上同様のU波が見られるが,発作は経験していない.心電図波形は,血清力リウム濃度よりは,むしろ心筋細胞内カリウム濃度に関係することから,本症例にみられた心電図所見は,心筋細胞内外カリウム比の異常を反映したものと推定された.カリウム薬の投与で,発作は出現しなくなつた.
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